第11話 違う種族
「しかし地の者は厄介ですぞ。まず、奴らには知能がない。意思の疎通など無理でしょう」
アマデス司教が腕を組み、難しい顔で言った。地の者は、いわゆるドワーフやゴブリンのようなものだろう。悪賢く、残忍なイメージがあるが実際どうなのか?
「ゼンちゃん、地の者ってそんな感じ?」
亜種同士ではどう見えるのだろう。
「んー、まぁ、奴らは確かに頭はよくないかもな。種によっては動物に近い者もいるし。でもよ、奴らは縄張りがキッチリ決まってるぜ? そこさえきちんと線引きすりゃ、人間と揉めることなんかないと思うが?」
ゼンが言う。
「あら、それなら簡単ね! お互いの領地を荒らさない、それだけでいいんじゃない!」
鈴子も乗った。
オッサン軍団は黙ったままだ。
どうもここまでの話を聞くに、この国のお偉いさんはきちんとした理由などないのに相手が『人ではない』という理由だけで排除しようとしていたのではないか?
だとすればなんと浅はかな……。
「ついでに地の者の中にはきちんと意思疎通も出来て、なおかつ手先が器用な種族もいるぞ。そいつらと話を付ければ、物の売買くらいは出来るんじゃねぇか?」
「まぁ! それはとてもいい案だわ! ゼンちゃんやるじゃないの!」
バシバシとゼンの腕を叩く。
そう、おばちゃんは意味もなく叩いてくる生き物なのだ。
「ううむ…、」
国王ハースが唸る。
どうも調子が狂う。
異世界から賢者を召喚し、戦を仕掛けて大陸を一つに、というのが当初の計画だったはずなのだ。しかし今の流れはそうではない。戦の「い」の字もない話し合い。
しかし……悪くはないと思えてしまう。
「ねぇゼンちゃん、私の勝手なイメージなんだけど、地の者って方々はトンネル掘るの得意だったりしない?」
「おっ! スズは物知りだな、その通りだぜ。奴ら小さいからな、トンネル掘りは得意なはずだ」
「やっぱり! ってことは、道路や橋を作ったり、井戸を掘ったり水道だって作れちゃうかもしれないわよねぇ!」
いわゆるライフラインの確保に一役買ってくれるかもしれなかった。
「ちなみに他の、水、火、風、森はある程度まともに話が出来るはずだ。聞いてると、人間の方がよっぽど野蛮だぜ。いきなり宣戦布告よりはスズが言うことの方が現実的で文明的だな。」
ゼンが呆れたようにそう言った。
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