第3章【友】
第1話【プロローグ】
「グスンッ…兄二……兄二ッ!
兄二…どこ?
兄ニッ!!!」
「お待たせ!待たせたな!!!」
「兄ニッ!!!」
「だから一人で勝手に行くなって言っただろ?泣くなよっ
ほら、帰るぞ!」
「すごく…すごく寂しかった…」
「じゃあ、寂しくなったらこうやって口づさめ!
そうしたら寂しさなんか、すぐどっか行っちゃうからな!」
「そっか…うんっ!そうだよね。
わたし、兄二が歌うその歌大好きっ!
がんばって覚えて、お歌うまくなるねっ!」
「ああ、頑張れよっ!『音奈』っ。」
「見ろよ、音奈!
ジャジャーンッ!!
録音機能付き腕時計ぃ~!
好きな音楽を入れられるだけじゃなくてなんとっ…自分の声も録音できてしまうのだっ!!!」
「ふわぁああ~カッコイイ!
買ってもらったの?
兄二っ!?」
「バッカ!
自分で買ったんだよっ!
ほれ、腕出せっ、腕っ!」
「ふえ?」
「誕生日プレゼントだよっ!
良いメロディーや歌詞が浮かんだら残しておけるように!」
「ふえええ~!
でもこんな高そうなものもらえないよ~!」
「だなっ!高かった!
お小遣い貯めまくった!
だから大事に使ってくれよ~!」
「兄二ッ………いいの?」
「かわゆい妹が喜んでくれるなら、俺は大本望だっ!」
「ふわぁ~、ありがとう兄二ッ!大好きっ!!!」
「うっふ!
これだけで生きてきた甲斐があったってもんだ!
でもな、この腕時計はそれだけじゃないのだ!
なんとこの時計、隠されたもう一つの機能があるのだっ!」
「隠された機能?」
「それはな…………」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
夢から目が覚める。
いつもと同じ……
もはや数えることすら面倒なほどに見てきた夢で涙しながら目を覚ます。
これが日課だった。
簡素な木製ベッドの上で起き上がると、ベッドがミシミシと音を鳴らし軋む。
昔はこんなベッドでも、二人横に並んで寝れていたのにな…と思い返しながら扉の開き、リビングへと向かう。
テレビをつけ、机に地図を広げ、コーヒーを飲みながら新聞を読み始め、
この一年欠かすことないいつものルーティンをこなす。
この区画はハズレだった……
最近起きている事件の場所を照らし合わせ、次に向かう場所を選出する。
そして新聞を次のページへ進めた瞬間、持っていたカップを床に落とす。
両手で新聞を広げ直し、改めてその箇所の文を読み直す。
沸々と、何かが燃え上がるのをその身で感じた。
「ミライ…ミライっ!!!」
バンッ!と大きな音を立て扉を開ける。
いつもいる研究施設に駆け込んだ。
「騒々しいなぁ……一体なんだ?」
「はぁ…はぁ…こ、これを見てくれ!」
差し出した新聞を受け取りミライと側にいたクローが目をやる
「行方不明者…解放……?
……対象欄……歌方音奈………
奏也…これは……」
隣でその新聞を覗き込む、俺の顔へ視線を向ける
「…俺の………妹だっ!!!」
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