第7話 初めて王都の外へ出る

「わあ、きれいなだあ」


 空から王都を見た。

 今日、婚約破棄をかませされた、最悪な王宮だ……

 空から見ると、真っ白なきれいな壁が、月明かりに照らされて、鋭く輝いていた。

 今まで、王宮の社交界で必死に「婚活」して、イヤな目に何度も遭ったけど、あんなにきれいな建物だったんだ。


「見せたかったものってこれ?」


「ううん。もっときれいなものがあるんです」


 夜風にジャンの銀髪が揺れた。

 気がつくと、二人は手を握っていた。

 あったかいな。


 王都を少し離れて、森を越えていく。

 ローザは王都を出たことはなかった。

 前世では社畜OLとして、全国津々浦々に出張したり、おひとり様で海外旅行にも頻繁に行ったが、この世界では王都に引きこもっていた。

 王都の外は、モンスターが生息していて危ないから、この世界の貴族たちは王都から出ないのだ。

 貴族に生まれたら、王都から一生、一歩も出ないのが当たり前。

 

 あたしは旅行好きだったから、外に出てみたかったんだけど、いつもマリアに止められてたっけなあ……


「王都の外って、こんな感じなんだね……」


 黒い森がずーと続いている。

 まるでジブ○のトト○の森みたいだ。


「ええ、田舎から王都へ行くには、森を抜けていかないと行けないんです」


「王都まで来るの、たいへんだったんだ」


「途中でスライムに追いかけられたり、火を吐くドラゴンから隠れたり、怖いけど楽しかったです」


「えーそれって楽しくないじゃん?」


「ずっと田舎の村から出たことなかったから、ぜんぶ見たことくて、なんか楽しくなちゃったんです」


 目をキラキラさせながら、これまでの冒険について語るジャン。

 さっきは耳を「甘噛み」なんてするから、変にませた子だと思ってたけど、年相応な、子どもらしいところもあるんだ。

 無邪気なジャンの笑顔を見て、ローザも子どもっぽく笑ってしまう。

 あー楽しいなあ。

 こんな開放感、何年ぶりだろう?


「あ、あれですあれです!あれを見せたかったんです!」


 


 

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