第24話 本物の予言者

 ゼンが言った『会いに来た』の意味が、フィンノ達にはわからなかった。


「遠いからよくわかんねぇな。けど、殺意みたいなヤバい感じはないぞ」

 一体どういうことなのか。

 単に鈴子に会いたいというのなら普通に街道を通ってミリールへ入り、面会を求めればいいだけのこと。刺客でもなく、正当な面会もしない……ということは、


「リンドルさん」

 鈴子が隊長に声を掛ける。

「彼らを発見したのは、この辺りを巡回してた兵だって言ってたわよね?」

「はい」


 ガイアールは農業国だ。平和であるがゆえに、兵たちの仕事も、そう、多くはない。その中で、国境警備と称した、害獣駆除のような仕事があるのだそう。その仕事中だった兵が、たまたま発見した。城まで報告しに一刻半、報告を受けて一団が城からここに来るまで一刻半以上。ということは、約半日、彼らはこの辺りをうろついているということ。

 何のために?


「もしかして…本当に待ってるのかしら?」

 鈴子が首を傾げる。

「なにを?」

 ゼンが訊ねる。

「私たちを、よ」

 ゼンの腕をポンと叩き、歩き始める鈴子。


「ちょ、スズ?」

「鈴子殿っ」


 ゼンとフィンノが慌てて後を追う。止める間もなくずんずん歩いていく鈴子。リンドル以下隊の者は皆、事の成り行きを緊張しながら見守っていた。

 ずんずん歩いてくる鈴子に、ユーリルの兵士が気付く。何やら慌てたように数人が言葉を交わし、鈴子の方へと集まってくる。


「こんにちは、いいお天気ね」

 鈴子は片手を上げ、ご近所さんに会ったかのように挨拶をした。すると、ユーリルの兵たちが、一斉にその場に膝をついたのである。


「えええっ?」


 驚いたのはフィンノである。一触即発の事態かと、腰に下げていた剣に手を伸ばしてまでいたというのに、完全なる服従の意を見せられたのだから。


「お待ち申し上げておりました、聖女殿」

 跪いた兵たちの一人が、恭しくそう口にする。鈴子は慌ててしゃがみ込み、

「いやねぇ、私、聖女じゃないわよ?」

 と、兵たちの視線に合わせ、応えた。

「で、どちらの方が予言者さんなの?」

「予言者!?」

 フィンノの驚きをよそに、鈴子は続ける。

「私がここに来るってわかっていた人がいるなら、その人は予言者よねぇ?」


 鈴子、サスペンスの謎解きは得意なのだ。

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