第13話 初めての拘置所

 実家は生活する場所と仕事をする場所が明確に別れていてそこに入るには結界のようなところを通過するんだけど、これも誰でも通過できるわけではなく許可されたものしか通過できないようになっていた。


 許可はおりているみたいで問題なく通過し、リュートはわたしの手を引いて先に歩き執務室が並ぶ廊下を歩いていった。


 廊下の壁には趣味のいい風景画や人物画が飾られ廊下には分厚い赤い絨毯が敷いてあった。はじめて執務室区域に入って緊張している。


 実家のこんな部分はじめてみたから。


 彼は執務室には入らず、地下に続く階段のまえで止まった。

 

 「これから先はリリには少し刺激が強いかもしれない気分が悪くなったらいつでもいえ、いいな?」


 「うん」


 彼は確かめるように頷くと握っているわたしの手をより強く握り階段をおりはじめた。


 ドキドキしながら階段をおりていくと少し広くなってそこに警備の人が2人机をはさんですわっていた。


 わたしたちをみると立ち上がり胸に手を当て立礼をした。


 「お話は隊長より伺っております。いま、連絡しますので少しお待ちください」


 ひとりが階段を上っていった。


 彼は無言で頷くと部屋の片隅に置いてある長椅子にわたしを座らせた。


 彼は警備の人から今だれか入っているのかと聞いていた。


 今はだれも拘置所にはいないということでわたしの横にすわり、


 「誰もいないそうだ、安心してよいぞ」


 耳元で囁いた。


 空間倉庫にはじめて人間を「収納」したけどなんだかいやな気分だ。


 もう二度としたくないと思った。


 タブレットで間違って収納しないように細かく設定してあったんだけど「アギュウレバ討伐」のときは特別な隔離が必要だったので設定を念入りにしようとその時、間違ってさわってしまったみたい。


 考えてみれば「アギュウレバ討伐」からまだ二日しかたっていないんだわ。


 もうずっとむかしのように感じるのは、この二日はわたしにとっていろいろなことが起こり過ぎたからかも。


 リュートの浮気問題、離婚問題、義父の緊急事態宣言、そして不審者マーリンの「真実の眼」も衝撃的だったし、あんなの子供にみせたくないわ!トラウマものだもん。


 まぁリュートのことは私の勘違いだったんだけどね!

 

 もう一度念入りに設定しなおさないとなぁ。


 階段上から足音が聞こえて義父たちがあらわれた。


 わたしたちは椅子から立って頭を下げた。


 義父は


「リリ、お腹は一杯になったか?」


 ニコニコしながら聞いてきた。


 「は、はい」


 義父は笑いながら


 「そうかそうか」


 と頷いた。

 

 わたしの顔を再度みて


 「では、頼む。」


 というと先に拘置所の中に入っていった。


 義父とマーリンが先に入りそのあとわたしとリュートが続いてわたしたちのうしろにはアノーリオン兄上たちが続いた。


 いくつかの拘置部屋を過ぎてある部屋のまえで義父は足を止めわたしにこの部屋にそれを出してくれといった。

 

 部屋はほかの部屋より少し広めになっており鉄格子の色がほかの部屋とは違っている。


 わたしは言われたとおり、扉が開いた部屋のまえで中央に向かって「不審者」と呟いた。それはスゥーッと床にあらわれてわたしはすぐにうしろに下げられ扉は閉められた。


 義父とマーリン、その他の人はその者を食い入るように観察していた。


 「リリ、ご苦労じゃったな、こやつを捕まえることができたのは大手柄じゃ子供たちのところにもどってゆっくりしなさい。」


 ニコニコしながら義父はリュートにわたしを上に帰すように指示した。


 彼はわたしの手を握って出口の方に向かい結界のところまで送ってくれた。

 

 「心配することはない、はやく片付けておまえに話したいことが沢山あるんだ。」

 

 そういいながら抱きしめてキスをしてくれた。


 名残惜しそうに彼は私を離すとわたしが結界を超えるのを確かめてうしろを向いて執務室の方に歩きだした。

 

 わたしも子供たちに会いたくて急いで居間の方に向かった。


 居間にもどったわたしを子供たちがみつけると我先にわたしの元にかけよってきた。


 しっかり抱きしめると義母が近づいてきて椅子に座るように促した。


 義母は見た目三十歳を少し超えたくらいにしかみえず、姉上たちと姉妹だといっても通用するだろう。


 リュートがはじめて家族に会わせてくれたとき、義母とハグしていたのでこいつの恋人か?と勘違いしたっけ。


 その時はまだ単なる友人というかそういう関係ではなかったので「美人の彼女ね」と彼を冷やかしたらリュートは顔を赤らめ頭を小突かれた。


 義母はクスクスと笑って快くわたしを受け入れてくれたのよねぇ~


 この人達ってわたしの知る典型的なエルフの姿なんだよね~


 でも耳はそんなに尖ってなくて言われなければ人族とさほど変わらないかも。


 大昔は特徴的だったらしいんだけどいまは人族に近くなってきているらしい、でも筋肉質の人は少ないかなぁ。


 しなやかで細身で背が高く中性的にみえる、内面や能力はそのまま受け継いでいるらしいけど。


 金髪・銀髪碧眼がおおく、この家の人たちは緑色の瞳や水色の瞳の人がいる、リュートは深い緑の瞳をしているけどね。


 うちの子たちもいわなければ人族といっても通用するし見た目、向こうでいえば外人とのハーフぽい感じでわたしはカワイイと思ってるけど!!





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