第13話 魔ねき猫が、顔を洗うと。。。

月がマントに隠れると、犀花の頭の中で、萎れた花の様に、月はしぼみ、また、退屈な学校の屋上に戻っていた。あの長身だったナチャも、醜い蜘蛛の姿になっていた。

「どうして、見せたのか?わかる?」

蜘蛛のナチャとしては、低い声で犀花に話しかけた。

「ずーっと、鈍臭い自分dと思っていた」

犀花は、ため息をついた。

「自分の人生って、なんてつまらないんだろうって」

「マスター。見せた事は悪いとは、思っていない。どうして、あなたは、生き抜いたか、知って欲しかったから。あの闇の時代から抜け出し、守った先代の人達の事を」

「まだ、わからないんだけどね」

遠くで、授業開始のチャイムの音が聞こえた。

「どうして、たくさんの子ども達が攫われていたの?魔女狩りとは、また、違うわよね」

「そうなんだよ。マスター。問題は、そこなんだ」

ナチャも犀花も授業が始まるなんて、最早、気にしていなかった。

「今も、昔も、たくさんの子ども達が、拐われている。どうして、この時代に、君がいるのか?君が、願ったから」

「私が?」

「そうだよ。マスター。君が、始めた。僕を使し、この地に現れた。この八百神の地にね」

「どうして?」

「わからない」

ナチャは、短い首をくるくる回した。

「僕は、わからない。君が決めたから。僕を使わしたのに。僕を拒否していたし。何があったか、僕は、わからない」

犀花は、納得しない顔をした。

「さあ。犀花。今の勤めを果たして。学生の本分だ」

犀花は、渋々、教室に向かった。授業は、始まっており、教室の後ろから、そっと、中に入っていたが、誰も、木に知る様子はなかった。1人の意地悪な子が、足を掛けようとしたが、ナチャが、足先に飛び降りると、その子は、小さな悲鳴をあげた。こんな事が、最近、よくある。ナチャが現れてから、何かに守られている。そんな気がした。

「だけど」

頭の中に、マント姿のナチャがいた。今とは、全く別の姿だった。想像もつかない。何故、こんな姿になってしまったのか。

「罰よ」

誰かが言った。

「誰が与えた罰?」

白いノートに書き殴る。

「忘れたのか?」

ノートの中に、あの猫が顔を出した。

「お前だ。」

「私?」

猫は、恐ろしい顔をして、犀花を睨んだ。

「お前だ。お前が全て、そうした」

猫の口元は、裂け、長い舌が覗いている。

「恨みの声を聞け!」

猫は、長い前足で、犀花を掴むとノートの中に引き摺り込んだ。ナチャが、他人の足先に飛び降りた、本の一瞬の間の事だった。

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