第4話 マーリンのおまじない

 「皆の者。大義である。これより『アギュウレバ討伐』の最終会議を行う!」


 リュートが宣言すると場の空気が緊張感で満ち会議ははじまった。


 こんな会議初めて出る私は雰囲気に飲み込まれて頭がボォーッとしてしまった。


 家では見たことないリュートの表情や言葉はまるで、知らない人のようだった。わたしには見せたことのない一面だわ。


 最初に一人の指揮官が迷宮のいま現在の被害並びに迷宮の状態を報告した。つぎに学者風の人が迷宮のまわりの状況を報告した。


 はやい話、まったく状況は変わっていなくて被害が少しづつ広がっているということだった。


 神経ガスのようなものは今では迷宮の入り口近くまで達し、迷宮のまわりを警護していた兵士や騎士たち何人かはガスにやられて迷宮の中に入ってもどってこないらしい。


 結界を張ってガスを防いでいるがその結界の隙間?から少しづつ漏れ出ているというのだ。


 結界さえも効かないのにわたしの空間倉庫に隔離なんてできるんだろうか?


 数週間前にもマーリンがわたしにわかるように説明してくれていたがぜんぜん理解できていない。めんどうなのでわかったと返事だけはしておいたけど本当は何もわかっていなかった。


 その時に、向こうの世界でと言うものがあるとマーリンに話したら何やら考え込んでいたけど。


 「・・・ということなので一刻の猶予もありません。迅速な討伐開始を進言いたします。」


 最後の指揮官がいい終わるとリュートは険しい顔をして周りをみまわし一呼吸おいてから話しだした。


 「相判った、これより『アギュウレバ討伐』を開始する!各指揮官は部署にもどれ!」


 そう言い終わると指揮官らしき人たちは席を立つとリュートに向かって胸に手を当て立礼をすると動き始めた。


 会議がはじまり終わるまで10分くらい?みんな動きが速い、訓練されてるんだなって関心してしまった。


 これが王国の騎士団なんだ、やることは決められているみたい。

  

 マーリンが小声でわたしの耳元で囁いた。


 「緊張したか?ふぉふぉふぉ、会議は討伐を宣言するだけのものじゃ。まぁ、面倒なとこなのじゃよ、王国騎士団とは」


 マーリンはそういうとリュートをみて笑った。

 

 あっという間にテントは私とマーリンと怖い顔したリュートだけとなっていた。


 マーリンはこのあいだ話していたを出してわたしの前に置いた。じいさんが一番悩んだのは、わたしが下の階に移動中、ガスにやられないかだったらしい。


 結界でわたしを包む事は出来るだろうけどその結界さえも突破してしまうこのガス、皮膚呼吸さえも命取りになると考えているらしい。


 「これはおまえさんがこの間、話していたじゃ、何とか間に合ったぞい。」

 

 わたしはマスクを手に取って自分の顔に当ててみた。

 

 あれ?なんとなく使えそう?な気がした。息できるし空気が循環してるみたい。


 「どうじゃ?呼吸はできるか?」


 「うん、これよさそう!」


 まわりの空気を浄化するのではなくマスク内に空気をあらかじめ貯めておけるようになっているとか。これなら移動中も持つかも知れない。


 けど、この世界のものは少なからず魔力を帯びているので、マスクがどこまでガスに抵抗できるか分らないという。


 討伐前にやめてほしいんだけど、こういう説明とか苦手だし、でもまだ試作段階で大量の空気を溜めておけないらしい。


 酸素ボンベ付きマスクというのかなぁ、時間は30分前後らしい。


 それを過ぎると保証できないと言う。30分あれば十分だわ!

 

 主のいる五階まで降りて討伐しちゃえば楽勝よ!

 

 「マーリンありがとう!さぁ、行きましょうか、時間が惜しいわ」

  

 わたしはそういうと立ち上がりリュートに向きを変えると


 「早く迷宮に案内して!」

 

 何か言いたそうな彼を急かしてテントを出た。

 

 迷宮には10名ほどの兵士が迷宮を囲むように立っていた。


 しかも迷宮を背にしている。迷宮入り口の前に立っていた兵士がわたしたちが入れるように間を開けてくれた。


 「ここまででいいよ、じゃあ行ってくるね。」


 「そうか、マップは頭の中に表示させてあるからのう、結界も念入りにかけて置いた。わしはこのあと行くところがあるので気をつけるんだぞ!」


 そう言うとマーリンはわたしの眉間を軽く杖で触った。


 「今の何?」


 「まじないいじゃ。ふぉふぉふぉ」


 リュートは何か言いたいのだけど言葉が見つからないような感じでわたしの手を握って離そうとしなかった。


 マーリンに促されて手を離すとやっと口を開いた。


 「け、怪我するな、父上がお前の料理を食べたいといってたからはやく終わらせてもどってこい。」


 はい?こいつなにいってるの?


 もうね、心がもってないのよ!


 怪我で済むわけないでしょ!!それに料理って・・・・。


 やっぱり愛がないわ!ーーもういいからしゃべるな!聞きたくない!


 絶対生きて戻ってやる!!あんたの計画、阻止してやる!!!!!!


 わたしは迷宮入り口前に立ってマーリンから託された防護マスクを顔に付け中に入った。


 中はまぁ私が知ってるダンジョンと変わらない、だけど少し小さめ?かな、呼吸は出来てる、脳内マップは稼働してる、よし、いける、先に進もう。

  

 マップではあそこが下に通じる階段ね、

 

 ここを右に曲がってと

 

 この赤い点滅はなんだろ動いてるなぁ、まさかの魔獣?気をつけよう。

 

 点滅の少し手前で止まって様子見ね、曲がり角で止まって現われる魔獣を待っているとそれは現われた。


 ゴブリンスレイヤーだ!


 ゴブリンスレイヤーはわたしをみつけても襲うでもなくフラフラと階段の方に向かっていった。


 おかしいと思って観察していると階段の手前で行ったり来たりを繰り返している。そうか!ガスにやられているんだ。

 

 階段の手前で行ったり来たりしているのは階段を降りられないからだ。

 

 この世界では一般的に階段が安全地帯になっている。


 魔獣達はつぎの階に上がることも降りることもできないのだ。


 そうとわかれば階段前のゴブリンスレイヤーを無視して先に進もう。


 なんとか四階まで無事に降りることが出来たがつぎが問題ね。

 

 時間にして15分くらいかかったかな。


 あそこが安全地帯ね、あそこで様子見できるかな。

 

 わたしは階段目指して歩いて行ったんだけど何故か体がフラついてきた。

 

 階段で一休みしようとすわろうとしたがあれ?


 足が勝手に階段を降りていく?まずい!

 

 ま、まさか私もガスにやられたのかぁーーーーーーーーーー?!




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