第10話 クレン

コンコンコン


「Dランク冒険者のレイをお連れしました。」

「入れ」

「失礼します」


ギルド長室に入るのはナナシ街の叔父さんのところ以来だな…

あそこは扉は少し豪華だったけど、内装はソファとデスク以外特にない質素な部屋だった。

対してこちらはオリハルコン製のハルバードや大剣などの武器、ミスリル製の全身鎧などの防具、どれも1級品と言って差し支えないものが壁に立てかけられていた。


「ほう、お前があの阿呆を返り討ちにしたニンゲンか。レイ・シュヴァルツハイン、聞いたことない名だな。俺はティグだ。」


入った瞬間から品定めするような視線を浴びせてくるこの男がギルド長なのだろう。茶がかかったフサフサの髪に胸元まで伸ばしている髭。鍛え抜かれた筋肉は服の上からもわかるほどで、現役の冒険者と言っても疑わないくらいに強そうだ。


「俺はつい先日ナナシ街で冒険者の登録をしました。その時ゴロッサさんと戦い、倒した魔物の実績も合わせてDランクとして判断されたので、聞いたことないのも自然じゃないですか?まだ活躍らしい活躍もしていないので。」

「ほう。つい先日、ね。まあいい。今回呼んだのはな、お前に正式に決闘を受けて欲しいからなんだよ。」

「それまたなぜ?」

「あの阿呆、クレンはCランクの冒険者なんだが、如何せんこの街は王都に近いから高ランクの人はみんな王都に行ってCランクのあいつが1番強いんだよ。それでか知らんが、横柄な態度を取るようになってな、俺も困ってたんだよ。お前にはその伸びきった鼻を完膚なきまでにへし折って欲しい。」

「はぁ、嫌です。俺にメリットがない。早く王都に行っておきたいんです。」

「ほう、王都に行っておきたい、理由を聞いてもいいかね?」

「カッキンロウ騎士団の入団試験を受けるためです。あ、裏口入団とか、ただでさえニンゲンで非力な種族としていい目で見られないのに余計にバカにされるだけなんで嫌ですよ」

「何、勝ってくれればCランク相当の実力があるということで、ランクを上げてやるというだけの話だよ。そしたら少なからず入団試験でプラスに働くだろうさ。」

「なるほど…悪くない話ですが、負けた場合、俺はどうなるんでしょうか?」

「何もせんよ。こちらから頼んでいるわけだし。受けてくれるか?」

「…分かりました。決闘してみましょう。」

「では明日の朝9時頃にギルドに来てくれ。」

「分かりました。」


〜〜〜


ボコボコボコボコ

『きしゃぁぁぁぁぁ』


「閻魔様、どういたしますか?」

「どうするもこうするも、こいつ溶龍だろ…消すか飼うか…」

「私は消しちゃうのは勿体ないと思うよ〜。データによると相当生まれるの珍しいからね。とはいえ、言うこと聞いてくれるかは分からないけど。」

「やっぱ問題はそこだよなぁ。」

「閻魔様ぁ、とりあえずぅ、私が戦ってくるねぇ。」


マグマに龍がいて、閻魔と呼ばれている男と仕事の出来そうな女性、背が低く、活発な子供みたいな女性、ミノタウロスみたいな女性の計4人がいて、そのうちミノタウロスみたいな女性が龍に攻撃を仕掛けていた。


「バルクぅ、アップ〜!!」

「きしゃぁぁぁ」

「バリアあスタンプ〜、か〜ら〜の〜、メテオストライク〜」

「ぎょええええ」


溶龍呼ばれていた龍が隕石のようなブレスを放ったのに対して障壁をまとった突っ張りで防ぎ、高く飛び上がったかと思うと、頭から落ち、生えている角を突き刺した。

一方視線を見ている3人に移すと


「ニータ相変わらず出鱈目な攻撃をするよね!」

「私はいつか体を壊すんじゃないか心配ですけど…」

「リョーカの心配も分かるけどな…まあ、俺の血が枯れない限りお前らは死なせないさ」


こんな話をしていた。


「はぁ!」

「ギュルルル…」

「あっ…生きてるかなぁ…」

「ニータお疲れ様。」

「閻魔様ぁ、殺っちゃったかもぉ…」

「うーん、大丈夫そうだよ。生きてる。」

「キュロロロロロ」

「はい、お前は落ち着け」

「ギョエッ」

「…今のチョップで首折れてない?大丈夫なの?」

「あ…ま、大丈夫っしょ。」


〜〜〜


コケコッコー!!!

「はっ!またあの夢か…あの日からずっと見てるな…違う場面だけど、絶対同じ人の夢だよね…」


宿屋の鶏の鳴き声で目が覚める


「主殿、どうかしたのか?」

「いや、夢がね、なんか不思議なんだよ」

「夢、か?」

「ああ。寝てる時に見るものだ。」

「それなら俺も見たぞ、主殿に会う前、小鬼族の族長って人が。初めての事だったから覚えてる。それで主殿を見つけたんだから。」

「小鬼族の族長…?強くするって夢の中で約束してたな…ちょっと待って、今までに見た夢を今一度整理するぞ…」


・ナナシ街でゴロッサさんに気絶させられた時に見た夢、確かあれは閻魔と呼ばれていた人が罪人を処罰する夢だったな、その後顔を洗おうとしたら目が赤く光ってたっけ…

・リュークに出会う前に見た夢、小鬼族の族長との会話だった

・そして今見た、龍をチョップ一撃で昏倒させた夢


「今までに見たのはこの3つ」

「主殿、全部閻魔というのが関わっている夢のようですね。」

「うん…偶然とは思えないけど…うーん!考えても今は仕方ないか!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る