アギュウレバ討伐

第2話 討伐依頼と子供たちとの最後の時間

 一ヶ月前、王宮に呼ばれダンジョンを破壊してほしいと話があった。


 それも陛下から直々にだ。そうなるとお断りできない状況なのよね~困ったわ! 


 その席にはリュートとマーリン、なぜか義父のセルシオン・フォン・エルロイドも同席していて四人の顔は真剣というか怖い。あんな顔、いままで見たことない!ほかには王宮の重鎮?が数名


 「・・・・・というわけで被害は日々拡大してきております。」


 「ふむ、そういうことなのだ、リリ、そなたしか頼れるものはもういない!リュートやマーリンでさえ手にあまる、どうか余の願い聞き届けてはもらえぬだろうか。」


 うゎ~これ断れないやつだわ!!どうしよぉ~結婚してから討伐なんてしてないし、リュートやマーリンがダメならもう無理でしょ!!


 わたしなんて魔力ないし力ないし戦えないしどう断ればいいんだろ、子供たちだっているしさあぁーーー


 だれか助けてーーー!!!


 「エランド!息子やマーリンが手に余るというならリリでは尚更ではないか!子供も居るのに無理をいってくれるな!!」


 「セルシオン伯父上、わかっているのです!し、しかしもう万策尽きて手立てがないのです。」


 おおぉ父上さすがです!!ビシッと言ってやってください!!


 まったくリュートもマーリンも怖い顔して黙っちゃって陛下に反論もしない・・・??いま、めくばせ・・・・・・なに企ん・・・


 ま、まさかね・・・愛する妻を危険な討伐に出すはずない?・・・ふっ、やっぱり愛なんて幻想だったのね!


 リ、リュートこの人むかし、わたしを囮にして狩りしたことあったなぁ!


 ああぁぁぁぁぁーーーーーーーー!わたしって不幸だわぁ~!


 「父上落ちついてください。」


 「リュート!お前もリリがこのような立場に陥っているのになぜ落ちついていられるのだ!エランドから頼まれれば断れる道理がなかろう!」


 「リリにはこの依頼引き受けてもらいたいのです。」

 

 「な、なんだと?!」

 

 「リュートよ、わしから計画を説明しよう。」


 やっぱりーーー!!この人たちわたしを囮に使う気だ!!


 しかもマーリンも結託してる!


 「まず、迷宮ダンジョンのぬしについて説明しましょう。こやつは姿形こそスライムの上位種に見えますがその実態は魔界に巣くう「アギュウレバ」という名の狡猾こうかつで侮れない魔物でございます。 


 これの狩りの方法は周りに神経ガスのようなものを撒き散らし感覚を狂わせ獲物をおびき寄せ粘着質の体に取り込み溶かして吸収するというやり方で、これまで数多くのものがこのぬしの餌食になっております。


 その神経ガスは魔力では消し去ることも止めることもできません。しかも取り込んだものが暴れたり逃げないようにそのものに幸福感を与える夢を見せるという念のいったやり方なのです。


 わたしとリュートはこれまで犠牲になった者達をつぶさに検証していきました。われわれはある仮説の元、討伐の方法を自分たちで試してみたのです。


 しかし、そこには思わぬ落とし穴が。アギュウレバはスライムのような形態をしているため剣での攻撃が通じないのです。切れたとしても切った欠片が増殖していってしまうのです。そして増殖した仲間すら吸収して切られた箇所を修復してしまうのです。


 神聖魔法、精霊魔法、普通魔法も打ち込みはしましたが吸収してしまい己の養分としてしまうのです。われらの攻撃はことごとくやぶれ、万策尽きたかと思われたとき、討伐出来ないのであれば隔離してはどうかと!思いつきました。


 亜空間なら奴を封じられると思ったのですが、ご存じの通り我々の世界は魔力で満ち溢れております。我々が作った亜空間もまた魔力を含んでいて奴の餌となるのです。


 つまり、魔力を用いずに奴に対抗出来るのは、この世で唯一魔力の無いリリしかいないのです!このまま被害が増えぬしが成長していったらこの世界にも障りがでてくるでしょ!!」


 おい、じじい何いい顔していってるのよ!!


 隔離って生きてるってことよ?!その後どうするんのよぉーーー!!


 「神聖魔法や亜空間までも吸収とかいったい・・・本当に魔界の生物なのか?」

 

 「セルシオン殿本当です。この世界になぜあのようなものが生存しているのか理解に苦しむところですが今はまずアギュウレバを隔離することが先決です!!」


 「リリの『収納』で隔離できるのか?」


 父上ーーーーーー、話に乗らないでえぇぇぇぇぇぇぇーーーーー


 「父上、それしかないのです。やってみないとわかりませんがたぶんそれしか方法はありません。」


 ふっ、離婚決定だわ!こいつやっぱりだめだったあぁぁぁぁぁぁーー


 「そうなの・・か」


 四人はわたしの顔をみて無言の圧力っていうの?これ絶対断れない・・・・・・やってほしいってオーラ全開!!!!


 「もう!わかりましたよーーー!やればいいんでしょ?!」


 なにその安堵した顔・・・・・わたしにぜんぶ押しつけて手を取りあって大喜びって大の男がすること?あぁ陛下と父上、手を取りあって涙まで流しちゃって・・・


 もうどうにでもなれよぉーー!


 子供たち、先立つおかあさんをゆるしてね~


 それから討伐までの間、わたしはマーリンと討伐の打ち合わせや昔の勘を取りもどすべく訓練を開始して、その合間にもう戻れないことも覚悟なので子供たちとの最後?の時間を大事に過ごしていた。 

  

 子供たちと一緒に過ごしていると何故かリュートも入ってきて一緒に過ごしていた。わたしにというより子供たちに対して罪悪感?があるのかな!この子たちの母親を生け贄にするんだから!


 討伐おわって生きて帰ったら離婚してやる!絶対に!

 

 慰謝料だってガッポリ請求してやる。親権はもちろん貰うわ!


 王宮での給料結構ため込んでるみたいだし実家は大金持ちだしぃ!!


 父上だって嫌とは言わないでしょう、あはははははははははは。


 子供たちと過ごしていると討伐なんて嘘のよう。こんな平和などこにでもあるような日常がいつまでも続けばいいのに。子供たちの寝顔を見ていると自然と涙が落ちてくる。


 あぁ、いつのまにか眠ってしまったみたい。


 子供たちの寝顔をもう一度みるとどうしても涙が出てくる。


 長男のセオディン13歳、長女のエリン8歳、

次男のクーリンディア4歳、みんなわたしの自慢の子供たち。


 よくまぁ三人も産んだものだわ、わたしにしては上出来な人生だったかな

夫は失敗したけど。


 こういう時って時間経過がはやいのよね~。


瞬く間に討伐前日になって最後の打ち合わせをした。


 打ち合わせといっても持ち物の点検とか手順の確認とかそれくらいで主にマーリンとわたしでそれをおこなっていた。


 リュートはそのあいだ何を言うでもなく話を聞いてそれを納得しているようだった。


 ダンジョンへはわたし一人で入ると知ったときは何でって思ったけどぬしに魔力を吸い取られるらしいんだ。


 そうするとぬしの力が強くなるのでわたしの安全に関わるので近づけないんだって・・・


 この世界で唯一魔力がないわたしが最後の切り札って妙な感じだわ。


 さんざん馬鹿にされてきたけどそれがこのう?


 気分良いなぁ~~ちょっと大袈裟かな、クスッ。


 わたしと同じく召喚された異世界人はいるけどみんな何らかの魔法は使えるし、この世界の人々はそれを羨ましがってた。


 この世界の人が持ってない特別な魔法もあるらしいんだけどね。


 わたしなんて魔力ないって分るとみんな馬鹿にして口も聞いて貰えなくって・・・・・・。


 リュートも多分わたしのこと馬鹿にしてたんだろうなぁ~。

 

 今でもそうかも、でなかったらわたしにこんな危ない討伐をさせるわけないもん。





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