第23話 ご対面
北の国境まで馬を飛ばす。もちろん乗馬経験のない鈴子はフィンノの馬に一緒に乗っている。馬の背は揺れる。落ちないよう、必死で捕まっていた。
「ここらで馬を下りよう!」
先程現状を報告に来た近衛隊長、リンドルが馬を止め、一団の動きを制した。
出向いたのはガイアール城近衛、リンドルの隊計六名と、鈴子、ゼン、フィンノ。
林の中を歩きながら、鈴子が口を開く。
「それにしても、ユーリル国はどういうつもりなのかしらねぇ。大体、ミリールへの宣戦布告だって、具体的にどうするかは書いてなかったのよね?」
鈴子がフィンノに訊ねた。
「まぁ、今回の和平に対する不満と決裂、亜種と和平を選ぶと言うのであれば、軍事を用いることになる、のような文言でしたが」
曖昧といえば、曖昧な内容ではある。
「例えば、よ、フィンノさん。あなたがユーリルの国王だとして、どうしても戦がしたかったら、どういう手を使うかしら?」
急に難題だ。
「はぁ……そうですな。私なら、まずはあなた様を殺します」
真剣な顔で、フィンノ。
鈴子は大きく頷いた。
「私もそう思うのよ。大預言者である私がいなくなれば、あるいは私の存在を否定出来れば、亜種との戦いの話を実現させることは可能な気がするもの。余所者は邪魔よね」
物騒な話である。
「ってことは、今からご対面する方々は殺し屋の精鋭部隊ってことなのかしら?」
頬に手を当て、鈴子。
「いや、もしそうであれば刺客は軍の格好などしませんし、旅の者を装ってとっくに我が国に潜入していると思われますが?」
先頭を歩いているリンドルが止まれの合図を送った。一団が、歩みを止める。木々に身を寄せ、辺りを探る。林の向こう、数人の人影が見える。ガイアール領を見張っているかのような動きだが……。
「ねぇ、ゼンちゃん。彼らの思考、読めるかしら?」
鈴子がゼンにお願いしてみる。
「ちょっと遠いが、やってみるか」
ゼンが目を閉じ、遠くに見える兵士らしき人物に集中する。そして目をぱちくりさせ、鈴子を見た。
「おいスズ、あいつら、スズに会いに来たみたいだぞ?」
「私に?」
「ここで待てばスズが来るって思ってるみたいだな」
ゼンの言葉に、鈴子は閃いたのだ。
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