第8話 断固反対
「話になりませんな」
元帥がふんぞり返って鈴子を睨み付けた。
「こんなろくでもないばぁさんを呼び出して、一体魔術師や僧侶たちはどう責任を取るおつもりか!? 大切な魔法石を全て使い果たしてしまったというのに!」
厭味ったらしく非難する。
「あーら、随分な物言いですこと! 勝手に呼び出したのはそちらでしょうに? それにね、自分たちの戦争に赤の他人巻き込んで丸無げだなんて、それこそ傲慢で卑怯じゃなくって? 戦争なんかして、いっぱい人が死んで、その責任を取るつもりはあるのかしらねぇ? どうせないわよね。大義名分なんて、後からいくらでもこじつけられるんだから。あなた、お子さんはいて? これってそのお子さんに誇れるようなことなのかしら? 子供だけじゃないわ。孫だって、その子供だってずっと続いていくの、お分かり?」
ノンストップである。
「大体ね、何でも武力で片付けようなんて文明人のすることじゃないわね。頭の中なにが詰まってるのかしら? この世界の人間は全員そうなの? 誰一人、和平の道を示すものはいなかった? それとも、そういう不都合な人はみーんな始末したのかしら?」
「おのれ、言わせておけばっ」
トルボ元帥が腰に下げている剣に手を伸ばす。が、ハースがその手を押さえる。
「国王!」
「まぁそうカッカするなトルボ。鈴子殿の言うことにも一理ある」
「王!」
「だがな、鈴子殿、あなたはこの世界のことを何も知らない。和平など、そう簡単なことではないのだよ」
「そうね、私だってそんなに簡単に考えてるわけじゃないのよ、王様。でも、頭ごなしに戦争しますって言われても困るのよ。イヤだしねぇ」
二人が話していると、なんだか寄り合いみたいである。
「あ、一つ確認なんだけど、私って元の世界に戻れるのよねぇ? 余生をここで過ごすのは困るわ~」
なんとも緊張感のない質問である。
「魔法石さえ手に入れば、それは」
アマデス司教が言う。
「向こうでは私、行方不明ってことになっちゃう?」
「あ、いえ、そちらの世界とは時間軸が違っておりますゆえ、こちらの一年で、そちらの一日くらいかと…」
「あら! そうなのっ。じゃあ何とかなるかしらね。ゆっくりはしていられないでしょうけど、ちゃんと考えましょ」
何故かやる気満々なのである。
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