第11話 初めての「収納」①

 兄上が念話で会話してから少したったときうしろのドアからアラン兄上が書類を持ってあらわれた。彼はアグラエル姉様の旦那様で大恋愛のすえ結婚したとか、羨ましいくらいお似合いなのである。


 アノーリオン兄様の腹心的な立ち位置で気の利く人である。

 

 「兄上、どうぞ」


 「うん」

 

 書類に目をとおすと義父になにが耳打ちしている。


 そこへアラン兄様が ふたりに一言


 「いま、この者の居場所を捜索中です、みつけしだい連れてくるように申しつけてあります。」


 仕事はや!

 

 「兄上、その者の出身地は黄色の領地ではありませんか?」


 「そうだがそれがなにか・・・」


 「スーリオンは黄色の領地の出身で、勤務先は警備隊本部です!すぐに連絡して奴を拘束してください!やつならその試験官のことも知っているはずです。すべては繋がっています!」


 リュートは確信を持ってアノーリオン兄上に進言した。


 もうあたまの中が混線してきたわ、なんでそこまでわかるのよぉ~~


 アノーリオン兄上とアラン兄上、ふたりは顔を見合わせ頷くとアラン兄上はすぐに来たドアに向かって動き出した。

 

 兄上は義父に説明すると義父も頷きながらいった。


 「すぐに家の警備を固めるのだ!これより外出を禁ずる!」


 ただならぬ義父の言葉に全員が緊張し、執事のマエグボルも使用人に何か指示している。


 みんなが慌ただしく動きはじめた。

 

 マーリンは真剣な顔をして宙を睨んでいる。


 わたしが結婚してからこんなことはじめてでびっくりしていると


 リュートが


 「心配ないから、暫くここにいることになりそうだが、子供たちのことも心配ないから母上や姉上たちと過ごせばよい」


 そう優しくいって抱きしめてくれた。


 理解できないでいるとマーリンが


 「リリが治るまでこちらに居させてもらうとするかのう。こっちのことは心配いらんぞ」


 義父の方をみてそういうと義父もわかったといわんばかりに頷きリュート・アノーリオン兄上・他の兄上たちと一緒に部屋をでていった。


 マイグリン兄上とララノア姉上はこの場にいなかったのであとで連絡するんだろうか。

 

 わけがわからないままボォーとしていると、マエグボルが増血剤の瓶を「お飲みください」とわたしの前に出してきた。


 テーブルは既に片付けられていて食器類はうしろの大きなテーブルにおいてあった。マーリンもわたしの顔をみて

 

 「飲みなさい」

 

 瓶をわたしに持たせてくれた。


 一気に飲みほすと部屋で少し休みなさいとマーリンから諭され考えるのも億劫おっくうなので義母たちにあいさつだけして部屋に向かった。


 途中、食器類を「収納」して。


 部屋に入るとベッドに横になった。


 なんだかからだがだるい。


 まだ起きるの無理だったかなぁと思いながらさっき起こったことを思い出していた。


 あまりにもことの展開がはやくて理解がおいつかない。


 なんで義父は血相を変えていたんだろ。


 わたしの知らないことがあるのかな。


 これくらい古い家柄だといろいろあるのかもしれないと他人事のように思った。


 着替えどうしよう。


 あの子たちの学校どうなるのかな。


 とりとめもなくいろんなことが頭に浮かんでは消えていく。


 からだが暖かくなって眠くなってきた。

 

 増血剤って安眠作用でもあるのかな飲むと眠くなるわ。


 それもとても強い眠気だ。


 ドアが静かに開く音がした。


 「誰?」と思ったがわたしは眠気に逆らえなくて、そのはわたしの方に静かに歩いて来るのがわかる。


 鼻息を荒くしてベッドの脇に立つのが気配でわかった。 


 そのは、わたしの家族とも実家の人たちの匂いとも違っていた。


 いままで嗅いだことのない強烈な悪臭?で不快な臭いだ。


 危険を感じているが声も出せないほど眠気に支配されていたので、やっとの思いで手をまえにだして「収納」と頭の中でいうと目のまえにいたであろうを収納してしまった。


 それと同時にマーリンが慌てて部屋に入ってきてわたしを揺さぶりながら


 「リリ!リリ!起きるのじゃ。いま誰か部屋にいたか?」


 わたしはマーリンにとぎれとぎれに


 「マ・・・・・・わたし・・を・・・『収納』・・・した・・みたい。」


 マーリンに伝えると深い眠りに落ちた。




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