第7話
「守護霊。本当に? ていうか、人の消える町を作ったって」
「そう。誰かが突然いなくなる町。それを作ったのが私。そして、あの黒い
人影、それはせいじ君が消えたと思っていた人たちの変貌した姿」
「じゃあ、あれはやっぱりかずのりとともや」
「ええ。彼らは消えたんじゃない。あの姿になって、永遠とこの町をさまよってる。自分を認識してくれる人を探して」
「認識してくれる?」
「あの姿になると、この町の人からは認識されなくなる。存在も忘れられる。それが寂しいから、あなたを襲ったときみたいに認識してほしい人に近づくの。彼らは狙った人を襲ったときだけ、はじめてその人にのみ認識される」
「だから、かずのりと僕だけあの時、黒い人影に気づいていたんだ」
「でも、彼らに幸せは訪れない。彼らがターゲットに触れたら、そのターゲットも同じように黒い人影になるだけ。まるでウイルスのように。そうして、この町では認識される人が減って、黒い人影となってさまよう人たちが増える。そして、いずれはこの町すべてがそうなる」
「そんな。でも、僕たちが消えた人たちを覚えていたのは」
「あなたたちはこの町に来たばっかりだから、私にとってはただの部外者。だから無事なの。この町で生まれた人、長く住んでる人、この町の慣習に従っている人たちが私の標的」
「なんで、そんなこと」
僕がこう聞くと、あずさという守護霊は突然こぶしを握った。
「私が守っていた小学一年生の女の子、マリナの未練をはらすため」
「えっ?」
「この町はもともと、とても閉鎖的で、排他的だった。町の住人どうしは結束が固く、信頼しあっていた。その点では素晴らしい町。でも、そうでない人には違う。あの子、マリナもそうだった。彼女の母親は海外の人で、父親がいるこの町に引っ越すことになった。地域の人たちはかなり煙たがった。当然、そのもとに生まれたマリナも」
「ハーフで日本人らしくない彼女は、よく小学校でもいじめられた。きしょい、汚い、あっちいけ、まだ幼い彼女には本当にきつい言葉をかけられて」
「小学校だけじゃない、周りの大人も、町の人も、一丸となって彼女をいじめて、ついには無視するように。そして誰からも相手にされなくなった彼女は、自らいのちをたったの。彼女の霊は今もこの町でとどまったまま。だから私決めたの、この町の人たちにマリナと同じ目に会わせてやるって。誰にも認識されない、相手にされない苦しみを味あわせてやるって。そうすればきっと、マリナも成仏してくれるでしょう?」
あずさは涙ながらにこう言った。
その影響だろうか、話しを聞いていた僕の目からも涙が流れていた。
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