第6話
よく見てみると、かずのりの声をした黒い人影は少し安心したような雰囲気でいる。もしかして、これは本当に消えたかずのりなのかもしれない。そう感じた僕はうっかり警戒心を薄めてしまっていた。
だが、これは間違いなく誤った判断だった。さっきまでずっと僕の前で動かなかった黒い人影が急に襲ってきたのだ! 間一髪でかわすことができたが、この教室で追い詰められるのはすぐだった。
「くそっ」
端っこの方に体を寄せてしまって、僕はもう逃げ場がない。そして、さらに悪い状況は続いた。
なんと、僕の前にいる黒い人影とは別の個体が、この教室に入ってきたのだ。黒い人影は一体だけではなかったのか?そいつはよく耳を済ませてみると、「無視しないで」とつぶやいていた。その声は紛れもなく、消えたもう一人の友達、ともやだった。
そしてその後ろからも、また別の黒い人影が同じような歩き方で何体もやってきた。僕は黒い人影の群れにすっかり囲まれてしまった。
「もう、だめか」
諦めかけた僕に、黒い人影たちは容赦なく詰め寄ってくる。ああ、今度はもう助からないだろうな。そう思って、僕は目を閉じた。
(このまま意識を失って、またあの奇妙な夢をみるのだろうか。また、不思議な少女がでてくるのだろうか。一体なぜかずのりとともやの声をあいつらがしているのか?)
こんな風に、たくさんの疑問を思い浮かべながら。
それからけっこう時間がたった。
目を開けると、人影たちは僕を襲って・・・・・・いない?奇妙なことに、黒い人影たちは僕に手が届く寸前で、ぴたりと動きをとめてしまったのだ。
意味が分からず困惑していると、教室の入り口のあたりから声が聞こえてきた。
「はやく、こっちに」
僕はその声めがけて、止まった人影たちをよけて走っていった。
その先で待っていたのは、なんと、以前、夢の中で出会った少女だった。あの夢の中の通り、ブルーの瞳、ロングの髪、白いドレスを着ていた。訳が分からなくなっている僕に、彼女はこういった。
「ぼーっとしないで。今は一時的に止めたけど、また動き出す。早くきて。私が安全な場所につれていく」
すると少女は僕の手をつかんで、走り出した。
しばらく走って、僕たちは遠くの公園に来た。この公園は、僕が夢で彼女と出会った場所だった。子供が遊べるのか疑うくらいせまくて、遊具もブランコだけがぽつんと奥に居座っている。
「はあ、はやく出て行ってって言ったのに」
呆然としている僕を見て、彼女はため息交じりにこう言った。
「君は、一体」
「私は神からの使い、守護霊あずさ。そして、この、人が消える町、を作った張本人だよ」
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