第五話:うーん……どうするか……
うーん……どうするか……。
俺は、再び家の机に並んだアイテムを見ながら、次にどうするかを思案していた。
結局昨日──っていう言い方はちょっとおかしいか。
正しくは四月の第一週のイベントは、記憶にあったものだと通学路での出来事だけで、その後の一日は平凡なものだった。
一応予定調和の部活動、委員会の参加について、紙に起票するホームルームイベントがあったけど、そこは帰宅部、かつ委員会も参加しないことにした。
一応、これらに参加する事で発生するイベントもあるんだけど、正直自由に動きにくくなる事も多いと思っての決断だ。
学校帰り。
校門前で待っていた綾乃に一緒に帰ろうと言われ、何気ない話に花を咲かせたけど、俺は主人公としてゲームで見てきた世界しか知らない。
しかも女子との会話なんて慣れてないから、うまく質問をしながら彼女に話をさせて、あたかも知っているかのように相槌を打ち、ごまかすだけごまかした。
まあ、伊達に社会人として、話術を学んできたわけじゃない。
こういう事はお手の物……なんて言えないものの、高校時代よりはうまくやれたと思っておこう。正直緊張で手汗がヤバかったけど。
でだ。
何でその日についてさっきみたいな言い方をしたかというと、あの日が終わって眠りに就いた後、次に目覚めたら何と、土曜の朝だったからだ。
流石にこれには驚いたけど、キュンメモのシステムと照らし合わせれば、これはある意味納得もできる。
イベントのある日以外、平日はスキップされる。これはゲームと同じ飛ばされ方。
つまり、この世界はゲーム同様、日常生活を三百六十五日、全て体験する事はできないって事だ。
リアル寄りな世界だなって油断した矢先、また露骨にゲームっぽい展開を味わうとは……。
のんびりこの世界を堪能したかったけど、そうもいかないのか。
こうなってくると、この先の未来がどうなるのか、本当に不安になってくるな。
実際このシステムが健在なせいで、エンディングまで過ごせる猶予期間が減ったとも言えるんだから。
色々覚悟を決めて、割り切って行動しなきゃと思う反面。
ゲームっぽさが出てきたからこそ、ヒロイン関係以外でも、色々と気になる事が出てきたけど……。
まあ、今はこの世界でどうすればいいのかすら、さっぱり分からないんだ。
だったら、まずは週末にできる事を改めて整理して、やれる範囲で色々試してみるか。
って事で、改めて土日なんかの休みについて思い返してみよう。
えっと、確かこのゲームは、平日は月曜日に一週間単位でのステータス強化のみ選択をするわけだけど、土日と祝日といった学校が休みの日には、色々とやれる選択が増えたはずだ。
ステータス強化は勿論。ヒロイン達をデートに誘う電話ができたり、彼女達へのプレゼントを買いに行ったり。
事前にデートを入れておけば、ヒロインとデートにも行けるし、部活に入っている場合は、強制的に対外試合や部活で埋まる事もある。
ちなみに、休息して体力回復ができるのも、ゲームではこのタイミングか、体力が下がりすぎて体を壊したり怪我した時の強制イベントだけだ。
現時点で体力がどれくらいあるかはわからないし、そこまで再現されるのかはわからないけど、現時点では特段疲労感はないから、休む必要はないんだけど。
多分休憩する方法自体は、ゲーム内のコマンド実行後の演出から考えると、ベッドで寝ればいいだけだと思う。
で。ステータス強化をしたかったら、相変わらず俺が置いた記憶のない、机の上にある教科書なんかを手にすればいいのも何となくわかる。
電話したければ携帯電話で掛ければよさそうだし、外に出ればそこから自由に動ける……って事でいいんだろうか?
下手に選択肢じゃなくリアルだから、本来ひとつしかできない行為に対し、複数の選択もできそうだけど、それをするとバグったりするのかも気になるな……。
……そういや確か、ステータス強化を選べば、サブヒロインとの休日専用の出会いイベントもあったっけ。
このゲーム、そういう所も何気に細かいんだよな。
……色々悩ましいけど、休日は平日より行動の幅もある。
どうせこの先どうなるかわからないなら、まずはヒロイン全員と早めに出会ってみるか。
清宮綾乃。高嶺花沙友理。
オープニングと四月の一週目で、出会いのあった二人。
どちらも微妙にフラグがおかしかったけど、沙友理の登場はステータス強化に合わせてだと考えれば、この先も文系、体育、雑学を選んだ時点で、残りの三人のサブヒロインも登場する気がする。
だとすれば、誰に会うか……よし。
俺は休日専用の体育の強化アイテム、ランニングウェアとシューズを手にした。
休日用の鞄はっと……多分このリュックだな。
俺は机の脇に無造作に置かれていたリュックに手にした物を積め、そのまま背負う。
よっと。これでOKかな。
あとは……そうだ。
ある事を思い立った俺は、そのまま携帯電話を手にすると、連絡先の一覧を開いてみる。
……お。やっぱりだ。
直接聞いたわけじゃないんだけど、知り合うと勝手に追加される連絡先に、予想通り綾乃と沙友理が追加されている。
俺は、そこから綾乃を選び、敢えて電話を掛けてみた。
プルルルル……プルルルル……カチャッ
『清宮です。ただ今電話に出る事ができません。ピーっという発信音が鳴ったら──』
耳に聞こえてきた、あまり抑揚のない綾乃の声。留守電に繋がりそうだな。
とりあえず後で何度か掛けてみて、もう少し検証してみるか。
留守電に切り替わる前に、そのまま電話を切った。
そういやゲームだと、ステータス強化を選ぶと他の選択はできなかった記憶だけど、外に出られるのか?
玄関のドアまで行き手を掛け開けてみると、問題なく開く。
お。これは大丈夫なのか。
と言っても、体育ステータスを上げた時の演出ってランニングだったはずだから、外に出られるって可能性もあるな。
こういう細かい所も色々調べておかないとな。
俺はそんな事を考えながら、そのまま靴を履いて家を出ると、敢えて今回の選択の結果、イベントが起こらないはずの場所に向かったんだ。
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