第3話 クラスの誰にも心を開いてないっぽい女のコが僕だけに5mm程度心のドアを開いてくれたのかな?って話

「なーぜーめぐーりー会うのかをー」

「わたしたーちはーだれーもーシーラないー」

理科の先生が今日も授業中に熱唱している。

「さあ、歌って歌って、みんな歌って。」

・・・

「どこに、、、イタノーー、、、」


「声ちっちゃいよ!」

「歌わないと授業終わんないからね。」


理科の先生は昔歌手をしていたそうで、授業の始めに皆で歌を歌う事を取り入れている。らしい。


正直、誰も歌ってない。蚊の鳴くような小声で歌っている僕の声が1番大きいような気がする。あまり歌には自信もないし、クラスの誰の声よりも大きな声を出してしまわないように、こっそりと歌う。誰にも僕の歌声を聴かれたくない。

先生、また授業中に歌うのに熱中してるけど、テストがあるってこと、忘れてないのかな、、、。

黒板の隣に貼ってある時間割表を見ながら考えた。

今日はたしか、テストがある日だったと思う。

もしかして、僕の知らないところでいつの間にかテストは実施され、僕だけがテストを受けてないんじゃないのかと不安になってきた。

「あれっ?テストってもう終わってたっけ?」

隣の席に座っている相山さんに話しかける。

相山さんはとても物静かな女のコで、クラスの誰とも仲良く話をしている姿をほとんど見たことがない。

僕も内心、話しかけちゃったよ、大丈夫かなー。

って思いながら話しかけた。

「テスト、先週の授業中、やったじゃん。」

あーーー、よくよく考えると、うっすら思い出してきた。やってたわ、テスト。

「やってたね、テスト。」

相山さんはこちらをチラッと見たかと思うと、また、前の方をすぐに向き直した。

 

授業が終わり、僕はクラスの男友達と並んで廊下を歩いている。小学校からの幼なじみだ。女のコと幼なじみだって設定はよくあるけど、そういえば男友達も幼なじみっていうのか??言うか。

友達に貸すために僕が家から持ってきたDVDを取り上げられ、今となっては珍しい木造の廊下の床に投げつけられる。

「ちょーとちょっと、何やってんだよ!」

「いやー、床にDVD投げて刺さらないか実験。」

「やめれやめれ、刺さるわけないじゃん。」

床に転がっているDVDを拾い上げる。

「あーあ、傷入ってんじゃん、ちょっと割れてない??」

昔のお宝DVDのラベルには、少し古い顔をしたセクシーっぽい顔の女性の画像が貼られている。

まあ僕も、何故か家にあったどこから来たのかもわからないこの古いDVDを、とても大事にしているわけではないが、床に投げつけられると、やめれーっとなる。

そんなやり取りをしている僕たちの横を、相山さんが静かに通り過ぎる。

「あいつ、誰とも喋ってないよな。」

「うん。あんま見たことない。」

相山さんは自分たちの教室に入っていく。


相山さん、相山さん、っと。

僕は教室に入ると自然と相山さんの姿を探す。

あ、いたいた。次の授業は体育なので、みんな着替えている。僕たちの教室では、体育の授業の着替えは、女子も男子も一緒になって着替えている。

珍しいのかな?いいのかな?と思っている。

相山さんが着替えている姿をちらっと見る。

夏服の上着を脱ぎ、白のタンクトップ姿となる。

相山さんは細身の身体をしている。僕が、いいな〜と思って見ていると、相山さんは一瞬で着替えを済ませ体育着姿となった。もっと見ていたかったのに。ちぇっ。


「今日の授業は、レクレーションをします。」

体育の先生が、体育館に集まって座っているみんなの前でこう話している。

「3つのグループに分けるんで、分かれたら円になってくださーい。」

「A班〜、・・・、・・・、・・・。」

次々とクラスのメンバーの名前が呼ばれる。

僕と相山さんの名前はまだ呼ばれていない。

「B班〜、・・・、・・・、遠藤〜、」

あ、僕だ。

「・・・、・・・、相山〜。」

相山さんと一緒の班になった。内心、ちょっと嬉しい。

みんなそれぞれの班に分かれて移動している。

僕はさりげなーく、相山さんの隣になるように移動した。みんな、それぞれの班に分かれて円を作った。

「それじゃあ、分かれたらみんなで手をつないで輪になってくださーい。」

僕は相山さんをちらっと見ると、相山さんも、ちらっとこっちを見た。

おそるおそる相山さんの手を握る。

相山さんの手は、小さくてなんだか可愛いかった。

しっかり、女のコの手だった。

なんだか、嬉しくなった。

と同時に、相山さんの手を握っていると、だんだん手汗がヌルヌルしてきた。あ〜、相山さんはどう思ってるんだろう。内心気持ち悪いって思っていないか不安になってきたお。

「あ、あはは。僕、手汗やばいんだよね。手離して繋いだフリしとく?」

「あー、あはは。いーよ、うちも手汗やばいし。」

相山さんは、繋いだ手を離さなかった。そしてすぐにまた前を向いた。

僕はちょっと嬉しくなった。

体育館に陽の光が差し込んでいて、ちょっとだけまぶしいなって思った。

どちらのものかわからない手汗にまみれた相山さんの手が、少し温かかった。



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