再び繰り返された悪夢

 彼女はやはり、人形のようにぐったりとしていた。呼吸も鼓動もあるが、玲那の心はそこにはなかった。男の欲望を受け止めるただの肉人形と化し、男の行為が終わるのをひたすら待つ。彼女にはもうそうするしかなかった。それ以外にできることがなかった。

「……」

 虚ろな目を無意識のうちに母親の方に向けるが、当然、助けてなどくれない。買ったばかりの携帯電話をひたすらいじっているだけだ。当時、いわゆる<3G>が登場する直前だったものの、携帯電話でのインターネットが気軽にできるようになり、京子けいこもそれに早速没入するようになっていた。醜い欲望に蹂躙される娘のことより、小さな小さな携帯電話の画面の向こうの方が大事だったのだ。

 そんな母親のすぐ傍で、再び繰り返された悪夢に幼い心はぐちゃぐちゃに磨り潰されていく。

 そうして、憐れな少女の奥にもう何度果てたかも分からないが、男もさすがに疲れを感じ、興奮が収まりつつあった。そして最後の一刺しとばかりに力一杯少女の奥深くまで己を突き入れて、果てた。

「はあーっ、はあーっ! さすがにもう無理かな……」

 汗だくで息を切らし、少女を腹の上に乗せてベッドに横になった男が絞り出すようにそう言った。

『やっと終わりかよ……どんだけやるんだこの変態が……』

 椅子に座って腕を組んで不機嫌そうにちらりと視線を向けた京子は、やはり口には出さずそう毒吐いていた。時計を見るともう三時間以上経っている。携帯電話のおかげで暇潰しができていたとはいえ、すでにバッテリーが尽きていたのだ。この頃はまだまだバッテリーの性能も低く、ほんの数時間で使えなくなってしまう。だから予備のバッテリーを持ち運ぶことも多く、京子もそうだったがそれでもだ。

「じゃあ、これで終わりだよ。シャワー借りるからね」

 男の汗と涎と精でぬたぬたになった自分の娘を、まるで汚物でも触れるかのように嫌々抱え上げて風呂場へ運び、力なく風呂場に座り込んだ彼女をシャワーで流し始めた。だが、ある程度流したところで、

「おい! いつまでぼーっとしてんだよ! 自分で洗え! 甘えんな!!」

 と怒鳴りつけながら髪を掴んで顔を上げさせると、ようやく玲那の目に光が戻ってくる。

「……」

 すると彼女は母親に言われた通り、ノロノロとではあるが自分で自分の体を洗い始めた。意識してでのことではないようだが、特に股間を丁寧に洗い、痛みが走るのか時々ビクッと小さく跳ねながらも男の精を洗い流していったのだった。


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