第3話 権力者の家
国王ハースは、この異世界からやってきた、賢者であるはずのおば…女性をどうしていいかわからず頭を抱えていた。
術を行った多くの魔術師、僧侶が過呼吸を起こしている。
「とりあえずお話を聞いてみては?」
アマデス司教が国王に進言する。
確かに、ずっとため息をついているわけにもいかない。見た目もああで、本人にも自覚はないようだが、実はものすごい力を秘めていたりなんかしてくれちゃってるかもしれないじゃないか! ハースは気を取り直し、城の女官たちを呼び彼女を着替えさせるよう命じた。
予定していた宴の席はキャンセル。
さすがに関係者以外の、近隣の王の側近や軍の上官たちに会わせるのは憚られた。何もなかったと報告するのは問題だが、まずは彼女と話をし、現状を把握してからでないと。
そんなわけで鈴子は綺麗な女性たちに連れられ城の内部へと案内されたのだった。
「んま~! 豪華ねぇ~。あらやだ、この壁紙、綺麗だわー。あら! あの壺も高そう! やっぱり世界が変わっても権力者っていうのはこういうとこに住むもんなのねぇ……」
しみじみ。
「あの、こちらへ…、」
女官も大いに戸惑っていた。召喚魔法でやってくる賢者様は、きっと背の高いイケメンに違いない! などと騒いでいたのだ。お世話をさせてもらうのは争奪戦になるわね! なんて…。それなのに、自分の母より年上であろう、こんな…
「ああ、ごめんねー、みんな若くてかっこいい子が来るって思ってたんでしょ~? こんなおばちゃん来ちゃって、ビックリよねー」
!
心を読まれた!?
女官たちが一斉に背筋を伸ばす。見た目に騙されていたけれど、やはり彼女は…、
「みんなもビックリだろうけどさぁ、私だってビックリなのよ~? だって、まさかあんた、土曜の昼日中からニートでチートになるなんて思ってないじゃない?」
「にーとで…ちーと、ですか?」
「あら、知らない? ニートでチートで無双的なやつ。……まぁ、私も言うほど知らないんだけどね。あはは」
笑い声が廊下に響いた。
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