第3話

気づいたら俺はゴミの平野に横たわっていた。

どうやら、あの後この場所に捨てられたらしい。


勝手に誘拐されて、勝手に投げられて、勝手に捨てられる。

全く持って人生とは理不尽極まりない。自分の思い通りになることなんてほとんどないようだ。

まったく、ゴミのような人生だ。


しかし、臭いな。


あたり一面がゴミだらけなためにめちゃくちゃに臭い。


そして寒い。


なにも着ていないために風がすーすーする。股の間を風が通るのは勘弁してほしい。


周辺を探すとゴミの衣服があった。

ボロボロで穴だらけで、染みだらけで、傷だらけ。


まことにゴミな衣服だ。


もっとましなものはないかと思い周囲を探しても何もない。

仕方がないか。


ゴミの衣服を手に取る。

すると衣服が輝いて別のものになっていた。


真新しい衣服だ。

誰も着ていない衣服。とはいえ、ちょっと衣服としてはグレードが低そうなもの。


なんだこれ。いったい何が起きたんだ?


理解不能だが、ひとまず着ることにした。

衣食住をもって礼節を知るというが、着るものがなければ落ち着いて考えることすらできない。


着ると着心地は不思議と良かった。いい感じだ。


俺は周囲にあるゴミに手をかざしまくった。


するとどんどんとゴミが別の真新しいものに変わっていった。


真新しくなるものには何かルールがあるようだった。


元の物の新品よりもグレードが一段階落ちている。

グレードが落ちる?


まるで、リサイクルのような能力だな。

あれはゴミを一度分解してもう一度作り直す。

大概のものは以前の物よりも価値が下がっている。


中には価値が上がるのもあるが。


そんなリサイクルができるようになったわけか。


地味だな。まぁないよりかはましだろうけれど。


リサイクルをするスキルか。


こんなことができるなんて、いよいよここは異世界なんだな。



しかし、疲れた。

最初から微妙に感じていたが、スキルを使う度に疲れている。

これがいわゆるMP消費ってやつかな。


能力が芽生えたが無限に使えるというものではないようだ。

当たり前か。



「腹が減ったな」


一度落ち着くと、腹減りを感じるようになった。

ちょうど一日何も食べていないというくらいの腹減り具合だ。


つまりはぺっこぺこだ。


地面にある食事のゴミを見た。


まさかまさかと触れてみる。ばっちい。

そして光るとその食事はまたグレードが下がったが食べられるものに変わっていた。


食えるだろうか。いや、食うしかない。

口の中に入れてみると素朴な味がした。

調味料抜きで作ったような料理だ。

塩は入っている。だがそれだけだ。せめて味の素も使ってほしかった。






それから、俺は周辺にあるものをリサイクルしまくった。

腹が減ればゴミをリサイクル。衣服をリサイクル。カバンをリサイクル。


一月後、そのゴミの平野からゴミは一切なくなっていった。


リサイクルしたものは、リサイクルしたカバンに全て詰め込んだ。


理不尽がくれたスキルと、ゴミがくれたリサイクル品。

これだけあれば十分だ。


さて旅に出よう。









適当に歩いていると、街が見つかった。異世界での初めての街だ。

わくわくする。


街に入ろうとすると関所があり、衛兵がわいろを要求してきた。


どうやら、俺の身なりがこの辺で見ない奴だからか、通常の奴よりも多めに要求してきたのだ。


あまり争う気はなかったし、正直金ならいくらでもあったので渡した。

もちろん金はリサイクルした。古代金貨みたいなのもゴミとして放置してあったので、それをリサイクルしたのだ。


金を渡すと相手はもっと要求してきた。


ゴミらしい。こいつはゴミだ。


俺はそう思いながらお金を渡すと、いつの間にか衛兵は若い少年兵に変わっていた。


先ほどいた衛兵はいなくなっていた。どこに行ったのだろう。


衛兵は何故か謝罪し、余分なお金を返金してきた。


こんないい衛兵もいるもんだと思いながらお金を受け取り街に入った。



街の中は正直大したものはなかった。


普通の街。

薄汚い街。


初めて訪れたにしてはもうちょっといい街に行きたかった。


人も、お金を持っていると見るやボッたくったり、恐喝したりする人達ばかりだった。


ただ、その人たちは俺が触れると皆、いい人に変わっていった。


俺が持つ能力は人間にもリサイクルが可能らしい。


やってしまったのだろうか。


いや、どうせゴミだなと思ったのだから別に問題はない。


それにいい人になったのなら本人も喜ぶだろう。



その後も旅をつづけた。


ゴミな街やゴミな国を訪れた。

その度にリサイクルの能力を使った。


ゴミな魔王もいたし、ゴミな勇者もいた。

そいつらにもリサイクルしていい魔王、いい勇者になった。


いい人、いい街、いい国はたまにしか存在しなかった。


そして、この世界はゴミだと判断した。

ほとんどがゴミなのだから仕方がない。


すると世界が一変した。


世界は若干文明が遅れた世界に変わった。


なるほど。俺はこのために呼ばれたのだろう。

世界が再生された。


さて、もう一度旅に出よう。

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召喚されたらゴミ箱行きでした サプライズ @Nyanta0619

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