第3話 ショタにドレスを着せる

 ジャンは風呂に入って、着替えた。

 ……女の子の服に。


 「お屋敷に男の子の服がありませんでしたから……」


 マリアは苦笑いした。

 ローザが子どもの頃に着ていたドレスだ。

 黄色のフリルのついた、すごく、すっごく女の子しているドレス。

 

 ジャンは耳まで真っ赤になって恥ずかしがっていた。

 ドレスを着るのは初めてみたい……

 (って、当たり前か。)

 股がスースーする感触が新鮮すぎて、足をもぞもぞさせている。

 

 「ローザ様、あんまり見ないでください。恥ずかしいです……」

 

 モジモジしてる! 

 ちょっとかわいいじゃん。


 「ジャン君がかわいくて……つい見ちゃった」


 「あ、ありがとうございます……?」


 「お腹空いている?」


 「平気です」


  ぐー!とジャンのお腹が大きく鳴った。


 「あら、お腹空いてるんじゃない。マリア、何か食べ物を用意してちょうだい」


 「ちょっと、ローザ様……。あんまり可愛がると、お別れする時がつらいですよ」


  マリアが耳打ちする。


 「いいの、いいの。しばらくはいてもらうつもりだから」


 「いけません」


 「早く、食べ物をお願い」


 「はあ……」


  ローザが早く行けとマリアの背中を押した。

 

 「お食事まで、本当に何もかもありがとうございます」


  ペッコと頭を下げるジャン。


 「ううん。しばらくはここにいていいからね」


 「そんな、ご迷惑になりますから……」


 「あたしがいてほしいの!遠慮しないでいなさい」


  ジャンがうるうると涙ぐんだ。


 「ここにいるのがイヤ?」


 「違うんです。ぼく、こんなに人に優しくされたことなくて……」

  

  ローザはジャンをぎゅっと抱きしめた。


  ああ……この子も、これまで辛いことがたくさんあったんだな。


  あたしにとって、今日は異世界人生の中で最悪だった。

  最悪な日に、出会ったあたしたち。


  この子を抱きしめていると、なんだか安心できる。 

  ずっといてほしいな……。

  

  

  

 

 


 

 

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