第6話 異世界のきれいな夜空

「わあぁ!」


 ジャンはローザを引っ張って、魔法のじゅうたんに乗せた。


「しっかりぼくにつかまってください」


「うん!」


 ローザはジャンにぎゅっと抱きついた。


「行きますよ!」

 

 ふわあっと、魔法のじゅうたんは空高く浮かび上がった。

 耳に空気がふぅーと入ってくる。

 背中がぞわっぞわっとして、胸が少し気持ち悪くなる。

 けっこう怖いじゃん!

 落ちたらどうしよう……

 

「大丈夫です。怖くないですよ。目を開けてください」

 

 あたしは高いところが苦手だ。

 前世でも、ジェットコースターとか嫌いだったし。

 ネズミの国のタワー・オブ・テ○ーとか無理だったし。

 

 目を固く閉じる。

 前世でも異世界でも、いつも目を閉じてばっかだな……


「ひゃあ!」


 耳に柔らかくてあったかい「何か」が触れた。


「なになになに??」


「やっと目を開けてくれましたね。ローザ様♥」


 ローザの横顔に、ジャンの吐息がかかった。

 ……これて、まさか??

 くちびる??


「って、なにしてんの!!」


 ローザはおもいっきり突き飛ばしそうとした。


「あわあわあわ!落ちちゃいますよ!」


 ジャンはなんとかローザの反撃をかわしたが、よろけてしまって、魔法のじゅうたんから落ちそうになった。


「あんたねえ、いきなりレディの耳を……噛むなんて!いくら子どもでもダメ!」


 なんなの……あの「甘噛み」は!

 どこでそんなの覚えたの、この子は??


「ごめんなさい。でもでも、そうでもしないと、ローザ様は目を開けてくれないから……ふふふ」


「だからって……こら!笑うんじゃありません!」


「ローザ様って、耳が弱いんですね」


「大人をからかうな!」


 ジャンのお尻をボンボン叩いた。


「ごめんなさい、ごめんなさい!もうしませんから!」


「まったく、もう……」


 ローザもついに笑ってしまう。


「ほら、周りを見てください」


 ローザの目の前に、満天の星空が広がっていた。


 わあ、きれい。

 こんなに近くで星を見たのは初めてかも……。


「ローザ様に見せたいものがあるんです」


 



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