第22話 伸るか反るか

「いかがしましょう、陛下」

 難しい顔のミルデロをよそに、鈴子がきっぱりと言い放った。


「私、行ってみましょうか?」


 ザワ、と場が揺れる。

「鈴子殿、なにをっ」

 フィンノが口を挟む。護衛という形で同行しているのだ。危険に晒すわけにはいかない。

「だって、ここでガイアールの方が出て行って小競り合いにでもなったら困らない?」


 ごもっともな話だ。


 ミルデロもそれを心配していた。下手に揉めることになったら、領地侵略に繋がる流れを作ってしまうのではないか、と。


「鈴子殿、わが軍は数も少なく、魔術師や魔導士の数も、質もさほど良くはない。だが、領土近くに兵を派遣されて黙っているわけにもいかん。ご足労ではあるが、同行していただき現状確認をお願いしても良いだろうか」

 他力本願であることは承知の上だ。

「いいわよ。何しに来たか聞いてみるわね」

 簡単に言ってのける。


「鈴子殿! あなた様はミリールの迎えた異世界人なのですよ? ガイアールとユーリルが揉めるのはもちろん問題ですが、ミリールとユーリルが揉めるのも問題であって、」

「あらやだフィンノさん、忘れちゃったの?」

「は?」

「ミリールはもう宣戦布告されてるのよ? とっくに揉めてるんじゃないの? あはは」

 ケラケラと笑う。


「それは、そうですがっ」

 フィンノの額を嫌な汗が流れる。

「大丈夫よぉ、変なことはしないわ。それに、ゼンちゃんいるし」

 名を呼ばれ、俄然、やる気のゼンは、

「おうよ! 俺がいるから何が起きてもスズは大丈夫だぜっ!」

 自信たっぷりに言い放つ。


「あ、それと質問なんだけど」

 ポン、と手を叩き、鈴子。


「この世界での戦っていうのはあれかしら、やっぱり魔法とかでバーン、ドーンって感じなの? 火出したり、水出したり? それとも龍とか?」

「ああ、まぁ、基本的には人と人が剣を交えて戦うのが一般的ではありますが、大国には魔導士もおりますので、多少は攻撃魔法なども用います。が、そこまで強い力を持つ魔導士は稀ですから」

 フィンノが説明をする。

「なるほどねぇ。割と原始的な感じってことね。わかりました。では、参りましょうか」


 にっこり笑い、立ち上がった。


 このタイミングでガイアールに兵を送る意図を、まだ図りかねる鈴子なのであった。

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