第5話 ナナシ街

デザートスネークとロックリザードを引くこと数時間、大きな影が前方に見えてきた。


「あれは!外壁だ!!」


ナナシ街の外壁が見えてきたのだ。

入街検査の列が長く、今日中に街に入れないかもしれない!

なんてことはなく、5分もしないうちに俺の番になった。


「はい、次の方」

「はい!」

「おう、元気な坊主、って年齢でもねぇか。でも人族の子供か。珍しいな。」

「はい、よく言われます。」

「全員に聞いている事だから、気を悪くしないでくれよ。まず、どこから来た?」

「クギ山です。あそこで、お爺ちゃんと2人で暮らしてまして、今回は王都にカッキンロウ騎士団への入団試験に向けてこの街を経由する形になります。」

「おう、しっかりとした回答をありがとな。クギ山か。そういえば、あそこの麓にある村、大丈夫だったか?」

「それが…壊滅してしまって…生き残ったの俺と爺ちゃんだけなんです…」

「すまねぇ、つらいことを聞いちまったな。」

「あ、いえいえ、お気になさらず。俺がカッキンロウ騎士団を目指すきっかけになった事件ですから。もう二度とあんな悲劇は生みたくないんです。」

「おお、そいつぁ頼もしいな。頑張れよ。」

「はい!」

「ん、よし。問題なさそうだな。じゃあ通行税銅貨5枚だ。あ、そうだ。これから色んな街に行くだろうから、冒険者になっといた方がいいぞ。通行税が免除されるからな。それに、その引いてる魔物、買い取ってもらえるぞ。」

「貴重な情報、ありがとうございます!」

「おう。」


〜〜〜


冒険者ギルドに着いた。

街の人たちが俺の方を見ていたけど、やっぱり目立つのかな…


ギィー


「こんにちは〜」


昼間に着いたからか、ギルド内はあまり人がおらず、中にいた人もすぐに興味を失ったようにまた酒に夢中になった。そんな彼らを見ていると、受付嬢の1人が扉の方まで来て対応してくれた。


「はい、本日のご要件はなんでしょうか?」

「えっと、冒険者登録したいのと、この魔物を買い取って欲しいんです。」


そう言って俺は庁舎内に入っていった


「まあ!これは大物ですね。2体ともあなたが?」

「あ、いえ。このトカゲは蛇に噛まれて死んだんですけど、この蛇は俺が倒しました。」

「なるほど。買い取りでしたら、まずは登録したあとの方が手数料が少なくなるので、先に登録を済ませてしまいましょう。こちらです。」

「はい。お願いします」


こうして俺は受付台の方に歩いて行ったのだが、


「おい、待てよ。こんな坊主がデザートスネークを倒した、だと?信じられるか。しかもこいつの額の傷、多くの冒険者を、先輩を引退に追い込んだ『ポイズン』じゃねえか。それをこんなクソガキが…」


ドワーフとは思えないような巨体を持つスキンヘッドの男に難癖をつけられた


「確かにこの蛇がトカゲに噛み付いたらこのトカゲ速攻で死にましたけど…」

「その毒性、やはり『ポイズン』だな。だが俺は認めねぇからな!こいつの登録試験、俺が相手になって化けの皮を剥がしてやる!」

「ちょっとゴロッサさん!?困ります。あなたAランクのベテラン冒険者なんですよ?せっかくの逸材に怪我をおわせたらどうするんですか!?」

「どうもこうもしねぇよ。俺の攻撃で再起不能の怪我をおうんだったらその逸材とやらじゃねえってことだろ。」

「えっと…試験があるんですか…?」

「あ、はい。そうです。この街ではないのですが、近年スラムから多くの子供が冒険者になりに来て、その度に多くの死者行方不明者が出ていたものですから、一定程度以上の実力がないと登録できないように規定が変更されたんです。」

「な、なるほど…」

「では、ここに必要事項を書いてください。文字は書けますか?」

「書けます。」


名前:レイ・シュヴァルツハイン

年齢:14

戦闘スタイル:剣(二刀流)


「ありがとうございます。では、実技試験に移らせていただきます。」

「分かりました。よろしくお願いします。」

「えっと…大変申し上げにくいのですが、その試験官というのが、」

「俺だ。ゴロッサ、Aランク冒険者だ。」

「先程言いがかりをつけられて大変不快に感じられたのは重々承知の上ですが、如何せんデザートスネークを倒したとされるあなたの腕前を測るとなると彼くらいしか適任がおらず…」

「分かりました。ゴロッサさん、お手柔らかにお願いします。」

「ホントに手加減してくださいよ?まだ14歳なんですから。」

「ふん、わあってるよ」


〜〜〜


「おい、ゴロッサさんが新人の資格試験の相手をするらしいぜ。」

「うお、まじか!合格するかしないか賭けしてみねぇか?」

「望むところだ!受かるに銀貨1枚!」

「俺は受からないに銀貨1枚だな。」

ギャーギャー



「まあ、周りのことは気にせず打ち込んでこいや。」


さすがに真剣でやると危険なので俺は木刀に持ち替え、ゴロッサさんは木の棍棒を装備した。


「よろしくお願いします!!」


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