008.船員(嫁)選びと船(嫁)の構造~ただし推進エネルギーは●から出る~

まえがき

いつもありがとうございます。


台風すごいですね。

こんな日は引きこもるに限ります!(いつものこと)

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「どうぞおかけください、マスター」


「ああ」


 シラユキの後に続いてブリッジに入ったオレは、勧められるままに艦長席に腰を下ろした。


「それで……一般的にどんなクルーが必要になるんだ?」


 全てを包み込んでくれるシラユキのような乗り心地……じゃなくて座り心地を感じながら、副官のように横に立ったシラユキへ向けて先程の話の続きを促した。


「そうですね……私が今のままでも問題なく行える役割を省いた上で、マスターもご存知の表現でご説明いたします」


「助かる。さすがはオレの嫁」


「ふふっ……。では、まず最初は――」


 オレの褒め言葉に嬉しそうに微笑んでから、シラユキは順番に説明をしていった。


 まずは艦長。

 これはつまりオレのことだから置いておく。


 不足している1人目が、航海長。

 船の航行に関するシステムの運用をしたり、有事の際には細かい船の機動制御を行うポジションらしい。

 2つの身体を同時に動かすことに自信がないと言っていたシラユキにとっては、大事な役割だろう。


 2人目が、通信長。

 名前のまんま他の船などと通信したりするだけ……かと思ったが、艦長や航海長のサポートも行う重要なポジションらしい。

 宇宙の気象情報や寄港先の情報などを集めて航行ルートの進言をしたり、艦内の物資やエネルギー状況を管理したり、有事には無人機の操作や電子戦も担当するとのことで、そう言われるとかなり重要なクルーであることが分かった。


 3人目が、衛生長。

 船員の健康管理が主な役割で、とても単純に思えるが大事な人員を守るという意味で重要なポジションらしい。

 オレたちの場合、オレのことはシラユキが見てくれるがシラユキの生身の身体やこれから生まれてくる嫁達の健康管理はこの衛生長に任せることになるだろう。

 なるほど、嫁に健康で居てもらうためにもとても重要な役割だ。

 外から持ち込まれたものの検疫や採取した資源の放射能除去なども行うとか。


 4人目が、機関長。

 いわゆるメカニックで、船やドローン・船内および船外設備の整備を行ったり、有事の際にはダメージコントロールや応急修理も行うらしい。

 衛生長の機械版といったところだろうか。

 船はシラユキの身体の1つでありオレたちの生命線だから、これも大事だ。


「――とりあえずは以上の4職を行えるクルーが居れば、あとは私の方でカバーできますので航行に支障はないかと思います」


「そうか、ありがとう」


 ただ船を動かすだけでも大変なんだな、と思いつつ説明してくれたシラユキに礼を言うが……オレが予想してたポジションがその中には入っていないな。


「アニメとかでかじっただけの知識だが……戦闘部門の責任者とかはいないのか? 電子戦は通信長だけど、そうじゃなくて砲撃とかをするヤツは?」


 中立国で作られた戦艦に乗る美人で巨乳な艦長の横にいつもいる生真面目系美人が、よく『●●を●番から●番まで装填っ、撃てぇっ!』とか言ってた気が……あの指示を出してたのは艦長のほうだったか?


「そうですね……すみませんマスター。当艦はあくまで移民船であって戦闘艦ではありませんので、武装は最低限しかついていません。ある程度は射撃管制システムで自動で行なえますし、もし武装強化をするご予定があるわけではなければ後回しで良いかと思います」


「ああいや、謝らなくていいぞ。オレの知識なんて所詮はアニメでかじったものだし、あてにならないからな。シラユキがそう言うならそうしよう」


 オレが武装に期待しているとでも思ったのか、どこか申し訳無さそうに言うシラユキをフォローした。


 デカい主砲をぶっ放したり弾幕を張る戦艦はロマンだが、好き好んで戦いに行く気なんてないからな。

 船はシラユキの身体でもあるんだから、傷なんて付けたくないし。


「ありがとうございます。他は……細かいことを申し上げるとキリがありませんので、必要に応じて拡充する形で問題ないでしょう」


「オッケー分かった。とりあえずは4人か……」


 シラユキを入れると、オレに5人の嫁ができることになるってことだ。

 5人姉妹の花嫁で幸せも欲望も5倍だ……これは楽しみになってきたな。


 しかも将来的にはもっと増える可能性もある……というかオレなら増やすだろう。

 いや、確実に増やすね。


「しかし、人が増えるとなると……今の部屋はあくまでオレとシラユキの部屋にするから、別の部屋を確保しないといけないな」


「まあ……♡」


「あ、もちろんシラユキが自分の部屋が欲しければ、オレが全力で用意するからな?」


「いえ、とんでもございません。私はマスターさえよろしければ、いつでもお傍に居させていただけると嬉しいです」


「そ、そうか……」


「はい。ふふっ……」


 願望も混じって勝手に決めたのに、シラユキはむしろ『喜んで』と微笑んでくれて……オレも嬉しくて思わず口元が緩んでしまった。


 オレの嫁がどこまでも可愛すぎる件。

 こんな少しのやり取りでもシラユキへの愛が募るのを感じてしまう。

 なんと幸せなことだろうか。


「マ、マスター……? その、また……しますか……?」


 おっと、ついシラユキに触れたくなって、小ぶりで可愛い尻を撫で回してしまっていた……。


 シラユキが恥ずかしそうに……しかし嬉しさも混じった潤んだ目でオレを見てきていて、尻尾もフリフリとオレを誘うようで……ものすごくグッときたが、話の途中だしここは何とか我慢だ。


「あ、いや……。すまん、続けてくれ」


「で、では……妹たちの部屋は居住区として設計された区画がありますので、そちらにご用意いただくのが良いかと思います」


「区画……? って、そうだ、オレはこの船がどんな姿をしているのかも知らないんだったな……」


 そのことを……シラユキのもうひとつの身体について知るためにこの話を始めたんだった。


「ふふっ……こちらをご覧ください」


「ん……『超長距離型航宙移民艦SRY-K1 構造図』?」


 そうタイトルが着いたデータがシラユキから送られてきて、オレがそのデータを開くと眼前に大きくホロディスプレイが現れた。

 データの表示タイプが『共有』になっていたので、シラユキも今オレと同じものを見ているのだろう。


「おぉっ……! こんな形をしてたのか……なんというかカッコいいし美しいな!」


「お褒めいただきありがとうございます、マスター」


 構造図は細かい設備の説明などは省かれたもので、パッと見はショッピングモールとかデパートにあるような『どんな区割りでどこに何があるのか』が分かる程度のものになっていた。

 それが上から見た図と横から見た図の2つ表示されている。


 だからこそオレでもひと目でその内容が理解できて、その図から読み取れるこの船……シラユキのもうひとつの身体の全容を見たオレは、思わずテンションが上ってしまった。


 オレがゲームやアニメでかじった知識を元に想像してた移民船というと、とにかく船の内部空間を確保するために四角いコンテナのようなものがゴテゴテと付けられた……実用性重視でカッコよく無いフォルムだったが……。


 実際のこの船はその想像をいい意味で裏切ってくれた。


 全体のフォルムとしては平べったい円柱型に近い。

 円といっても複雑に入り組んだ区画分けがされていて、表面は平らというわけではなく凹凸が見られるのでのっぺりとした印象はない。


 船の前側左右がそれぞれ直角三角形のようなものが突き出て凹型のようになっていて、後ろ側には逆三角形の推進機関が突き出ている。

 中央前方から後方までと円柱部分には中央から大きな通路のようなものでも走っているのか、*(アスタリスク)のような凹凸がみられた。


 オレの知識から無理やり当てはめるなら……某世界的な御長寿宇宙MMOの超大型空母に似たような船があった気がする。


 色々と自分の中で表現してみたが、思わず口にしたようにとにかくカッコいいし美しい船というのがオレの感想だ。


「これ……相当に大きいな。どれくらいあるんだ?」


「両舷前方から後方の機関部を合わせた全長が820メートル、全幅が698メートル、全高が中央部で136メートル……低いところで96メートルです」


「はっ……はっぴゃくにじゅう……!?」


 デカっ!? 町が丸々ふたつかみっつは余裕で入る大きさじゃないかっ!?

 やっぱ宇宙はスケールが桁違いだな!?


「そ、その……これでも中型艦に分類されるんです……そんなに大きな子じゃないんです……」


 そんな可愛く恥じられても……これで大きくないと申すかこの嫁は。


「じゃ、じゃあ大型艦になるとどれくらいになるんだ……?」


「はい。大型に分類される船は全長が1キロメートルを超えます。超キロ級(オーバーキロメータークラス)と呼ばれ、各星間国家が保有する主力艦(キャピタルシップ)になると3キロメートルから5キロメートルを超えるものもありますね」


「キロ……」


「一番大きな艦種である巨人級(タイタンクラス)になるとその全長は15キロメートルを超えますので……私はまだ小柄なほうなんですっ」


「すげー……」


 もう想像もできないくらいのデカさだ……浪漫すぎる。


 比べる相手が間違っている気もするが、たしかにコレを聞いてしまうとこの船は小柄なほうなんだろう。


「ま、まぁ……いまオレの目の前にいるシラユキは程よいサイズで可愛らしいんだから、船のほうの大きさで恥ずかしがらなくてもいいと思うぞ?」


「そっ……そうですね。マスターがそう言ってくださるのでしたら……ありがとうございます」


「い、いや……説明を続けてくれ」


 流石に今回のは恥じ入るポイントがわからなかったが……フォローになったのなら良しとするか……。


「はいマスター。ええと……区画についてのご説明でしたね。マスターと私が今いる区画は中央ブロックです。ここのブリッジや、マスターと……わ、私のお部屋である特別制御室など船の中枢機能が集められた当艦を運用する上での心臓部です。今の私の感覚的には……頭や胸のあたりになるでしょうか」


 お、おぉ……?


「ってことはオレはシラユキの胸に包まれて生活してるってことか。例えだとしてもそれは最高だな」


「マ、マスター……」


 シラユキが自分でそう言ったからその柔らかい膨らみに視線を送ったのに、シラユキ自身が照れてしまっている。


 それでも隠そうとしないのはオレのためなのだろうか。可愛いヤツめ。


「こ、こほんっ。先程挙げました居住区としての利用を想定されている区画は、両舷前方の……ここからここまでの区画です。感覚的には……右腕と左腕でしょうか」


 可愛らしく咳払いをしたシラユキは、そう言って船の円柱部分の4分の1くらいから前方左右に突き出している凹型の構造部の色を変えて居住区の範囲を示してくれた。


「ふむ、船員たちはまさにシラユキの腕に抱かれて眠るってことだな。安心して生活できそうだ」


「ふふっ、そうですね」


 お? 流石に腕は恥ずかしポイントではなかったか。


「両舷後方には格納ブロックがあります。左右でそれぞれ目的が別れていまして、左舷後方の区画は船舶停泊所、ドローン格納庫、戦闘機を積んだ場合の格納庫、それらのメンテナンススペースです。右舷後方の区画は主に物資の格納用スペースです。感覚的には……両足の付け根から膝くらいまで、でしょうか」


「こんな細い脚のどこに……」


「ぁぅ……ふ、船の私とここにいる私は違いますので……」


 いや、シラユキが言い出したんじゃん……照れてるのが可愛いからいいけど。


「最後に……両舷最後方と中央後方の区画は機関部です。船の推進のための……ブースターやワープ航行制御装置、エネルギー循環と生成を行う装置、重力制御装置も……こ、この区画にあります」


 ……お? 今の身体に例えなかったぞ……?

 この流れでいけば当然……だよなぁ?


「シラユキ的に、機関部はどの辺りの感覚なんだ?」


「そ、それは……」


「ん~? どこなんだ~?」


 きっとオレは今悪い顔をしているだろう。

 いいからおじさんに教えてごらん?


 ……だれがおじさんだ。オレは超絶美人で美少女な男の娘だ。


 シラユキも答えはわかっているのか……モジモジと膝をこすり合わせている様子が大変グッドだ。


「そ、その……お、お股のあたりと……膝から下です……ぅぅっ……」


「フフ……つまりシラユキのソコから推進エネルギーが迸って宇宙を進むってことだな?」


「ま、マスター……ぅぅっ……恥ずかしいです……」


 あ、やべ。ちょっと涙目になってしまわれた。


「す、すまん。ちょっと意地悪しすぎたな。よしよし」


「ますたぁ……」


 プルプルと震えだしてしまったシラユキを優しく抱きしめ、背中をポンポンと叩いてやった。


「マスター……ありがとうございます。……あ、ちなみに武装やセンサー類などは甲板の各所にあります。感覚的には背中やお腹のあたりです」


 いや、もうその例えを続けなくてもいいのよ?


「お、おかげでよくわかったよ。ありがとな」


「いえ……」


「よしっ。何があるのかはわかったから、実際に見に行こうぜ!」


 情報収集が済んだら、いよいよ脱・引きこもりだ!


 時間はたっぷりあるし、せっかくだから隅から隅まで見回ってみよう。


 新しいものを見られるときっていうのは、オタク心をくすぐられてちょっとワクワクするからな。


「ふふっ……かしこまりました。ご案内しますね」


「ああ! シラユキの身体の中を探検だっ!」


「まっ、ますたぁ……」


「ははっ……すまんすまん」


 案内役のシラユキがオレの胸にグリグリと頬をこすりつけて恥ずかしがってしまい……結局、出発はしばらくしてからになるのだった。







――――――――――――――――――――――――――――――――

あとがき


船の外観のイメージ……伝わったでしょうか。

参考にしてるものがありますが……日本ではマイナーなゲームだからなぁ……。

「想像つかねぇよ」って方は「EVEonline Nyx」でググってみてください。

参考元はデカすぎるのでそれを小さくしたような感じでご想像いただければと。


お読みいただき、ありがとうございます。

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ファンタジー世界を舞台にTS主人公が女学院で繰り広げる恋愛話もしっかりめのイチャラブも連載中ですので、合わせてお読みいただけると大変嬉しいです。

作者情報または下記URLよりどうぞ!

https://kakuyomu.jp/works/16817139554967139368


次回、「船内探検隊帰還せり~無重力体験(ガチ)~」

明日9月20日(火)更新予定です。

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