第5話【エピローグ】

「ミクちゃん?大丈夫っ?」




そんな泣き出しそうな声に反応し、目を覚ます。

周りには希と担任の教師、あと数人のクラスメイトが心配そうにこちらを見ていた。

起き上がろうとした時、先程起きた出来事を思い出し慌てて自身の身体へ目をやる。

ところが、折れていた骨は綺麗に治っており、両手足共になんの支障もなく動く状態にあった。

自らの腕に視線を移す。

不思議そうに、手を何度か握り締め、足を動かして確かめる。




「ミクは一体…どうしてたのですか?」


「ここで倒れているのを私が見つけて、すぐに先生達を呼んだんだよ。

 ごめんね、私が無理を言ったばっかりに…」




夢でも見ていたのかと、頬を抓りつつ、

そこにいないある人物の所在を問う。




「先生…案内してくれていた、北威先生は?」


「ん?ああ、君達が手洗い場に向かった直後から、姿が見えなくてね…

 今みんなで探しているところなんだ…」




返ってきた予想通りの返答を聞き、静かに俯く。

樹々が揺れ、光が差し込む

その陽射しを受け、一度強く瞳を閉じ、改めて瞳を開くとそっと空へと視線を向ける。


夢ではなかった…


確信と共に浮かぶ一つの謎。


誰が助けてくれたのか…




ミクは、しばらく呆然と考えていたのだと思う。


そんな少女の様子を、周囲は不思議そうに見守る中、ただ一人だけは複雑な表情でその少女を見ていた。











その先彼方より、その様子を伺う者が二人




「しかし、ミライ様にしては強引でしたよ。

 奏也君が勘繰ってきてましたよ。

 私の責任ゆえ、現地へは私が向かいましたのに…

 誤魔化すのに苦労しました…」


「悪かったなっ、一刻を争っていたからな…

 だが、ここまで露骨にミクを狙って来たということは、

 近々大きな動きがあるかもしれない…」




続けて「そして…」とミライは続ける




「これで一つ、大きな疑念が生まれたなっ…」


「疑念……ですか?」


「今回のミクの動きは明らかにイレギュラーだった。

 本当だったら、お前の警護を掻い潜り、ミクを襲う事なんてできなかったはずなんだ。

 そもそも単独行動を取らなかった場合、校外学習で相当数の人数がいた学生全員を襲ったのだろうか?

 龍王管轄下にあるアステラ学園の生徒を表立って襲えば、報復は免れないはず…デメリットが大きすぎる。

 そう考えると、ミクの単独行動を視野に入れた計画だったんじゃないか!と思ってならない。」


「さ…さすがに考え過ぎでは?

 午前の段階でも私を見つけ、単独行動を起こしている訳ですし…」


「だといいがな…

 とりあえず面倒だが、気を引き締めて取り掛かっていこう」


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