第8話 原因発見!?


 ナイトウルフの群れを追い返したアリエスとグレイ伯爵一行は事件の原因を探るため、魔力の残滓を追って森の中を進んでいく。


 しばらく歩いていると、森の中に人一人が倒れそうなほど小さな洞窟が見えてきた。


「見えてきました!! あそこです! あの洞窟から夢の魔力を感じます!」


 アリエスには分かった、あそこの洞窟から接触された人の中に残っていた魔力の残滓が残っていることを。


 アリエスの報告を聞いた、グレイ伯爵は兵たちに指示を出す。


「分かった! ここからは少数精鋭で行く。その他のものは洞窟周辺を警戒、我々が洞窟の中に入っている時に何人たりとも入れるな!」


「「「はっ!!」」」


 グレイ伯爵に敬礼をすると、指示通りに兵たちが各々動き出した。その動きは迷いなく自分が何をすればいいのか分かっているようだ。


 指示を出したグレイ伯爵は、アリエスに洞窟の案内を頼む。


「アリエスくん、案内を頼む」


「分かりました、任せて下さい!」


 頼まれたアリエスは、ドリームボックスから懐中電灯を取り出し暗く狭い洞窟の中に入っていく。


 アリエスは懐中電灯を照らしても未だに暗い洞窟にため息を吐きながら進んでいく。


「それにしても、洞窟の中は暗いな。グレイ伯爵様たちは暗くても大丈夫なのですか?」


 懐中電灯を照らしていなければアリエスの目には、ほぼ真っ暗で何も見えない。そんな、光がなくても見えている風なグレイ伯爵達に疑問を抱く。


 そんなアリエスの疑問にグレイ伯爵が答えてくれる。 


「夜は我々は吸血鬼族の時間だからね、基本的に夜目の能力が備わっている。まぁ、逆に昼間には弱いのだが」


 なるほど、確かに吸血鬼といえば夜だもんな、魔眼があるぐらいなのだから、夜目ぐらいあるよな。

 吸血鬼ってもしかして、最強種? でも、昼間は弱体化するらしいし、バランスは取れているのか?


 そんな事をアリエスが考えていると、狭い通路から広い空間に出る。


 そこには、パジャマ姿のたくさんの人がそこら中に横たわっていた。胸は上下しているので、死んではいない。


「いました!! 先日に失踪の届出が出された者たちで間違いないです!!」


 兵が一人確認すると、いなくなっていた人と一致する。


「それは良かった。しかし、なぜこの場所にまとめて寝ているのだろうか?」


 それもそうだろう、何かする訳でもなくただ眠りについているだけ……犯人の目的はなんなのだろう?


 一人一人の安全を確認していると、兵が慌てた様に声を上げる。


「なんだ、あの魔物は!?」


 指をさす先にいるのは、ある一匹の普通のコウモリ。


 しかし、内包している魔力がそこらの魔物とは比べ物にならないほど強力。

 先ほど遭遇したナイトウルフの魔力が10とするなら、このコウモリの魔力は100、いや200はあるかもしれない。


 それは、もう異常と言ってもいいだろう。そのクラスの魔物は人前に滅多に姿を現さない幻獣クラスだ。


 アリエス以外の人がその魔力の多さに驚愕している時、アリエスは別のところに注目していた。


 アリエスがコウモリの魔物を指さして、グレイ伯爵に告げる。


「伯爵様!! あれです! あの魔物から夢の魔力属性を感じます!!」


 アリエスの報告を聞いた、グレイ伯爵は冷静にコウモリの魔物を睨み付ける。しかし、その頬には若干の冷や汗をかいている。


 いくら伯爵が強いと言っても、ここにいる全員を守ることは流石に難しい。そのため、表面上は冷静でも内心ではかなり焦っていた。


「あの魔物が、今回の犯人か……」


 呟くようにグレイ伯爵がそう言うと。


「領民を保護する者、あの魔物と戦う者に分かれ行動を開始! アリエスくんはできればこちらの戦闘組にきてくれ!」


 領主として領民を一人でも守るため、グレイ伯爵は兵たちに迅速に指示を出す。


「分かりました!」


 グレイ伯爵からの要請に、先ほどの二丁の海賊銃を、取り出しながら合流する。


 その時だった、


「待って!!」


 コウモリの魔物がある奥の方から、聞いたことのある少女の声が聞こえてきた。


 綺麗な銀髪に、血の様に赤い大きな瞳、黒いドレスに身を包んだ、アリエスを今回の事件に勧誘した張本人。


「エリー!! なぜこの場所にいる!?」


 グレイ伯爵が驚愕した様子で奥の方から出てきたエリーを見つめる。


 アリエスもグレイ伯爵同様、驚愕した様子でエリーを見ていた。


 そんなエリーは、コウモリの魔物をアリエスたちから守るように前に立つ。まるで、いじめられている子を母親が守るように。


「この子をいじめないで!! その子はただ生きるために仕方なくしたことなの……」


 アリエスたちを睨みつけるように見た後、暗く顔を落として泣きそうな声で言う。


 そんな、自分の娘の様子を困惑した様子でグレイ伯爵は見つめるしかなかった。


「……どういうことなんだい?」


 娘に向けて領主ではなく、父として優しく声をかける。


 尋ねられたエリーは、今回の事情を説明してくれた。



 このコウモリの魔物はエリーが一年前にこの森の近くで倒れているのを見かけた。


 可哀想に思ったエリーが治療してから森に帰そうとするが、エリーからなかなか離れず妙に懐かれた。


 そんなに危なく無さそうだし、たまにこの森に来てはコウモリと遊んで日々を過ごしていた。

 

 でも、段々と魔力が強力になっていき心配になったのだ。


 驚くことにこのコウモリは、エリーの魔力を食べてだんだんと成長していったのだ。伯爵の娘のエリーは、魔力もそこらのものより強力で食べれば食べるほどコウモリの魔力は強力になっていった。


 今回の事件の心当たりはあったが、もし見つかってしまってはダメだと思いこのコウモリの魔物とは距離を置いていた。


 でも、お父様たちがこのコウモリを退治してしまうかもと思い、心配になって見にきたのだ。

 

 そしたら、案の定退治しようとしたので出てきたというわけだ。



「エリーの気持ちもわかる。それでも、今回の事件は大事になりすぎた、領民にも迷惑かけたことに変わりない……」


「そんな……」


 父の決定が変わらないと分かり、目の端に涙を溜めて落ち込む。


 そんな時だった、


 ーードォオオオオン!!!


 外から、何かが破裂したような大きな音が聞こえてきた。洞窟がぐらぐらと揺れておりどれほどの衝撃かが伺える。


「な、なんだ、今の衝撃音は!?」


「と、とりあえず外に行きましょう!」


「そ、そうだな。よし、お前たち住民を安全な所まで運び込むぞ!」


 住民をエリーの案内のもと安全なところに運び出す。


 住民を運び出した後、音の出どころに向かうとそこには衝撃の光景が待っていた。



 

 読んでくださりありがとうございました。


 少しでも面白いと思われましたら、評価のほどよろしくお願いします。

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