第13話 ユウナの夢と決意
「じゃかじゃかじゃかじゃか〜♪ じゃ〜ん!」
ドラムロールの音に続いて、ユウナのスマホを見せてもらった。
映っていたのは紛うことなき全裸の写真。
といっても上半身のみで、胸の大切なところは髪で隠れている。
本物のユウナより少し美人だ。
アプリで美肌加工しているのだろう。
あ〜でもない、こ〜でもない、とスマホを操作している姿を想像して笑ってしまう。
「どうしたの? 急にエロに目覚めちゃってさ? ユウナって、SNSとか興味ない人だよね」
「私なりに真剣に考えてみたんよ。五年もしたら社会人になっているかもしれないじゃん。私みたいなクソ
『使えないやつ』の
かといって転職のアテもない。
まさに生き地獄。
「うわぁ……生々しいな。その若さで絶望しているの?」
「笑い事じゃないって。マジで絵を描いて、お菓子を食って、ゴロゴロするだけしか能がない女なんよ」
「後ろの二つは能と言わないけどね」
自分のダメさは自分が一番理解している。
ユウナはそういって、ずずずっとコーラを飲む。
「ハルくんが私を一生養ってくれる?」
「それだけは絶対ヤダ」
「でしょ〜」
お金を稼ぐしかない。
特技の漫画で。
「エロ漫画家になるしかないと思っているんよ。少年漫画みたいなやつ、描けないしね」
「いやいやいや……。その若さでエロ漫画家志望? でも、エロ漫画で収入を得るのだって、相当に難しいんじゃないの?」
「そこで顔出しだよ〜」
ユウナは自分の胸を上下に揺らした。
「エロい女が生きるためにエロ漫画を描く。これなら需要ありそうだよね」
「ああ……動画配信者みたいに固定ファンから支援してもらうわけね」
「そうそう。美少女が美少女のエロ画を描いたら、二倍お得だろう」
「確かに……」
ユウナにしては考えたな、という気がする。
おそらく先駆者がいて真似したくなったのだろう。
「そのアイディア、誰かのパクリでしょう」
「どうして分かったの⁉︎」
「ユウナのアイディアにしては秀逸かつ現実的だと思ってね」
「ぐぬぬ……バレたか〜」
ユウナは動画投稿サイトにアクセスして、とあるイラストレーターさんの動画を再生した。
「この人、普通に可愛いんだよね〜。作業風景とか流しているだけで、チャリンチャリンとお金が降ってくるの。あと、コスプレ趣味があるの」
「つまり、楽して稼ぎたいと?」
「そうじゃない。日本中の疲れたサラリーマンに
時々おしゃべりしているが、基本は淡々と作業している。
リスナーがその場で商品を買ってくれることもある。
「この人の身長、何センチだと思う?」
「さあ……160cmくらいじゃないの」
「実は145cmなんよ。私より少し上なんよ」
「マジで⁉︎ 顔ちっさ!」
「ネットの世界だと、チンチクリンの体型もハンディにならない」
若さは女の武器。
その発想がユウナの頭から出てくるなんて、今年で一番のびっくりかもしれない。
「エロ漫画家になる夢、二人だけの秘密だからね。親には言わないでね」
「言うわけないだろう」
ハルトの父が心配して帰国してくるかもしれない。
「二十五歳くらいまでに、まとまった貯金を作らないと、私の人生は確実に詰む。そのくらいの覚悟はある」
「お……おう。まあ、頑張って」
将来を真剣に考えるなんて、ユウナも
ハルトはそう思いつつ、カレーの残りを平らげた。
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