夜と黄昏の果て(レルケシナタニアレ)
伊島糸雨
夜と黄昏の果て(レルケシナタニアレ)
おお、貴き者、
──『
古帝国「
存在を提唱された当初、
〝
定説において
彼らは皇族の血を引きながらも表に出せない種の少年少女であり、年端もいかない頃から戦道具として育てられた。そして生涯に渡って皇帝に隷属する消費可能な駒として扱われ、暗殺や他国との戦争に駆り出されては使い潰されていく。彼らは隷属の証として下賜される〝
レラコーとシナトリは、名前を知られるただ二人の
二人は前述した散文に登場する人物で、記述内容から共に女性と見られている。散文は発見当初から断片的にしか残っておらず、多くのページが散逸している。そのため、読み取り可能な情報はさして多くないが、それでも、先に述べた
そこで、該当資料のうち特に重要度の高い三つの場面を以下に示す。
* *
レラコーは初陣から七年、シナトリは最初の暗殺から六年生きた。時には共に
シナトリは花紡ぎの名手であった。戦の折々で、骸を逃れた小花を摘んでは冠をつくり、兄弟姉妹へとわけて与えた。戴冠を経た
シナトリは花紡ぎをやめた。レラコーは決意などしなかった。
詩人の歌が止んだ時、衰えは未だ臨めぬ海を満たした。黄昏が夜を知り、燎原の火は翠緑を呑む竜となった。干戈交われば皇玉の都は
レラコーは決断などしなかった。シナトリに憎悪はなかった。道を塞ぎ悪夢に縋る女の刃は毀れ、剣戟と過去の狭間で生まれの罪を贖った。花冠は腐り落ち、神威纏う皇帝は蒼き刃と血によって洗礼された。レラコーは憎まなかった。悲しみは決して蒼くなかった。
* *
これら一連の物語は、便宜的に『
夜と黄昏の果て(レルケシナタニアレ) 伊島糸雨 @shiu_itoh
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