第11話 決闘
カランカラン
「ようこそ冒険者ギルドへ!!あ、レイさん、まだ8時なのにもういらしたんですか?」
「はい、宿の鶏に起こされて…ははっ」
「クレンさんはまだいらしていません。どうされますか?」
「えっと、このギルドでの決闘が初めてだから、一応どんな場所か確認しておきたいです。あと、ルールの確認も。」
「かしこまりました。決闘はギャラリー席付きの訓練場でやるので、そちらへご案内する道中でルールの説明を致しますね。では行きましょう。」
受付業務があるだろうに、わざわざ案内してくれることになった。受付の右手に酒場があり、そちらで軽食を摂ることはあったが、左手に行ったことはなかった。今回の訓練場とやらはその左手側にあるらしい。
「当ギルドにおける決闘は審判の初めの合図で開始され、片方が降参するか戦闘不能と判断されるまで続けられます。所属冒険者は皆低ランクの者なのであまり心配はありませんが、クレンさんとレイさんの試合の時は死に至る攻撃も禁止とされ、それを放つ素振りが見られたらギルド長が止めに入り、それを見せた方の負けとなります。怪我は自己責任となりますが、挑まれた側がこの決闘によって被った損害は挑んだ側に補償が命じられます。今回レイさんは決闘を挑まれた立場にあるので、仮にクレンさんがあなたに大怪我を負わせ、冒険者活動を休止せざるを得ない状況になったらレイさんはクレンさんに養ってもらう権利を与えられるわけですね。このルールは強い者が弱い者に勝負をしかけ、サンドバック代わりにしないための措置でもあります。したがって、挑んだ側がボッコボコにされても文句は言えないので、どうぞ完膚なきまでに叩き潰しちゃってください!」
「あ、はい…」
「あ、すみません、私ったら…失言でしたおほほほ。ん゙ん゙、こちらが訓練場になります。」
受付嬢さんの失言もありながら、俺たちは訓練場に到着した。中は土で、特に障害物はなさそう。完全に一対一の力量が試される場、という訳だ。有効打を決めても油断しないようにしないとな。
「ありがとうございました。」
「クレンさんが来るまでここで準備運動しててもよろしいですよ。これは早く来た者の特権ですから。」
「あ、いいんですか!?ありがとうございます!!」
「やらないと思いますが、穴を掘ったり地形を変えたりしたらダメですからね。」
「はい。あ、木刀を頂いても。」
「そうですよね。決闘では殺傷力のないように真剣を使わないんでした。持ってくるので待っててください。」
〜〜〜
「フンッフンッフンッ」
「ほう、逃げずにもう来てるとは、それは褒めてやる。ただ可哀想に、怖くて寝れなかったんだな。ガッハッハッ」
「…」
「怖くて声も出ないか。まあいい。始めようや」
「今回はギルド長のティグの俺が審判を務める。よろしく頼む。では両者用意は良さそうなので、はじめ!」
クレンは大剣を使うようだ。木でできているとはいえ相当重く、本気で殴られれば骨折も有り得る武器だ。クレンはそれを持ってこちらに駆け出した。
「おらっ!」
「ちっ」
二本の木刀でそれを受け止めるも、ジリジリと後ろへ後退させられる。純粋に力負けしているのだ。刀の方向を少し変え、大剣をいなして距離をとる。
「縮地」
距離を取った瞬間、一瞬でクレンの懐に潜り込んだ俺は驚いている奴の顔を目の端に収めながら、胴体に二本の木刀を叩き込んだ。さすがに筋肉質なドワーフなだけあって吹き飛ばされるようなことにはならなかったが、悶絶して、その場に倒れ込んだ。肋骨の数本くらい折れているだろう、微量だが吐血もしている。
そんなクレンの首に木刀を当てると、
「そこまで。勝者レイ」
ギルド長が試合終了の合図を出した。
「くそっ」
「ちくしょーー!」
クレンの口からだけでなく、観客の方からも悔しげな声が聞こえた。クレンがここのギルドではエース的な存在で、勝つと予想して賭けを行った人が多かったらしい。
後から聞いた話だと俺に賭けていたのはギルド長だけだったらしく、ギルド長の一人勝ちだったそうだ。こんだけ利益を上げたのならもう少し条件をふっかけても良かったかも、と少し後悔している自分がいた。
〜〜〜
「はい、お疲れ様でした。こちらレイさんの冒険者ライセンスカードになります。Cランクに昇格しました。」
「思いの外簡単にCランクまで上がれたな…」
「そんな!普通は3年、過去の英雄クラスの人でさえ1年かかったという話ですよ!貴方が異常なだけです。」
「簡単だったものは簡単だったんだけど…」
「それはそうと、王都近くの都市、ツヴァイリアに行く商人の護衛依頼があります。お受けになりますか?」
「おお、護衛依頼ですか!初めてなので勝手は分かりませんが、やってみます!」
「かしこまりました。出立は3日後の朝8時だそうです。その少し前に正門に行ってください。他の冒険者との顔合わせもございますので。」
「分かりました。ありがとうございました!」
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