第6回 『怪物』 韓流ドラマ 2021年 感想

 私の好きな俳優ヨ・ジングさんの主演ということで観ました。

 刑事ものはあまり観ませんが、このドラマは韓国、日本共に高評価された作品でぜひ観てみようと思いました。



「怪物」は、主演の2人、ベテランのシン・ハギュンさんとヨ・ジングさんのドラマです。2人は正反対の性格と生き方のマニャン派出所の警察官役。

 シン・ハギュンさんは巡査長のドンシクを、ヨ・ジングさんは父親が警察庁の次長で、本人はエリート警部補のジュウォンという役です。



 釜山に近い田舎町マニャンを舞台に、20年ぶりに猟奇殺人事件が起きます。同じ手口でかつて妹を殺されたシン・ハギュンさん演じるドンシクは、20年前から犯人を探して警察になった男で、ソウル庁から異動してきた元エリート刑事ヨ・ジングさん演じるジュウォンは、潔癖症で握手も出来ないほどの他を寄せつけない人物。

 この2人がバディを組まされ、互いを理解出来ないまま事件が次々に起きてしまいます。





 このドラマでも、ヨ・ジングさんの真っ直ぐな心を持った青年役がど嵌りでした! 頭が良く、20年前の猟奇殺人事件を追って、疑わしいバディ(かつて妹殺しの容疑者として逮捕歴があるが、誤認逮捕で釈放された)ドンシクを真犯人ではないかと疑い、周りを見ず真っ直ぐ仕事だけに没頭するジュウォンを見事に演じています。



 ドラマ前半は理解が追いつかないほど、難解な事件が次々と起きます。しかしバディを組む2人は、その性格の違いが良い方向に化学反応を起こしジリジリと犯人を追い詰めます。


 ドラマ中盤まで、私の思考はかなり置いていかれていました。何が起きているのか、誰が犯人で怪物なのかと。

 このままだと、理解不足の自分を棚に上げ、勝手につまらない展開だと判断してしまう危険がある、と思ったそのとき、後半には今までの疑問や理解の遅れを取り戻すかのような鮮やかな展開が待っていました!

 意外な真犯人が捕まり、更にその裏に隠されていた真実に2人は向き合います。




 とにかく、ここでは人生を波乱万丈に生きたベテラン警官のドンシクを演じるシン・ハギュンさんの白熱した演技と、『王になった男』では狂気の王を演じたときとはうってかわり、冷静だが1度決めると決して自分を曲げない、本心を隠したクールなイケメン警部補、ジュウォンを演じるヨ・ジングさんの、常に理性を保とうと葛藤する演技が素晴らしかったです!



 なんですかね? ヨ・ジングさんの魅力は。どのドラマを観ても引き込まれて目が離せなくなります。

 顔立ちの整ったイケメンであることは間違いありませんが、私はただのイケメン俳優好きではありません(笑)ので、彼ならではの人を引き込む演技がそうさせるのだと、やっと分かりました!



 ドラマは架空であり、日本のドラマではどんなドラマを見てもツッコミどころ満載で、つい指摘してしまう癖のある私ですが、韓流ドラマにはツッコめないのです! 凄いのです! 魅了されてしまうのです! もちろんドラマなので過剰な演出やそんなことある? ということさえあってもです。



 話が逸れました。m(_ _)m

『怪物』は、誰だ? ということに焦点を当てたいと思います。

 連続殺人事件の犯人はもちろんですが、執拗に、そして自分が疑われてもそれを利用して犯人を追い詰め、妹の無念と病気の母親の無念を晴らそうとして周りを見ないドンシクなのか、それとも冷酷な父親を憎み反抗しつつも、心の奥底には尊敬の念を持ったジュウォンの、真の真っ直ぐさゆえに人間よりも法を貫くクールな生き方が「怪物」なのか? それとも連続殺人事件に発展した最初のひき逃げ事件の黒幕の……。


 『怪物』の答えは見る人に任せているところも、難しいドラマと言える所以かもしれません。

 2人がこの猟奇殺人事件の最初の事件のひき逃げ犯を追い詰めることが出来るか?

 どうぞ辛抱強く最後まで観ていただきたい秀作だと思いました。









 *** 追記 ***


 ここからは私の妄想と感想ですので、すでにドラマをご覧になった方に向けて書きます。



 まず始めに感じたのは、人間が生まれて初めて関わる小さい社会、『家族』という基本形の歪みです。

 登場人物の家族との関わりにはひとくせもふたくせもあります。

 たとえば妹殺しの容疑を掛けられたドンシクは、子供の頃から親に優秀な妹と比較され叱咤されることが多かったのです。

 そのため、この容疑がかかったのではないかと思いました。


 潔癖症のジュウォンは、冷酷で出世欲しかないエリート警察庁次官の父親に冷たく扱われてきました。ドラマでは母親はなかなか姿を現しませんが、実はこの結婚も……と、なにやら幸せな家庭を感じさせません。

 そこで常に父親の顔色を窺いながら育ったジュウォンが、潔癖症になるのも無理はありません。


 調べましたら、潔癖症の原因の一つには家族関係が良くないこともあるそうで、子供の頃に受けた厳しい躾が原因のことが多いそうです。

 つまり、ジュウォンはまさにそうだったのではないでしょうか?

 のびのび育つことが出来ず、真っ直ぐな性格も裏返すと、融通のきかない潔癖症に紐づく気がしました。



 市議会議員の母を持つ捜査チームのパク・ジョンジェも然り。常に鹿人間の絵を描いているのは、子供の頃に躾と称し鹿の檻に入れられていたトラウマがあるとか?



 気の弱かったカン・ジンムクは、吃音のせいで家族や周りの人間にもバカにされてきました。

 しかし、その吃音というのは、病気の他にトラウマやストレスが原因になることもあるそうです。




 こうして考えてみると、『怪物』を作ったのは、もしかすると1番身近で自分を守ってくれるはずの家族でもあったのではないかと恐ろしくなりました。


 韓国はアジアの中でも特に親を大切にする精神の文化を持っている国と聞きます。

 しかし過保護や過干渉も多く、親が煩わしいと思うことは、どの国の子供たちにもあるはずです。親も人間ですから、正しい子育てを完璧にできる人などいませんよね?



 また『怪物』は登場人物全員なのでは? と思える展開の作品でした。後半の展開には予想も妄想も追いつきませんでした。前半で疑問符ばかりだった私も、後半に行くにつれ、時の経つのも忘れて見入った作品でした。


 これはもう実際に観ていただくしかありません!

 



 以上は、作品の評価や評論ではなく、単に私の感想や妄想ですので、本筋には一切関係ないことをどうぞご了承くださいませ。

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