第3話 転生

どうやら俺は捨て子として第101世界:通称『イーゼン』で落とされたらしい。これはおそらくゼンたちの仕業だ。正直よく死ななかったと思う。そんな俺をルドルフというドワーフの男が拾い、レイという名前をつけ、育ててくれていたおかげで、今も生きている。ルドルフは鍛冶国家『カッキンロウ』にあるクギ山に一人で住んでいるおじいちゃんで、狩猟と鍛治で生計を立てている。


5歳くらいまでは特筆すべき大きな事件は起こらなかった。爺ちゃんはおよそ週に1回近くの村へ買い出しと素材や武具の販売をしに山を降りていた。


「なんだ?ルドルフ、子供ができてたのか?」

「バカ言ってんじゃねぇ、こいつぁ山で拾ったんだよ」

「随分と可愛い子じゃないかい!あんたとは似ても似つかないねえ」

「だから、俺の子じゃねぇっつってんだろ!いいから早くこいつらの査定してくれや」

「はいはい。まあ、ざっと見たところ〜〜〜」


3歳になる頃、俺はルドルフと一緒にその村まで降りて行った。あまり他人と関わらないルドルフが俺を連れていたことを面白おかしくいじる人が多かった。


それから約1年、おぼつかないながらも1人で歩けるようになると、ルドルフが1人で査定に行き、俺は村を散策するようになった。

「あら!レイちゃん、このイチゴ食べてって〜。」

「おー、レイか!この肉食ってその細い体をでっかくするんだぞ!」

「あなたね、この子は私らと同じドワーフじゃなくて、人間なんだよ。これくらいが標準なんじゃないのかい?」

「お、おう。そうか…?」

「おじちゃん、おばちゃん、ありがちょ」

「いいのよ〜。子は宝って言うからね!」


そんな楽しい日々は長くは続かなかった。

6歳の秋口、ちょうど農作物の収穫の時期だったと思う。そのいつも買い出しに行っている村を人間の盗賊が襲ったのだった。村にいた者は皆殺しにされたが、ルドルフはたまたま山に忘れ物を取りに行っていて襲われず、村の中を散策していた俺は人間だったからという理由で生き残った。その時のショックで閻魔だった頃の記憶が少し蘇り始めたのだと思う。と言っても、まだこことは別の世界がある、程度の認識で、身につけていた技も何も思い出せていない。


事件から数日後、カッキンロウ騎士団が助けに来てくれた。その時、盗賊の正体が隣国の神聖国家『ヒイブキ』の軍隊であったという調査報告を聞かされた。ヒイブキは人類至上主義を掲げているのはこの世界の常識である。


数日後

「爺ちゃん、俺カッキンロウ騎士団に入団したい」

「ダメだ。危険すぎる。助けてくれたから憧れるのは分かるがな、今のレイでは速攻で死んでしまう。それに、試験は15歳以上からしか受け付けていないぞ。」

「じゃあ、それまでの間鍛えてよ。」

「ふんっ、どうせすぐに音を上げるに決まってる。だが…いいだろう。今まで優しく大事に育ててきたが、どうしてもカッキンロウ騎士団に入団したいというなら、とことん厳しく、強く鍛え上げてやる。」

「爺ちゃんありがとう」

「じゃあまずは鍛治からだな。自分の剣くらい自分で打てないと舐められるぞ」

「えっ…」

「なんだ?文句あるのか?」

「いえ、教えてください!」


それから1年と数ヶ月、俺はひたすら剣、槍、棍棒、ありとあらゆる武器、更には甲冑や鎖帷子などの防具を作らされた。

最初は鍛冶師の領分じゃないと思っていたものの、作れるに越したことはないということで納得することにしていた。


ある程度鍛冶が様になってきたら、今度は戦闘訓練も並行して行うようになった。

そこで気づいたのだが、爺ちゃんめっちゃ強い。その歳でなんで斧、しかも自分の体より大きなもの、を振れるんだと心の中で戦慄を覚えた。最初は避けるのに必死だった。そりゃ当たったら死ぬか大怪我をするから。1回だけ攻撃を受けたことがあった。爺ちゃんは酷く慌てて何かをしていたが、俺はもう意識が朦朧としていたので分からなかった。でも次の日には何故か復活していた。そして、その日から錬金術の訓練も追加され、ポーション作りも日課になった。きっと爺ちゃんがポーションを作ってくれたのだ、とその時思った。戦闘訓練で爺ちゃんに反撃を入れられるくらいに目が慣れてくると、爺ちゃんはペースを上げてくる。これを続けること数年、遂に爺ちゃんから1本取れた。


「はぁはぁはぁはぁ」

「強くなったな、レイ。これくらい強ければ同年代の中でも強い方に分類されるだろうな。」

「ふぅ。同世代がどれほど強いか分からないけど、俺って強い方なのか。」

「うむ。だが、慢心はしてはならんぞ。あくまでも同世代の中での話だ。もちろん上には上がいるから、常に強さに貪欲になれよ。」

「うん!」

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