第9話 亜種

「まず知りたいのは、亜種についてかしら。何か具体的に困った種族がいたりするの?」


「この世界には大きく分けて五種…我々人間を入れれば六種が存在しています」


 司教アマデスが説明を始める。

「地の者、森の者、水の者、風の者、火の者、という感じで分けられますが、事細かな種類となると、もっと膨大です」

「ちなみに俺たち精霊は風の者に属する」

 隣でゼンがサラッと補足する。しかし、その一言で場の空気が一変した。


「はっ! 精霊っ?」

 トルボ元帥は立ち上がり腰の剣を抜いた。フィンノ将官もまた、それに倣う。後ろで立っている魔術師たちが一斉に杖を構え、司教と司祭は国王ハースを背に庇う。


「あら、ゼンちゃんって精霊だったのねぇ」

 鈴子は相変わらずのテンションである。

「ちょっと、いやね、みんなそんな興奮しちゃって~。ゼンちゃんは私の身内みたいなものなんだから、何もしやしないわよ。ねぇ?」

 鈴子に言われ、ゼンは頷いた。


「お前らごとき、何人でやってこようが屁でもないしな」

 ふふん、と余裕の笑み。

「まぁ、ゼンちゃん! そんな言い方ダメよ! あなたがどれだけ強いのかは知らないけど、強い者は弱きを助けるものなの! 本当の強さってのは、ただ力を鼓舞すればいいのとは違うんですからね!」

 ピシャリ、と𠮟りつける。


「ちぇ」

 ゼンは面白くなさそうに舌打ちをするも、それ以上何か言うことはなかった。


 精霊を……従えている…だと?


トルボ元帥の額を一筋の汗が伝い、流れる。元来、精霊というものは気位が高く力も強い。稀に人間と契約を結ぶことがあるとは聞くが、それでも精霊を意のままに操るのは至難の業と聞く。それを、この異世界人は召喚された直後に難なくこなしているのだ。


「はいはい、みんなピリピリしないのー。物騒なものはしまってちょうだいな」

 パンパンと手を叩き、皆を促す。

「鈴子殿…その、精霊は一体どこで?」

「ああ、ゼンちゃん? 武器庫で拾ったのよ。イケメンさんでしょう? うふふ」

 本当に自分の子であるかのように自慢する。

「武器庫に精霊……まさかっ」

 アマデス司教が何かに気付いた。


 それは城に古くから伝わる話である。

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