第4話 旅立ち
月日が経ち、15歳になる年の春
「レイ、お前そろそろウルカーヌに行ってもいいぞ。もう俺が教えることは何も無い。」
「え、本当に!?」
「ああ。だが、前にも言ったが、常に冷静に、慢心せず、向上心を持てよ。」
「うん。」
「よし。餞別だ。持ってけ。」
「うわわ!爺ちゃん刃物を投げないでよ」
「鞘が付いているから大丈夫だ。それより持って振ってみろ」
爺ちゃんが投げて寄こしたのは二振りの剣だった。
〜〜〜
「貴方が私たちの新たな使い手、ですか…」
「こんな小僧が俺らを扱い切れるかよ。ルドルフも何考えてんだ。」
何も無い空間。
そこに真っ白の袴姿の女性と黒いトレンチコートを着た男性が現れた。俺のことを話しているらしい。
「驚いた。まさかその年で精神世界に入ってこれるとは。」
「ええ、この人は意外と逸材かもしれないわね。」
「え、どういうこと?ていうかここは…」
「なるほど、無自覚、か。俄然興味が湧いてきた。」
「私たちの銘を授けましょう。ふふ、特別ですよ。」
〜〜〜
1つ目は真っ白な鞘に収められた刀で、『冬桜』という銘らしい。刀身から雪を発生させて…
2つ目は真っ黒な鞘に収められた刀で、『新月』という銘らしい。新月の夜に何も見えなくなるように…
さっきの場所がなんだったかは結局分からなかったけど、悪い気はしなかった。
「冬桜に新月、か。かっけぇ。」
「うむ。レイに渡して正解だったな。普通のやつにはこいつら自分の名前すら教えねぇんだ。教えてくれたってことは認めてくれたってことだよ。ほれ、旅のお供にしていけ。」
「うん!ありがとう!!」
刀の感覚を確認するなどして数日が経ち、漸くこの日が来た。
「行ってきまーす」
「おう、行ってこい。たまには帰ってこいよ〜。」
「はーい」
俺はカッキンロウ騎士団の入団試験を受けるために首都、ウルカーヌへ向かった。
今いるこのクギ山というのはカッキンロウ王国の北西部にある山で、鍛治神・ウルカヌスが住むと言われる山脈の一部だ。そして首都ウルカーヌは国の中心からやや南東部に位置する。寄り道せずに歩いていけばおよそ半年ほどの旅で、ウルカーヌに着く頃には15歳になっている計算だ。
ということで、俺は山を降り、1番近い街、ナナシに向かう。
「はあ、なんであんな所に村を作ったんだ!?いくらなんでも遠すぎ、過酷すぎ…あ、でももうその村もないんだった…爺ちゃんどうやって生活していくつもりなんだろ…?」
歩いて3時間ほど経つが、辺り一面荒野。
最初の方こそ地割れを見たり、小さな植物を見て興奮していたが、次第に飽き、今ではただひたすら暇という最悪の敵と戦いながら歩いている。
「ギョエエエエ」
「キシャァァァ」
「うお!なんだ!?」
突然の叫び声に驚いて声がした方向を見ると、デザートスネークという大蛇がロックリザードというオオトカゲに向かって飛びかかろうとしているところだった。
久しぶりに見た動物(正確には魔物だが…)だったので、少し興奮して、見ていくことにした。
体長はほぼ互角くらいだが、ロックリザードのほうが横に大きく、重そう…
対してデザートスネークは素早く動けそうで、口元に見える牙からは紫色の液体が垂れていた。おそらく毒だろう。
ここまで観察したところで、ロックリザードがしっぽを身を屈めて飛びかかろうとしていたデザートスネークに向けて横薙ぎに振るった。受け止めきれないと判断したのか、デザートスネークは更に身を屈めて、ロックリザードのしっぽと地面との間に長い胴体を滑り込ませた。
渾身の一撃を避けたデザートスネークは、その屈めた体をバネのように伸ばして高速でロックリザードの首に向けて跳んだ。
噛み付かれたロックリザードは必死で振り払おうと体を振り回した。予想外だったのが、デザートスネークが直ぐに離れたことだった。そして、ロックリザードは今の一連の大暴れで毒が体中に回ったのか、泡を吹いて倒れてしまった。。
「ふむ、あの蛇の毒には要注意だな。あんな大きなトカゲも倒せちゃうんだから。よし、気づかれていない今のうちに離れよう。」
パキッ
「あっ…なんだかよく見そうな光景だな…」
「キシャァァァ」
「やべっ、気づかれた、どうしよう…」
カタカタカタカタ
「この震えは、新月からか!そうか。お前なら。」
デザートスネークとの距離はもう遠くない。
「ステルス」
新月を抜くと同時に俺の姿は背景に同化し、デザートスネークから見えなくなった。
「シュルルルル」
デザートスネークは完全に俺の事を見失ったようで、首を傾げている。後ろに回り込んだところで、
カタカタカタカタ
今度は冬桜が主張してきた。
「そうだな。まだお前のことを実戦で使ったことなかったもんな。よし。凍てつけ、冬桜」
口上を述べると、冬桜は白く光り、風を纏い、上段から袈裟懸けを放つとその風がデザートスネークに向かっていった。
「キシャッ!?」
デザートスネークは何もわからないまま凍りついた。息絶えたことを確認し、ほっと一息つく。
完全に刀の能力に助けられた形だが、何とか勝てた。
一応マジックバッグと言われる大容量鞄だが、その中からソリを取り出した。凍りついたデザートスネークと毒で死んだロックリザードを乗せるためだ。爺ちゃんに変なやつに絡まれたくなければ、しばらくマジックバッグであることは内緒にするよう言われていたのだ。
ナナシに向かって再出発した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます