Sid.23 彼女の親にごあいさつを

 土曜日の朝、母さんが乃愛の面倒を見るから、今日は遠慮なく出掛けて来なさいと。

 咲奈の両親へのあいさつも必要でしょ、なんて、もっともらしい言葉もセットだ。

 土日は仕事で居ないとか言ってたんだがな。

 それはそれとして、咲奈に電話すると「じゃあ、お母さんに待っててもらう」だそうだ。来てくれるなら、あいさつくらいは受けるそうで。


『あとはね、好きにしてていいって』

「好きにって」

『ずっと思い続けた相手だから、お母さんも理解があるの』


 やっと願い叶って付き合えて、体の関係もあったと報告済みとか。明け透けなのか?

 続きは家に行って話すことに。


「じゃあ、乃愛を頼む」


 俺にしがみ付いて離れたくないらしいが、今日は自由にさせてくれと引き剥がす。


「ちょっと、依存が強過ぎるから、少し離れる時間も必要ね」

「幼稚園で我慢してるのか?」

「そっちは先生も居て友だちも居るから、気を紛らわせるんでしょ」


 おっぱい吸わせて大人しくさせておく、とか言ってるし。まだその萎びたブツが通じるのかよ。


「あんたのぶらぶらしてる奴の方が、効果は高いと思うけどね」

「ねえぞ」

「しゃぶらせておけば、大人しくしてるでしょ」


 あり得ない。幼児が股間をしゃぶるって、なんだそれ。変態を極め過ぎてるっての。ロリペドが歓喜して悶絶死するだろ。俺にその趣味は無いからな。

 咲奈なら一日中でも行けるかもしれん。張りがあるし、ぼよんぼよんだし。

 ああ、なんか期待する俺が居る。以前なら考えられん。すっかり毒されたって奴だろうな。母さんにだけど。変態だよ、うちの母さんは。


 母さんの手を握りながらも、俺を見て手を振る乃愛を見ながら家をあとにする。


「ぱぱ、すぐかえってきてね」

「すぐ、とは行かないが夕方には帰るからな」


 寂しそうな表情を見せるなっての。なんか心苦しくなるだろ。さすがにこれだけ頼られると嬉しい反面、自由に行動できなくなりそうだし。今まで乃愛を中心に生活してきたからなあ。

 あとはあれだ、母さんの萎びた乳でも吸って、耐えてもらうしかない。役立つのかどうか知らんが、あんなんでも役立つと期待しよう。


 時々遊んでいた公園を通り過ぎ、歩き続けること八分ほどで咲奈の家に着いた。

 ここに来るのは初めてかもしれん。今さら来て、あいさつとか、本来もっと早くても良かったんだろう。

 ドアホンのボタンを押すと「はーい」と咲奈の声がした。


 玄関が開き笑みを浮かべて招き入れる咲奈だ。


「入って」

「親は?」

「居るよ」


 あいさつが済んだら出掛けるそうだ。当然だが、その後は好きにしろとなってるらしい。もちろんエロい行為も公認だから、遠慮はいらないのだとか。

 ずいぶんと寛容だよなあ。普通はぶん殴られてもおかしくない。付き合うこと自体を咎めずとも、あいさつくらいするのが普通だとかで。しかも散々食いまくって、今さらとかな。

 家に入るとリビングで出迎えられて、頭を下げて名乗っておく。


「いろいろ聞いてるけど、誠実そうな子じゃない」

「真面目だし勉強もできるから」


 誠実なんて言葉は、ここで初めて聞かされたな。俺には一番似合わない言葉の気もする。


「養子を迎え入れるって聞いてるけど」

「パパって言われて、すごい慕われてるの」

「優しい子なのね」


 人となりは、しっかり咲奈から聞かされてるから、あとは当人同士で楽しめばいいと、あいさつが済むと同時に家を出て行った。

 咲奈に向き直ると「あたしの部屋、見てみる?」とか言ってる。まあ一応女子の部屋ってのも興味あるし。

 二階にあると言うことで、先に咲奈が上がって行くが、あのさあミニスカートで。


「見えてるぞ」

「穿かない方が良かった?」

「いや、あのさあ」


 もう、初っ端から全開って奴? これ、今日は夕方までひたすら、爛れた関係性って奴かも。親居ないんだもんな。

 それにしても、こうも揺れるさまを見ると、実に。

 部屋に案内されると、いかにも女子の部屋と思ったら。


「シンプルだな」

「物、置きたくないから、必要最小限」


 色彩は統一されてるけど、ベッド、ナイトテーブル、机と椅子、本棚、タンス。以上。机の上はしっかり片付いてるし、本棚には整然と参考書や本が並んでる。壁には絵が飾ってあるけど、制服はクローゼットに仕舞ってるとか。

 机には小さな額が置いてあって、そこには俺と咲奈の写真が一枚。


「他は?」

「クローゼットに。見る?」

「いいのかよ」

「ちゃんと片付いてるから」


 見せて恥ずかしいものは無いそうだ。

 クローゼットの扉を開けて、中を見せてくれるがマジで、整理整頓が行き届き見事としか言いようがない。頭の中身もきっと整理整頓されてるんだろう。

 だから成績がいいのかもしれん。


「女子らしくないよね」

「いいんじゃないか。これでもかとピンク色で、ぬいぐるみに溢れる、なんてのも悪くないかもしれんけど」


 部屋はつまらないだろうから、リビングに行こうと言われ、また一階に向かう。

 リビングのソファに座って、と促され腰を下ろすと、飲み物を用意され隣に座る咲奈だ。

 かなり密着の度合いが高いな。視線を斜め下に向けると、盛り上がる胸元がな。


「先に済ませちゃう?」

「なにを?」

「もう。見てたでしょ」


 視線に気づかれないわけがない。見てるってことは期待もあるわけで。

 のんびりお話をするのは、エロい行為のあとに、となった。

 しっかり全身を堪能すると、股間も収まり賢者になれる。相変わらず地味と言えば地味だが、以前と違うのは輝きを増したってことか。恋が成就してエロい行為をすると、美しくなれるのかもしれん。

 前より表情とか眩しくなってるんだよな。


「乃愛ちゃん。養子になれそうなの?」

「今のところ、順調みたいだけどな」

「妹になるんだよね」

「血は繋がらなくても、今の段階ですでに妹だけどな」


 可愛いから愛されてるよね、と。

 俺も自分で自分が不思議だと思う。嫌だと思ってた幼児だったのに、乃愛が可愛くて仕方ないんだよな。咲奈を好きな気持ちとは明確に違う。乃愛は家族として認識できてるんだろう。

 切っても切れない存在。咲奈もいずれは家族にとか。ただ、乃愛に感じるものとは違う。


「蒼太君と結婚したら、あたしも乃愛ちゃんと家族だね」

「まあ、そうだろうなあ」

「結婚なんてまだ先の話だけど、でも、乃愛ちゃん見てるとね」


 今すぐ結婚して俺の家で一緒に生活もいいな、とか言ってるし。乃愛ちゃんといつも一緒も楽しそうだし、だそうだ。すっかり母性本能全開って奴か。

 ただなあ、もし咲奈に子どもができたら、乃愛とそれまでと同じように、接することができるのかってのもある。


「その辺はどうなんだ?」


 うちは家族として認識してるし、それなりに長い間、面倒見てきたわけだし。大切な家族の一員であることは疑う余地もない。


「自分の子どもができたら、きっとそっちが第一になると思う」

「じゃあ乃愛は?」

「大切にできるよ。だって家族でしょ」


 ただ、物理的に掛けられる時間は減る。それは仕方ないと。自分の子どもを放置して、乃愛にかまけているわけにもいかない。それだと自分の子が不幸になるだけ。時間配分に変化は出ても、気持ちは変わらないはずだそうだ。

 まあ現実にそうなってみないと分からんけどな。


「でも、蒼太君の両親も居るでしょ」

「こっちが面倒見る時間が減れば、母さんがしっかり見るだろうな」


 俺を世話する時間なんて、すでに飯と部屋掃除くらいしかないし。洗濯物と言えば乃愛のと一緒に俺がついでに洗ってる。

 学校の成績はそれなりにいいから、手間も掛からない。勉強を教えるなんてのも、母さんだと俺の目指す大学レベルは、付いて行けないと言って放置だし。


「大学卒業までなら乃愛ちゃんと、四年以上遊べるね」

「四年か」

「その頃には小学生だね」

「低学年だけどな」


 勉強を見てやるのは容易いな。

 鍛えるのはありだ。バカ親レベルでの教養の無さは致命的だからな。


「蒼太君」

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