006.ソレナン・ティーエ=ロゲ~オレのアレは万能調整液!?~



「ん……ぅ……」


 後頭部に温かさと柔らかさを感じながら、オレは目覚めた。


「おはようございます、マスター」


「……あぁ、おはようシラユキ」


 まだ二度目だが、愛する嫁の膝枕で目覚めるってのは何度経験しても最高の目覚めだな。


 視界いっぱいに映るシラユキの微笑みにつられて、オレも微笑み返してから身体を起こした。


「んっ……はぁ……あれ? ベトベトしてない……」


 超絶美人で宇宙一可愛いであろうオレの中の男がずいぶんとハッスルしてしまい、自慢の黒髪は乱れに乱れていたし、オレもシラユキもベトベトだったはずなのに、身体にまとわりつくようなベタツキ感は全く無くなっていた。


「はい。分解して綺麗にしておきました。あと、こちらをどうぞ。マスターの意識レベルが――お目覚めになりそうでしたのでご用意いたしました」


「お、これはコーヒーか……? さすがは俺の嫁、気が利くな!」


「ふふっ、ありがとうございます」


 ナノマシンっぽいMIM技術ってのはほんとに便利だな。

 まんま魔法みたいだけど、これがちゃんと科学技術やら精神感応技術やらというれっきとした技術体系の上に成り立っているらしいからまたすごい。


 差し出されたカップを受け取り、オレに褒められて嬉しそうに微笑むシラユキの顔を眺めながらそんなことを考えつつ、湯気と独特の香りを立てるそれを口に含んだ。


「はぁ……なんてオレ好みの味なんだ……」


「ふふっ、私ならマスターのことは何でもわかりますので」


 愛する嫁と最高の夜を過ごした後のコーヒー、これがリア充の気分か……!


 しかし、汚れていた身体がこうも簡単に綺麗になって不快感がなくなるのはいいけれど……風呂がないのはダメだな。


 純粋に風呂が好きというのもあるが、シラユキと入る風呂がないというのはいただけない。


 嫁とのイチャイチャ入浴……我ながらなんて魅力的な考えだろうか。


 この船のどこかのスペースで風呂でも作るか……ちょうどMCっていう便利なものもあるし、なんとかなるだろう。


 風呂上がりには一緒にフルーツ牛乳とかコーヒー牛乳でも飲んで……。


「……あれ? このコーヒー、シラユキが用意してくれたんだよな? 確かそのMCってオレ用に調整されてるって言ってたけど、シラユキは使えるのか?」


 何気なく飲んでいるこのコーヒーだって、船の中ではMCで創り出さないと手に入らないはずだ。


「あ……そうですね、この特別製のMCはマスター専用のはず……なぜ私が使えたのでしょうか……。マスターにお飲み物をご用意したいという気持ちが先に来て、そのことに疑問を持っていませんでした……」


 オレがそう思って聞くと、どうやらシラユキ自身も今になって気づいたらしく、オレの隣で頬に手を当てて可愛らしく首をかしげていた。


「オレが創った身体になったから、とか?」


「そうですね……細かいところまで創り込んでいただいていますし、電脳領域や身体強度のスペックも最高レベルで生み出していただきましたが……それでもさすがに、このMCを扱うには電脳領域の処理能力が足りないはずです……」


「そうか……」


 オレはこの力をなんとなくで扱えてしまっているし、細かい技術の話は全くわからんが、シラユキが言うならそうなのだろう。


「マスター、少し調べてみてもよろしいでしょうか?」


「ああ、時間ならいくらでもあるしな」


「ありがとうございます。では……」


 そう言うとシラユキはそっと目を閉じた。


 オレもやったからわかるが、脳内でデータを処理するとき、慣れないうちは目を閉じたほうが余計な情報が入ってこなくて集中できるんだよな。


 シラユキからすると自分の身体のことだろうに、それでもオレに許可を求めてくるのはなんとも可愛いじゃないか。

 オレのことをちゃんとマスターとして扱ってくれてる感じで大変良きだ。


「マスター、自己スキャンが完了しました……!? し、信じられませんっ……!」


 なんとなくその頭を撫でながら待っていると、目を開いたシラユキは自分の身体を調べ終わったようだったが、言葉通り驚きの表情でオレの方を見てきた。


「ど、どうしたっ……!? オレが創った身体に、何か不具合でもあったかっ!?」


「い、いえっ……! マスターにいただいたこの身体に問題はございませんっ!」


「そうか……そりゃホッとした……」


 オレのせいでシラユキに何かあったら……なんて、もうシラユキなしでは生きていけない今のオレにとっては想像するだけでぞっとする話だからな……。


「ですが……調べた結果、生み出していただいた時と比べて何倍も性能が……電脳領域の処理能力や発信出力、それに身体強度までが上がっていたのです……」


「パワーアップした……? そういうことはあるものなのか?」


「いいえ、記録にございません。しかし、生み出していただいてからのことを考えると……仮説はございます」


「おお、さすがオレの嫁」


「ありがとうございます♡」


 なんだかこの褒め文句、癖になりそうだな。

 嬉しそうなシラユキがいちいち可愛い。


「確証のために、マスターのこともお調べしてよろしいでしょうか?」


「ああ、もちろんいいぞ」


 こういう解析して仮説をたてて検証して……ってところとか、そのへんはAIちゃんだった頃の名残があるのかもな。


 それはそれで可愛いからヨシっ!


 そんな風に嫁バカな男の娘をやってたら――。


 シラユキはベッドの端に腰掛けるオレの前に跪いて――。


「ではさっそく……その、お口で失礼します。……はむっ、ちゅっ、ぺろ……」


「ぅぉっ……!?」


 唐突にオレの足の間に顔を埋めると、その可愛らしい口で奉仕し始めたのだった……。



*****



「…………ふぅ」


「はぁっ……んっ……ぁっ……マスター……また、こんなに愛していただいて……ステキでした……♡」


 いえいえ、シラユキさんこそステキでしたとも。

 ごちそうさま。


 ……あれ、何をしようとしてたんだっけ?

 あぁ、なんかシラユキが立てた仮説を確証しようって言って……。


 まさかの『ごっくん』を披露されて……。


 そんなコトされたら今のオレがお口だけで終わるわけもなく……また存分にハッスルしてしまったんだった。


「す、すまんかった……つい……」


 シラユキの息が整い身体を綺麗にしたところで、オレは自分の暴走を素直に謝った。


「いえ、その……私からお誘いしたようなものでしたし、やっぱりこうして愛していただくのは私にとっても嬉しいことですので……。ただ、またマスターに愛していただいたおかげで、より確度の高い結果を得ることが出来ました」


「オレがシラユキとえっちしたおかげで?」


 シラユキは恥ずかしがりながらもまた嬉しいことを言ってくれていて、『つい』がまた出てしまいそうになったが、シラユキが口にした――色んな意味で――ことが気になってオレはそう聞き返していた。


「はい。マスターと……初めてマスターをときに、私が身体が熱いと言ったのを覚えていらっしゃいますか……?」


「ああ、シラユキとの大切な初めてだったからな。一言一句覚えているぞ」


 セリフを覚えるのは得意なんだ。

 オレは女優だったし、オタクだし。


「ぁぅ……そ、それでですね、原因は私ではなくマスターのお身体にございました。マスターの体液には従来品のスペックを遥かに超える超高性能MIMともいえるものが、それも超高濃度で含まれておりました。そしてマスターの体内にはこれを生成する器官が作られております」


「オレの体液って、まさか……」


「は、はい……。その、マスターのお考えの通り……キスしていただいた時の唾液や、私の中にたくさんいただいた、アレです……」


 お、おう……。

 だからさっき、オレを調べるって言ってオレは『ぱっくんちょ』されてサンプルを採取されたわけだな……。


「その超高濃度で高性能なMIMが含まれるモノをたくさんいただいた結果……接種した私の身体の電脳領域を拡張し、身体強度を高める効果があることがわかりました。さながらマスターのお身体で作られ接種した相手の性能を向上させる、天然の万能『調整液』ですね……含まれる高性能なMIMは『Super MIM』で『S-MIM』と言うべきかもしれません。ちょっと単純ですけれど……ふふっ」


 調整液て……ダジャレですかシラユキさん?

 スーパーな方を漢字にするとまんまヤバいだろうな……。


「お、オレの身体から出るものにそんなものが含まれているとは……」


「生み出していただいた時、たくさん愛していただいた後に調査のお話をした時、そして先程また愛していただいた後……3つの時点のデータを比較しましたので、間違いありません」


「いや、シラユキが言うことだ。疑ってはないぞ……?」


 疑ってはいないが……そんなことがあるなんて、それなんてエ●ゲ?


「ありがとうございます、マスター。結論としては……接種の度に電脳領域が拡張され、処理速度及び出力が強化され……その結果として、私でもこの特別製MCを扱えるほどになったと考えられます」


「な、なるほどな……」


 やっぱり説明を受けても細かい理屈は分からないが……オレのアレが理由なのはわかった。


 まぁえっちしてお互いに気分がイイし気持ちイイ、さらにオレの相手をした嫁――シラユキはパワーアップできる。

 まさにオレにヨシ、嫁にヨシ。ん~、グッドじゃないか。


 これは、イチャイチャしてるだけで宇宙最強の嫁が出来上がるかもしれないぞ……。

 オレもチートらしいし、釣り合いが取れるんじゃないか? しらんけど。


 ――くぅ~……


「ぁっ……ぁぅ……」


 オレがそんな都合のいい考えをしていると、隣から可愛らしく腹が鳴る音がしてシラユキが恥ずかしそうに頬を染めていた。


 腹が鳴るのを恥ずかしいと思う感情まで身についているとは……さすがオレの妄想から生まれた嫁。


「す、すみません……身体の調整にカロリーを消費したようでして、あの……」


「……ハハッ、ずっとシラユキとしてたからオレも腹が減ったし、今更だけど飯にするか」


「は、はいぃ……」


 細かいことはどうでもいいか。


 今はこの顔を真っ赤にしてる可愛らしい嫁と、うまいメシでも食うとしよう。






――――――――――――――――――――――――――――――――

あとがき

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ファンタジー世界を舞台にTS主人公が女学院で繰り広げる恋愛話もしっかりめのイチャラブも連載中ですので、合わせてお読みいただけると大変嬉しいです。

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次回、「嫁(船)を動かすための嫁(船員)?~お前がNo.1だっ!~」

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