我が行く道は荒涼の

Γケイジ

第1話我が行く道は荒涼の

我が行く道は荒涼の、友は引きずる影ばかり。ここは過去と言う名の現代。喧騒なる現代。

私は一人か二人か。はたまた人か否か。証明は不可。夢模様を描いた蝶を掴むべく跳ねる人の愚かさよ。人は何時まで人か。

君よ、明日を知りたいか?教えてやろう。それは皆無だ。何も変わらない。何もかもが違った世界。

しかし、この瞳には同じに見える。本日、晴天なり。


余りに無意味な一日が目を覚ます。広がる夕闇が始まりを告げる。朝?そんなものはない。

あれは駄目だ。私には眩し過ぎる。それにとても喧しくて敵わない。

消えた星がもう一度姿を現した頃こそが我が朝よ、朝日に似た金星の光とネオンを浴びる。

飢えと渇きを覚えた私は体を起こし行く。いざ、コンビニに。コンビニとは便利なものだ。とても良い。私のような人に非ざる者でも生の充足を保つのに必要なものを交換してくれる。

最も、「銭」を持っていればの事だが。とは言っても幸いか、銭は余すほどに持ち合わせている。

否、このご時世「キャッシュカード」なる便利なカードが有る。それを使おうではないか。

一つ、コンビニの気に入らないところが有る。やはり眩しい。

もう少しあの白光を如何にかしてもらいたいところだ。そこで私は幾つかの握り飯と水を手に入れる。

そして家を目指して影を引きずる。早く帰らなけばならない。何故か?理由は簡単である。

狙われている。一体何者に?「邪悪」なるものにだ。

こういった話をすると少し嘘くさいが真実とは残酷だ。足早に、気づかれぬように。

私が明るい暗闇に一体化した頃に到着する。何てことない高層マンションだ。エレベーターは使えない。奴らが襲ってくる。逃れられない。階段で上がるしかない。本能的に覚えている我が家に向かう。

焦ってはいけない。奴らはその姿を嘲笑しているぞ?部屋に舞い戻り、光ったままの光源を消す。

これから儀式の時間だ。数少ない栄養補給の時間だ。しかし、テレビをつける。

リズムと共に歌詞が流れる。「笑って欲しい」

けしからん!笑って欲しいなら何か芸でもしないか!と怒りを覚え素早く電源を根本から断つ。

有意味な空虚な時間を過ごしている。突如、それは鳴り響く。電話機がわめき散らす。

1台や2台では無い。事務所に据え付けられた幾つものそれが鳴り響くようだ。

そのけたたましい音に私はゲロを吐く。それと同時に脳が焼き付き支配される。

邪なる者は私に隙を与えたりはしない。狂気に呑まれた私は声を大にして絶叫する。

言語化不能なこの不快感を吐露した。そして私は暫く死ぬ。

身体は脱力若しくは硬直し脳は一切の機能を停止した。

ぎょろぎょろと目の玉を動かし周りを見ても何も見えやしない。脳が処理を停止している。

僅かに残った理性がそれらを察する。人とは悲劇が好きだ。これもまた悲劇なり。

誰かが私を見て笑っているに違いない。誰かが私を見て哀れんでいるに違いない。鬱陶しいこの上ない。そもそも、人間は己を完全に制御下に置いているわけでは無い。脳が人間を支配しているのだ。

それなのに何処で勘違いをしたのか人は脳を制御していると勘違いしている。私は脳に支配されている。つまり、ここでいう「邪」とは脳なのだ。脳の物質的環境がそうさせている。そうに違いない。

私は冷静を取り戻す。暦を見ると明日は病院の日だ。私は冷静を取り戻す。

そう、私の脳は病に侵されていたのだ。約一か月という悠久の時間に終止符を打つ。

そしてまた始まる。邪はすぐそこまで迫っている。

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