第8話 ゴブリン
「ギギィ(こんなに話したのは久しぶりだ。なんだか楽しかったぞ。)」
「俺、今来ているゴブリン共と戦おうか?」
「グギギ(くくくっ、無理に決まってる。お前見たところ人族の子供だろ。やめておけ。)」
「そんなにやばいのか?」
「グギギ(この俺様が適わねぇんだ、強えぞ)」
「じゃあ2人で戦えば勝てるか?」
「グギシャ(そいつァ傑作だ魔物と人間が魔物相手に共闘か。やってみる価値はあるな。)」
「ゴブリン、いや、リュークという名を与えられし小鬼族よ、我と共に敵を倒そう。」
ふと頭に浮かんだ言葉を話す。すると、
「グググ、グギャーーーー」
周囲が光で見えなくなり、次第に光が収まると目の前に額に角が2本生えており、それ以外は限りなく人間に近いゴブリンの姿があった。
「う、うわあ!なんだこれ!?」
「え?誰?」
「さっきまでお前と話していたゴブリンだよ!」
「嘘だ〜」
「いや、俺様の名前はリューク、小鬼族で、レイの使い魔となった鬼だ。今俺にリュークという名を付けただろ。」
「あ…」
脳裏に昨晩の夢が…
『小鬼族が雑魚キャラとして……云々……鍛えてあげてください。』
「うっ…」
「主殿大丈夫か!?」
「ああ。それより、近づいて来ていたというゴブリンは?」
「さっきの光でこっちにいると確信したようだぜ。」
「はぁ、なんかまだ混乱してるけど、迎え撃たなきゃやられるか…」
「今なら俺だけで倒せるぜ。任せとけ!」
「わかった。任せる。」
ドッ
すぐに走って行ってしまった。しかも先程のゴブリンとは思えない速さで、だ。
「今のうちにさっきのことを考えよう。小鬼族、たしかに夢の中でも言っていた…あれは本当に夢なのか?」
『レイ君や。お主は前世というものを信じるかの?』
『ゼンセ?』
『ふぉふぉふぉ、難しかったかの?自分が生まれる前の自分のことじゃよ。』
『ふぅん…』
「たしか、村長さん前世って言ってたよな…」
『儂は正直な、前世などないと思っておったんじゃ。しかしのぅ、儂がまだ王都に住んでいた頃恐ろしく頭のキレる、強い子がおったんじゃ。そいつが言うには、前世で剣聖をしていたからこれくらいできて当たり前らしいんじゃがな。』
『こら、おじいちゃん、また変なこと子供に吹き込まないの!』
『変なとはなんじゃ変なとは。』
「前世の記憶、もし本当にあって、それが強さの秘訣になるのなら、俺のこれは…」
「主殿!倒してきたぞ!」
「あ、リューク!お疲れ。」
「ところで主殿、人間は魔物の素材を買い取るなどと聞いたことがあるんだが、ゴブリンは何が売れるんだ?自慢じゃないが売れそうな部位はねぇぞ?」
「あぁ、ゴブリンは魔石が売れるんだよ。でもまぁ、安いから、いいよ取りに行かなくて。それより早くシシの街に行こうよ」
「主殿がそう言うなら…」
〜〜〜
シシの街
ここの領主の先祖は今でもカッキンロウ騎士団内最強部隊と名高い第一部隊、通称『クリムゾンレオン』の元隊長だからレオンの獅子を取ってシシの街というふうに名付けたらしい。ライオンの獣人が領主を務めている街、という訳ではないのだ。
「ここがシシの街なのか!族長たちには殺されるから近づくなって言われてたから知らなかったけど、人間ってすげーんだな、こんなデケェ街」
「ドワーフだけどね…まぁ、ある程度文明がしっかりしてるとこれくらいの街はできるでしょ。王都はもっと凄いらしいし。」
「止まれ!」
前の人たちが特になんの検査も受けずに素通りしていくからそのつもりでいたけど、槍を交差させて通せんぼされた。
「主殿、こいつらは?殺していいのか?」
「いや。この方たちは門兵でね、街の平和を守るために怪しいヤツを取り締まってるんだ。」
「ふーん。」
「身分証の提示を」
「はい、こちら冒険者ライセンスカードです。」
「冒険者殿でしたか!して、今回は何用でこちらまで?」
「カッキンロウ騎士団の入団試験を受けるためにシシの街を経由しようと思って。」
「なるほど。いいでしょう。で、そちらの角が生えた人間は?」
「彼は小鬼族です。ゴブ林で出会ったゴブリンが進化してこうなりました。」
「となると、相当知能が高い魔物ということですね?」
「はい。」
「分かりました。では、こちらの腕輪を装着させてください。街から出る時に取り外すことは可能ですが、従魔であることを示すものでもありますので、外さないことをおすすめします。」
「なるほど。ありがとうございます。」
人間と見たことない種族の組み合わせだとやはり怪しいよなぁ。
そんなことを思いながらも、問題なく通ることが出来たので、良しとする。
「主殿、この後はどうするのだ?」
「とりあえず冒険者ギルドに行こうと思う。そこで、正式にリュークを従魔として登録するから。」
「そこら辺は任せるぜ。」
「おう。じゃあ、入ったら呼ぶまで適当に時間を潰しててくれ。」
「わかった」
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