第4話猫の心情
3年前の春、故郷の父が事故死した。
それから、3年母は広い部屋に1人で暮らし、飼い猫のモルと寂しく暮らしていた。
しかし、65を過ぎたばぁさんが広い家に住むのは危ない(孤独死)ので、親戚が近くの小さな一軒家を見付けてくれた。
だが、山奥で雰囲気の悪い所だったらしい。
ならばと、僕が故郷から母を呼んで同じ賃貸マンションの部屋違いを押さえており、去年の秋から名古屋市民になった。
まだ、地理が分からないので、一緒に連れていき、パート場所までの道順を教えたり、夜は必ず一緒に摂ることにした。お互い合鍵をもち、万が一の為に備えてある。
モルは、父が亡くなっても、ニャーニャー鳴きながら、父を探し回った。母が外出し帰宅すると、玄関の入り口で待っていたそうだ。
母が、実家を出る際に取り壊す事になり、マイナスなのに、親戚の優しさで土地代をもらった。
名古屋の賃貸マンションではペットは飼えないので、弟の家に引き取ろうとしたが、逃げ回り捕まえる事が出来なかった。
近所の方が、よくモルにエサを与えていたので、それを覚えて餓死はしないだろうと言う結論に至った。
連絡を取ると、エサを食べに行っているようだ。
実家が取り壊わされる日。
モルは高台から、取り壊される様子をじっと眺めていたらしい。
それを見た、親戚は涙したらしい。
モルよ。
今、お母さんは僕が付いているから、安心していいよ。
仲間と一緒に、ご飯食べてね。
モルだけ、置いてけぼりにした。
その後も、弟が何度も捕まえようとしていたが、逃げ回る。
そうか、君はここから離れたくないんだね。
帰らない、父をずっと待ち続けている。
現在はモルを見かけた者はいない。
何とも、後味の悪い出来事である。
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