#008 村上
二〇二二/〇八/十三 記録作品
博物館の入り口には生け
英語の館内マップを見ながら、博物館で鮭について学ぶ。この博物館の名前となっているイヨボヤは鮭を意味する村上の方言だそうだ。日本は国土が縦に長く広がっているため、面積からは考えられないほど方言が多様化している。余談だが京都の独特の言葉遣いについて、それは方言かといおうものなら友人からは百の文句が返ってくるだろう。
博物館の展示の一つとして、イクラが
地下では施設の隣を流れる川の中を観察することができた。ぼんやりと水の流れを眺めていると、一匹の魚が上流へのぼり始めた。
博物館を出て街歩きをしていると、酒屋の前で地酒の飲み比べセットを勧められた。酒屋の隅で立ち飲みができるらしい。パブみたいなものかなと聞くと、奥からマスターの息子が出てきて『
日本酒は日本で飲むのが一番美味しい。他の国でも高品質なものが取り扱われるようになったが、
「周りに香水つけてる人あんまいないし、そんな好きじゃないんだけど、ドクターのは柚子のいい匂いっていうか、……すいません、やっぱこれはセクハラですか?」
東京のホテルで頂いたサシュの香りだろう。やはりこの夏に必要なものだったらしい。彼にサシュを渡し、
バスの中で教えてもらったレストランで鮭のコース料理を楽しみながら、イクラは日本以外では食べられないことをスタッフに話すと「もったいない!」と笑われた。しかし博物館でイクラの製法を学んだ今では、日本でしか安心して食べられない食べ物と理解していた。だからこそ、より一層美味しく感じてしまう。締めのおにぎりにのせられていたイクラがあまりにも美味しくて、それだけで日本酒を二合空けてしまった。
夕方の街を歩き、駅に向かう。土産の酒が重たく、しかしそれが
何度も手は拭っているのに、指先に魚の香りがする気がした。気のせいだろう、けれど
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