第12話 初めての「収納」②
目のまえに彼の顔があった。わたしが目覚めたのがわかるともうキスの嵐で、なにこの人って他人事のように思った。
「リリ、リリ、起きたのか?大丈夫か?マーリンから聞いて心配したぞ!」
矢継ぎ早にそういうと抱きしめてきて何が起こったのかわからないまま彼のいうがままになっている。
「何かあったの?」
まだ寝ぼけた頭で思い出そうとしているとき子供たちの声がした。
「ははうえ~~~~おきたあああああ」
「だめよ!しずかにするって約束したでしょ?」
エリンがクーリンディアを窘めていた。
まわりには彼以外にもマーリン、義父や義母が子供たちを抱っこして立っていた。
さすがにセオディンは自分で立っていたけど。
「おはよう。」
子供たちにそういうとわたしのとこに来たがって「おりる」とからだを
義夫も義母も二人をおろし、行きなさいと示した。
二人は競うようにわたし目がけて飛び込むようにベッドに上がってきて嬉しそうにいろんな話を話しているとリュートが二人にいった。
「母上はまだお疲れだから今日はこれくらいで兄上と下へ行きなさい。」
そういうと二人をベッドからおろすとセオディンに下に連れて行くように指示した。
ふたりは名残惜しそうに何度も振り返っていたがセオディンに促されてしぶしぶいうことを聞いていた。
義母がうしろから「良い子にはお菓子をあげましょうね。」と一緒に部屋をでていった。
「子供たちのことは心配ない、母上とセオディンがいるから。」
彼はそういうとわたしの顔をのぞき込み笑った。
からだを起こしながら夕べのことを思い出していた。
「そうだ、なにかを『収納』したんだ。」
リュートは頷くと説明してくれた。
「マーリンが言うには昨日おまえが部屋に戻ってから、暫くすると異様な気配を感じて急いでおまえの元に行ったそうだ。部屋には確かに誰かがいた気配が残っていたが姿が見えない。するとおまえがとぎれとぎれに何かを収納したと言ってそのまま眠ってしまったらしいんだがそのものの姿はみたのか?」
「いえ、眠気が強くて目が開けられなかったの、最初は家の人かなって思ったんだけど臭いが違ってたわ。いままで
わたしは話しが終わるとマーリンが
「そのなにかを見たいのだが?」
「うん、でもここでは嫌!」
「わかった、起きられるか?」
「起きられるけどお腹がすいてるの食べてからでいい?」
そういうとリュートは笑いながら「勿論だ」といってくれた。
義父たちは部屋をでていき彼とわたしが残こり、リュートはわたしを抱きしめ求めてきたがお腹がすいてそれどころじゃないと伝えると
「わかった」というとわたしをベッドから抱き上げると、窓辺においてあるテーブルの椅子に自分が先にすわり膝にわたしをすわらせて「これくらいは我慢しろ」と言った。
言い合いをする元気もないのでそのままテーブルにご飯を出して食べはじめた。
献立はご飯にお味噌汁、卵焼きにイカと里芋の煮物に漬物と純和風の朝食だ、これだけの材料そろえるの大変なんだから!
「うまいか?」彼はそう言うとわたしの顔を覗き込み顔についたご飯粒を食べていた。ときおり自分もおかずを摘まんでは「美味い!」と言いながら楽しそうにしている。
子供が生まる前はよくこうしてご飯を食べたけど子供が生まれてからそんな甘いことはできなかった。
わたしは気にせずに食べ続けていると彼は
「以前はもっと軽いと思ったんだが・・・・」
わたしは彼のお腹に肘鉄をお見舞いしたが堪えてる風もなく笑っていた。
この人と出会ったのはわたしが異世界に降り立ってから二日目くらいだった。
そう、スライムに狙われ逃げて
彼の最初のひとこと、忘れもしないわ・・・
「おまえ異世界人か?」
振り返ると反対側の岸辺で大きな岩の上に胡座をかいて腕組をしている男?がいた。
見た目は25,6歳?くらいでドキッとするくらい端正な顔立ちで声は透き通っているけど低めで金色の長い髪を後ろで纏めた男?がみていた。
無表情で中性的でなんだか現実感がなく幻覚かと思ったほどだ。
「な、なによ!異世界人て!」
「ふ~ん、自分がどこにいるかわかってないのか。忠告してやる、そいつらは水が弱点ではないぞ。ただ苦手というだけだ。のんびりしてると掴まるぞ。」
スライムは少しづつ水に入ってきて男の言うとおりわたしに迫ってきた。
慌てて立ち上がり反対側の岸に走って逃げた。
男をみると慌てたようすもなくわたしを観察しているようだった。
「聞いていいか?」
「なによ!」
「おまえ、魔法は使わないのか?」
「ま、まほう?」
「うむ、魔法を使えば簡単に排除できるんだが使ってみろ。」
「魔法なんて使えないわよーー!!!!」
男は少し
「はぁ?!なにいってるんだおまえは、子供だって魔法くらい使えるぞ!」
「あんたこそ何いってるのよ!ゲームの世界じゃないんだから!現実に魔法なんてあるわけないでしょ?」
男は「見ていろ」というと指先に真っ赤な炎をだしてスライム目がけて打ち込んだ。炎は川の中にいるスライムすべてを焼き払い跡形のなく消した。
岸にいるスライムたちはそれ以上は追ってこなかった。
男はわたしをみながらいった。
「これが魔法だ!」
わたしは今起きた光景が信じられないくて震えていたかもしれない。
「この世界に降り立った異世界人はすべて漏れなく魔法が使えるぞ!」
男の言葉にわたしは自分の頬っ辺を抓っていた。
「これは夢だわ、きっとわたしまだ眠ってるんだ!!」
「現実だ!」
わたしは両手で耳を
気がつくと男は消えわたしひとりが川岸に立っていた・・・・・・。
そんなことを思い出しているとお腹も一杯になったので立ち上がり食器を片付けるとリュートに向き直り
「こんな気持ち悪いもの早く出したいわ!」
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