第9話 吸血鬼の守護神
衝撃音を聞きアリエスとグレイ伯爵たちは、来た道を戻るとそこには衝撃の光景が……
「な、なんだ…これは……」
グレイ伯爵が驚愕して見るその光景とは。
そこには当たり一面、黒色で埋め尽くすほどのナイトウルフの群れだった。雪崩れのようにアリエスたちがいる洞窟に向かってくる。
黒い群れを見ると、その奥に王として居座るように一際大きな狼が洞窟から出てきたグレイ伯爵を鋭く赤黒い瞳で見つめている。
洞窟から出てきた伯爵に気づいた一人の兵が状況を報告するため、前に跪く。
「失礼します伯爵様ッ!! この洞窟を警護するためあたりを警戒していると、ナイトウルフの上位種のミッドナイトウルフが他のものを率いてここに攻め込んで来ました!!」
兵からの報告を聞いた、グレイ伯爵は顔を歪めた。後ろには守るべき領民が未だに眠りについているため、逃げるわけにはいかない。
「後ろにはまだ領民が残っている……今、ここで逃げるわけにはいかん! 陣形を立て直し、防衛に専念する!」
そう言うと、グレイ伯爵は自らが最前線へと赴いていった。
アリエスも加勢するため、海賊銃をナイトウルフたちに向けて構える。
海賊銃、アンとメアリーを無数のナイトウルフに向けて発砲する。
ーーズドンッ!!
銃とは思えないほどの威力がアリエスの銃から聞こえてくる。発砲された銃弾はナイトウルフたちを貫通していき、一発撃てば十匹を倒しているほどだ。
しかし、アリエスが一人加わったところで焼け石に水。ナイトウルフたちは数百、いや千匹にも届きそうなほどいる。
くそっ! 全然数が減らない! 弾が無限と言っても僕の魔力がなくなれば意味がない! やはり、ここはあの大きな個体を狙わねば、兵たちは消耗するばかりでこのままでは……
アリエスが苦しい顔をして、ナイトウルフたちを相手にしていると……
ーーキィイイイイイッーーー!!!!
洞窟から黒い小さな影が飛び出してくる。そう、あのエリーと仲良しのコウモリだ。
コウモリがウルフたちの空を飛び始めると、下にいるナイトウルフたちがパタパタと倒れ始めた。
その様子を見ていたアリエスが、後ろで魔法を撃っていたエリーの元に向かう。
「エリーさんッ!! お願いがあります!!」
「なにかしら!?」
「実は………」
アリエスの提案を聞いたエリーは、最初は戸惑う様だったが、アリエスのある言葉を聞きその提案を受け入れる。
そして、エリーはアリエスからの言葉通りに前線で戦っていた兵たちに向けて大きな声で言う。
「兵の皆さんッ!! 今の戦いに強力な援軍が来てくれました!! この森に住まうと言われている、吸血鬼族を守護し、森に住まう魔物たちを狩る、神獣様が我々の味方をしてくれますッ!!」
初めは神獣などと突然言われ戸惑う兵たちだったが、倒れていく魔物たちを見て、エリーお嬢様の言うことは真実なのだと実感し始めた。
神獣が味方してくれると聞き、兵たちの士気が今までで最高潮に上がる。
ーーうぉおおおおおーー!!!
兵たちから歓声が上がる。その迫力には、相手をしていた、ナイトウルフたちも後ずさる。
なぜ、神獣と聞いた兵たちの士気がここまで上がるのかというと。
神獣とは、魔物が長い年月をかけ魔力と知恵を蓄積させ、幻獣を得て、さらに進化した魔物の最上位種と言われている。
実際には、まだ幻獣の段階だが神獣と言われた方が士気が上がると思い、軽い嘘を交えて兵たちに伝えた。そのおかげもあって、先ほどまでは押されていたのが嘘のようにナイトウルフたちを押し始めた。
そして、ついにグレイ伯爵が前線にてナイトウルフの上位種、ミッドナイトウルフを打ち倒したのか残りのナイトウルフたちが撤退を始めた。
「今度こそ、我々の真の勝利だぁああああ!!!!」
ーーうぉおおおおおおーーーッ!!!!!
こうしてナイトウルフたちによる第二の襲撃が幕を下ろした。
読んでくださりありがとうござました。
少しでも面白いと思われましたら、評価のほどよろしくお願いします。
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