第4話「柏木翔馬」

 星澄駅前のバーガーショップは、ビルの谷間に立地する二階建ての建物だ。

 一階が注文カウンターと厨房で、二階はすべて客席のフロアになっている。

 柏木は、店舗前の駐輪スペースに自転車を停め、戻ってくると「お待たせしてすみません」と言って、軽く頭を下げた。先程から察していたが、年長者を立てるタイプの少年のようだった。


 もっとも注文カウンターの前に立つと、柏木は私のおごりに少しも遠慮しなかった。

 ダブルチーズバーガー二個とチキンナゲットの六ピース入りボックス、さらにフライドポテトとコーラはいずれもLサイズを注文した。ただ考えてみると、体格の良い男子高校生で、明らかにスポーツマンと見て取れる柏木にとって、これはごく日常的な「軽食」なのかもしれない。

 私はそれほどカロリー消費の多い生活をしているわけではないので、テリヤキチキンバーガーを一個とフライドポテトのMサイズ、それにコーヒーを注文しただけだった。



 二人で店の二階へ上がり、テーブルをはさんで着席する。隅の目立たない喫煙席だ。

 柏木は、ご馳走になりますと快活に言って、チーズバーガーの包装を開いた。


「夕方からは練習があるので、今のうちに腹ごしらえさせてもらえるのは、正直凄くありがたいです」


「練習というと、サッカーの? それが事前に君の言っていた外せない用事なのか」


 私はコーヒーの使い捨て容器に口を付けながら、サッカーボールを見てたずねた。

 柏木は、深くうなずき、はにかむような表情を浮かべる。


「はい。地元のサッカークラブで、J2のアンヘレス星澄ってあるでしょう。実はオレ、あそこの下部組織に所属しているんです。トップチームの試合に出たことはないんですけどね」


 控え目な言い方だったが、柏木の口振りからは密かな自信が伝わってきた。

 高校生年代でクラブユースに所属しているとなれば、サッカー選手としては相当な実力者だと言える。ああいった組織には、選抜試験で合格したひと握りの人間しか、所属を許されていないはずだった。



「今日ここへ君に来てもらった理由は、もう田中聖亜羅から聞いているな」


「はい。あいつは、安千谷さんが山村の話を聞きたがっている、って言ってました。元々は鏡峯が安千谷さんに仕事を頼んではじまったことだとか何とか……」


 依頼人が誰なのかが、またしても聞き取り調査の対象に露見しているらしい。

 田中聖亜羅は、探偵業の作法を知らないのだろう。どうしようもなかった。


 根本的には無論、私が他者の仲介を経て接触している点に問題がある。

 しかし私は本職の探偵ではなく、ボランティアの大学生だ。目的の達成と守秘義務を天秤てんびんに掛け、いずれかの面で妥協せねばならない部分があった。素人調査には限界がある。


 私は仕方なく、鏡峯が依頼人である事実を認め、率直に話を進めることにした。


「鏡峯はここ半年余り、山村夕子と連絡が取れなくなったことを、非常に気に病んでいる。そこで消息だけでもつかめないものかと、私の手を借りようとしてきた。どうか君の知っていることを聞かせてもらいたい」


「なるほど、そういうことでしたか」


 柏木は納得顔でうなずき、情報提供に進んで応じる姿勢を示した。


 そこで私はまず、田中聖亜羅に接した際と同様の質問を投げ掛けた。

 つまり、田中から伝え聞いた情報で、柏木に関係する点を、ここでも本人の口から聞き出したわけだ。双方の話に矛盾するような箇所は見付からず、少なくとも表層的に怪しむべきところはなさそうだった。



 次いでいよいよ、柏木から聞き取りたかった話に踏み込む。


「君は鏡峯や田中と違って、山村夕子と同じ学校の生徒だったはずだ」


「だから山村の身辺に関して、オレが田中たちの知らない事情を知っているかもしれないと?」


 あべこべに問い掛けられて、私は「そういうことだ」と肯定した。

 柏木は、ダブルチーズバーガーを二口三口とかじり、ややうつむく。

 口の中の食べ物を嚥下えんげしてから、戸惑いがちに口を開いた。


「さあ、オレの知っていることがどの程度役に立つか。ここ半年ぐらい山村と会っていないのは、オレも鏡峯や田中と大差ないような気がするので……」


「通信制高校というのは、生徒同士が学校で顔を合わせる機会もないのか」


「それは状況にります。基本的には課題提出以外にも、単位取得にはいくらかスクーリングが必要になるので」


「スクーリング?」


「面接指導ってやつで、学校に登校して先生の授業を直接受けることです。全日制高校の授業とおおむね同じようなものだと思ってもらって、差し支えないはずです」


 こちらの疑問について、柏木は簡単に説明してくれる。


「でも通信制高校にも色々あって。うちの学校の場合は現在、大抵の科目がオンライン受講でもスクーリングの単位が認められるシステムになっています」


「すると山村夕子は半年前から、授業もオンラインで受けていて、学校には来ていないのか」


「はい。去年の秋口ぐらいまでは、むしろ普通にスクーリングで登校していたんですがね。ある時期からは、めっきり学校で姿を見掛けなくなりました」


 私は、なるほど、と言って相槌あいづちを打ってみせた。

 鏡峯は「試しに通信制高校まで様子を見に行ったことがある」と話していたが、これでは山村と面会できないのも当然だった。



「念のためにくが、君も山村夕子の住所はわからないんだな?」


「はい。当然それがわかれば、こっちから会いに行くこともできるんですけど」


「彼女がスクーリングで登校しなくなったことに関して、君はどんな感想を持っている?」


「あの子とは友達ですし、もちろん心配していますよ。だから安千谷さんが山村のことを調べていると聞いたとき、是非協力したいって思ったんです。オレも前々から、どうも気掛かりだったので」


「他の生徒や教師の反応はどうだ。山村夕子が登校しなくなった事実を、気にしていないのか」


「うーん。その辺りについては、ちょっと微妙な部分があるというか……」


 柏木は、そこで再度もうひと口、チーズバーガーを齧った。

 それから幾分間を挟み、神妙な面持ちになって続ける。


「うちの学校って、元々少し特殊な事情を抱えて進学してくる生徒が多いんですね。全体の七割か八割――いやもしかしたら、それ以上かな? もちろん背景はそれぞれ全然違うんですけど。

 例えば、中学時代にいじめを受けたことが原因で不登校だった気の毒なやつとか、逆にまるで同情の余地もない不祥事を起こして進学先が他になかったやつとか。身体や心に病気があって、毎朝決まった時間にベッドから起きられない、満員電車に乗ると嘔吐おうとしてしまうから普通に通学ができない……そういう、本当はやりたいことがあって、本人も努力したいのに頑張れなくて、辛い思いをしているやつもいます。

 あと本人に問題があるわけじゃないんですけど、家庭環境に恵まれていないやつとかも。凄く色々な生徒がいます」


 そこでいったん言葉を切り、柏木はコーラの容器を手に取った。

 炭酸飲料で喉をうるおわしてから、彼なりの見解を改めて述べる。


「そのせいかうちの高校へ進学してきた生徒の中には、ある日を境に登校してこなくなるって、そんなに珍しくないっていうのが、根本にあると思います。だから山村みたいな女子のことも、学校関係者は例外的に考える場合の方が少ないというか。いや当然、先生方はちゃんと出席状況を把握していて、問題があれば個別に必要なケアを行っているはずですが」



 私は、コーヒーの容器をテーブルの上に置いて、腕組みした。

 柏木の話を頭の中で整理しつつ、また次の質問に移る。


「このままオンライン授業だけを受け続けるだけで、山村夕子は高卒資格を取得できるのか?」


「どうでしょうね。課題提出や面接指導の他にも、通信制高校を卒業するには三年間で特別活動の単位が三〇必要になります」


「特別活動というのは?」


ホームルームや学校行事、校外活動、あとはボランティアとかに参加することですね」


「そういった活動に関しては、オンライン参加だと単位が認められないのか」


「認められることと、そうじゃないことがあると思います。でも一単位五〇分で済みますから、去年までに取得したぶんを累計すれば、案外問題ないのかもしれません……」


 柏木は、丁寧な回答を続けていたが、不意に考え込む素振りを見せた。

 眉間に細いしわきざみ、ほんの数秒足らずだが、口をつぐんで沈思する。

 そのあいだ私は身動みじろぎせず、彼の次なる言葉を待っていた。


「いや、ちょっと待ってください。そう言えば今思い出しましたが、山村はまだ学校に来ていた頃に『わたしはあまり単位のことで心配していない』と言っていた覚えがあります」


「それはどういうことだ。単位を取っても取れなくても気にしない、という意味か」


「わかりません、ちょっとした雑談の中で聞いた話だったと思います。今説明した通り、うちの学校は生徒が登校したりしなかったり、というのがわりと普通なんですが――あるとき、たしか単位やスクーリングの出席日数に関する話題になって。その折に山村がそう言っていたんです」


 私は、内ポケットから煙草たばことライターを取り出した。

 喫煙していいかと柏木に問うと、遠慮なくどうぞと返事があった。

 私は灰皿を手元に手繰たぐり寄せてから、煙草の先に火を点けた。


「……『単位のことで心配していない』か。私も一度言ってみたい台詞だ」


 脳裏に一瞬、大学で卒業までに必要な科目の取得単位数を思い浮かべて、憂鬱ゆううつになった。

 しかし思考の中からそれを追い出し、過去に山村夕子が発したという言葉を反芻はんすうする。


「日頃から取得単位を計算していて、計画に抜かりがないから心配していなかったのだろうか。あるいは何か、単位を確保する当てがあったのか」


「オレにも見当が付きません。ひょっとしたら、オレの記憶違いだったのかも……」


 柏木は、ダブルチーズバーガーをひとつ片付けると、包装の紙を握りつぶして丸めた。

 続いてチキンナゲットの箱を開け、トマトソースにディップしてから口の中へ放り込む。



 私は、さらに別の質問へ移ることにした。


「少しだけオンライン授業についても教えてくれ。やはりビデオ通話アプリのようなものを利用しているのか」


「そうですね。うちの学校の生徒はみんな、入学時にタブレットの購入が義務化されています。オンライン授業ではそれを使って学習します」


「ビデオ通話中には、参加者の姿が画面上に表示されると思うが。山村夕子はオンライン授業に参加しているとき、どういった様子だった?」


「ああ、それはちょっと答えようがありませんね。山村は大抵、ビデオオフ設定で参加していたので。だからオンライン授業でも、やはりここ半年余りはあの子の顔を見ていません」


「何だって? それを教師も許可しているのか」


「ええ、まあ……。うちの高校でオンライン授業が本格的に取り入れられたのはここ数年ですが、正直オレの目から見ても細かい制度設計はまだ問題が多いんですよね」


 柏木は、チキンナゲットをまみながら、口の端に苦笑いを浮かべた。


「これはオンライン学習全般の傾向だそうなのですが、通信制高校に限らず、ビデオオン設定で顔出ししたまま授業を受ける人は全体でも数パーセントしかいない、という話もあるそうです。受講生側の都合も様々ですし、なかなか指導者も強要し難い。授業中には、オフライン以上に他の参加者の視線を意識してしまうのが心理的に負担だ、という意見も聞きます」


「だが互いの姿が見えないと、授業中に生徒はサボり放題になるのではないか」


「そこは考え方次第で、元々見えていてもいなくても、授業は真面目に受けるやつは受けるし、サボるやつはサボるということかもしれません」


「……もし通信制高校以外でも今後、オンライン授業が教育機関で普及していくとしたら、主体的に学習する意欲があるか否かで教育格差はますます広がるのかもしれないな」


「まあそうですね。ただいずれにしろ、山村みたいなギャルファッションの女子は、ビデオオフ設定で出席できるのがありがたいみたいです。うちの学校はあまり服装にうるさくないですが、それでも現実世界で登校すれば生活指導の担当教師はいるので、派手な格好をしていると小言を言われがちですから」



 私は、煙草を口にくわえ、ゆっくりとう。

 燃え尽きた先端を灰皿に落とし、紫煙が立ち昇る様子を見詰めた。

 そうすることで間を埋めてから、やり取りを続けた。


「君は山村夕子がオンライン授業で、ちゃんと本人が出席していると思うか」


「えっ? それはつまり、出席しているのが別人かもしれない、ということですか」


「あくまでそういう可能性も、ビデオオフ設定なら考えられなくはないという話だ」


「いやあ、それはどうでしょうねぇ……。山村は授業中に顔出ししていませんが、マイクまではミュートになっていないと思いましたよ。何しろオンラインでも授業の開始時には、普通に生徒の出席を取りますから。教師の呼び掛けに対して、あの子がしっかり『はい』と返事していたのを聞いています。それ以外に何かしゃべっていたことがあったかは、思い出せませんが」


「出席を取るときの返事は、本当に山村夕子本人の声だったんだな?」


「はい。以前はオレ、山村とよく一緒にカラオケへ行く機会があったので、あの子の声だったらわかります。たぶん聞き間違えはないです」


 私は、また煙草をひと口喫って、煙を吐き出す。


「……君は、山村夕子がこの半年余りの期間、何をしていると思う?」


 次は柏木の方が、何秒間か黙り込んだ。

 二個目のダブルチーズバーガーに噛り付き、それをコーラで胃の中へ流し込んでいる。

 またしても思案顔になって、視線は店の中を当て所もなく彷徨さまよっていた。


「当てずっぽうで言いますけど、アルバイトしている、とかですかね。何か高価なものが欲しくなって、まとまった金額を稼ぐ必要ができたのかもしれない。それ以上具体的なことは、想像が付きませんが……」


 私はこのとき、柏木翔馬の言葉に幾分かの嘘がふくまれている気がした。


 ひょっとしたら山村夕子の消息について、柏木は好ましからざる想像力を働かせてしまったのではないだろうか。彼女の身に生死に関わる危険があったにしろ、そうではなかったにしろ。

 それで思ったことをそのまま答えるのは、不謹慎だと感じ、取りつくろった言葉を発しているのかもしれない。


 とはいえ私は、疑惑をわざわざ指摘し、本音を引きずり出そうとは思わなかった。

 この少年のつつしみを、土足で踏みにじるほどに無神経ではないつもりだったからだ。



「ところで君は、山村夕子の電話番号を知っているか」


 私は、また別の話題を持ち出す。


「ただしメッセージアプリのIDや通話機能があるSNSアカウントなどではなく、普通の電話番号だ。固定電話よりもスマートフォンのそれが望ましい」


 同じ言葉で鏡峯めぐみに問いただした際には、望ましい回答が得られなかった。

 実は田中聖亜羅にも一応訊いてみたのだが、やはり「知るわけない」という返事だった。

 だが柏木翔馬は、他の二人と異なる反応を示した。まず軽く驚いた様子で、わずかに目をき、それから居心地悪そうに少し身体を揺すった。


「……もしオレが知っていたら、安千谷さんはどうするつもりなんですか」


「できれば山村夕子本人には確認を取らず、内密に教えてもらいたい」


「確認を取るも何も、あの子とは連絡が取れませんが。……ああ、もしかしてこの件については、メッセージを送信して山村が持つスマホの待ち受けに通知を載せたり、SNSでコメントを投稿したりとか、そういうこともしないようにって意味ですか」


「その通りだ。山村が一切リアクションしないとしても、君から私に電話番号を教えたことは、彼女に伝わるとうまくない。いずれにしろ君が私の知りたいことを知っていて、こちらの要望に応じてくれるとすればの話だが」


 私は自分の思惑を述べながら、柏木が山村の電話番号を知っていると確信していた。言い回しや態度からして、明らかに知らない人間のそれではない。


 柏木は、いま少し逡巡しゅんじゅんするような素振りを見せながら、こちらへ問い掛けてきた。


「安千谷さんに山村の電話番号を教えれば、またあいつは学校へ来るようになるんでしょうか」


「わからない。私が確実に約束できることは、電話番号を君から教わったと山村に絶対言わないことぐらいだ。だが教えてくれれば、ほんの少し山村の消息を掴む時期が早まるかもしれない。いやそれとても、私が依頼を達成できる見込みがあればの話になってしまうが」


 おそらく私の返答は、柏木の期待にうには、かなり物足りないものだったはずだ。

 もっとも不都合な事実を曖昧あいまい誤魔化ごまかすのは、この場で得策とは思えなかった。

 私は最初から、あまり信用ならない偽物の探偵なのだ。今必要なのは、容易に得られるはずのない信用を得るため、耳障みみざわりの良い言葉を並べることではない。

 私がすべきなのは、胡乱うろんくわだてを胡乱だと伝え、それに協力する同意を得ることだった。


 そうして柏木は結局、こちらの要望に応じた。


「山村の電話番号は、昔みんなで遊びに出掛けたとき、念のためメッセージアプリ以外にも連絡する手段を確保しておいた方がいいからって、本人から教えてもらったんです。オレって、鏡峯や田中みたいにSNSはやっていないので。クラブユースの方針で、勝手にアカウント作ったりできないんですよね。まあ今じゃ知っていてもメッセージアプリと同じで、山村は連絡に応じてくれなくなっちゃったんですが……」


 妙に言い訳じみた言葉を前置きしてから、柏木はスマートフォンを取り出した。

 画面を何度かタップすると、テーブルの上に置いて私の方へ差し出してくる。

 そこには電話帳が表示され、「山村夕子」という名前の下に携帯電話の番号が載っていた。

 私も自分のスマートフォンを手に持って、スリープモードを解除する。

 早速そのナンバーを登録した。




 柏木翔馬とは、その後もしばらく色々な話をした。

 彼以外で山村夕子と接点がある通信制高校の生徒のことも、二名紹介してもらった。

 柏木は、即座にメッセージで連絡を取り、明日まとめて面会する段取りを整えてくれた。


 それから、ほどなく約束の午後三時が来た。

 私と柏木はバーガーショップを出て、別れることになった。

 柏木は、店の前に停めていた自転車にまたがり、ご馳走様でしたと飲み食いの礼を伝えてきた。

 このあとは事前の話通りクラブユースの練習場へ直行して、トレーニングに参加するという。


「サッカーの練習は、毎日あるのか」


「クラブ下部組織のやつだけなら、試合以外は週に四日です。オレはその他にも個人トレーナーと契約していて、空いた日に一本二時間のトレーニングをお願いしていますが」


 素朴な疑問を投げ掛けると、柏木は快活に答えた。


「個人トレーナーと契約していると、そのぶんの費用も掛かるだろう。大変そうだな」


「ええまあ、そうですね。ですからクラブユースの練習や通信制高校の課題がないときは、隙間時間に極力アルバイトして、ちょっとでも金をかせぐようにしていますよ。両親を頼るにも限度がありますし……」



 柏木翔馬は、ひたすら礼儀正しく、颯爽さっそうとした印象の少年だった。

 さらに二、三の世間話を交わしたあと、頭を下げて自転車で走り去った。

 私はそれを見送ってから、駅前の街路を目抜き通りの方へ歩き出した。


 今日はこれから、もう一箇所立ち寄らねばならない場所があった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る