ウィングマン その1


 風が巻き起こる。

 それは怒りに燃える少年を中心に渦巻く風だ。

 背から生える文様の翼は大きく広がり、それに伴い濃い黄色のマフラーは第二の翼のようにたなびく。

 風属性特化形態≪ペリドット≫。

 鳥人族を模した露出度が高い服装もその翼も、体に走る流線形の紋様も言うまでもなくフォンを模したものだった。

 少女と共に羽ばたくための翼は、しかし怒りを孕んだ風を起こしていた。


「……っ、すまん……ウィル、しくじった」


「大丈夫。今は休んで」


 近くの木に御影の背を預けさせ、自らも跪いてから右手を握る。

 右腕を中心に展開された魔法陣が一瞬輝き、彼女の周囲を覆う防護結界となった。

 一瞬だけ、ウィルは結界に手を通し彼女の角に触れた。

 優しく、慈しむように。

 彼だけが許された天津院御影の魂を撫でる。


「……くつっ」


 喉が引きつる様な笑みが彼女から零れた。

 血に塗れ、傷を負い、それでもなお彼女は美しかった。


「任せるよ」


「うん」


 小さく首を傾けながら微笑む。

 最後に頬を撫で、頬に流れていた血を拭う。

 立ち上がりながらその血を雫を口に含む。

 飲み込んだ。

 彼女の流した血を、痛みをその身に刻み込むために。

 そして振り返り、


「―――」


 見据えた先は鋭い歯をむき出しに割るアルテミス。

 彼にしては珍しい険しい顔で睨み付けた。


「おいおい見せつけてくれるねぇ主人公。完璧な登場だったぜ?」


「―――」


 ニタニタと笑う兎鎧に何を言うべきか、ウィルは少し迷った。

 敵であることは明白。

 狙いも言うまでもない。

 糾弾するのもなんか違う気がする。

 ここにきて、話し合いを選ぶほどウィルはお人好しでもなかった。

 彼女はもう一線を超えている。

 ウィルにとっての幸福を傷つけ、狙いを澄ましているのだから。


「参ったねぇ。アンタと戦うのはオレじゃあねぇんだが。しかし、結局仕事するにはアンタが邪魔みたいだし――」


「――――ごほっ」


 アルテミスの言葉の途中に響いた音は、ウィルのではなかった。

 勿論未だに糸に絡め取られているシュークェではない。

 御影だ。

 結界で守ってはいる。

 出来る限り一番固い結界だった。

 だからそれは傷が増えたとかではなくて、喉に残っていた血が吐き出された音だった。

 濁った鮮血混じりの咳。

 

「――――ルビーッ!」


 その音が耳に届いた瞬間、ウィルの怒りは爆発する。

 叫びと共に握った拳から魔法陣が展開し彼を通過。

 変身はそれだけで完了する。

 赤と黒の和装。

 燃える右目と左の片角。 

 炎鬼となって彼は激情のままに飛び出した。


「はっ! デジャブんだよ!」


 対しアルテミスは腕を振るう。

 髪と五指から伸びる目視すら難しく、縦横無尽な弧を描く糸弦だ。

 彼女の言葉通り御影やシュークェを拘束したのと同じような光景が繰り返され、


「ッ、ア、ア、ア……!!」


 けれど今のウィルはその程度では止まらなかった。

 全員に巻き付く糸に一切構わず、足裏から爆炎の花を咲かせる。

 同時、全身から炎を噴出させることで糸弦を撓ませ、焼くことで前進を可能にした。


「それはさっき見たつってんだろ!」


 ひゅんっ、という小気味の良い音が連続する。

 拘束を無理やり破壊するのは御影が行った。だから彼女は準備をしている。

 極細の糸が超振動し、線が格子状に編まれて面となってウィルへと迫った。

 全身に絡ませて拘束し、肉を裂くのではない。

 それ自体が高い殺傷力を持つ網でバラバラに引き裂くのだ。


「ビフレストッ!」


 対し、ウィルは叫び右手を掲げた。

 

「おわっ!?」


 瞬間、アルテミスの背後。

 先ほどまで御影がいて、折れた木の影から虹の刀が飛来する。

 ウィルの意思に応じ、いつだろうと彼の下に飛ぶ黒銀の鍵。

 そして。

 虹の橋が見せたのはそれだけではなかった。

 格子状の糸弦をぶち抜きながらウィルの手に収まった刀の柄から真紅の魔法陣が展開。

 全体を通過し、


「≪光彩流転カレイドスコープ≫―――≪花紅グラニット≫!」

 

 真紅の大戦斧へと変貌した。


「なっ―――!?」


 突然の変化に、流石のアルテミスも驚愕した。

 ウィルは大戦斧を両手で振りかぶり、炎を纏わせる。

 振った。

 糸弦の格子は蒸発し、そして止まらない。


「鬼炎万丈……!」


 足裏に咲く爆裂の花。

 一瞬で詰まる距離。

 纏う炎の衣から零れる火の粉は風に舞う花びらのようだった。


「紅玉鬼道・鳳仙花ッ!」


 天津院御影が最も得意とする衝撃爆散斬撃。

 さらに≪ルビー≫炎にて強化されたそれをアルテミスへとぶち込んだ。 

 




4471:名無しの>1天推し

あぁ!? なにあれ!

 

4472:名無しの>1天推し

職人ニキ!? あれ刀じゃなかったの!?

 

4473:自動人形職人

フフフ……!

お答えしましょう!

 

4474:自動人形職人

数多の戦闘スタイル・魔法、さらには例の糞ヤバネーミング変身を使いこなす>1にとって、一つの武器にこだわる必要はありません!

あの刀は僕のアースの数多の精霊を取り込んだもの!

故に! >1の意思、ついでにいえば属性変身に応じた武器の形状変化を可能とするのです!

 

4475:名無しの>1天推し

ずるくね?

 

4476:名無しの>1天推し

カレイドスコープは分かるけどグラニットってなんだ?

 

4477:名無しの>1天推し

花崗岩、と思う

 

4478:名無しの>1天推し

はーん?

 

4479:名無しの>1天推し

良く分からんけどちゃんとした名前で良かった……

 

4480:名無しの>1天推し

ていうかの属性変身、まだ名前ないのか?

 

4481:自動人形職人

えっ……さぁ……?

 

4482:名無しの>1天推し

聞いたこと無いな……

 

4483:名無しの>1天推し

天才ちゃんなら……と思うが大丈夫かな……

 

4484:名無しの>1天推し

天才ちゃんなら大丈夫だと思うが……

 

4485:名無しの>1天推し

こっちにも顔出してないのはちょっと不安だな

 

4486:デフォルメ脳髄

>1?

ブチギレてるぽいけど、こっち見てる?

気持ちは分かるけど落ち着かないと拙いぜ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る