第8話 王女様の病気


 朝、いつも通りリリーが起こしにくる。

 昨日は夜遅くまでポーションを作ってた。

 それで眠い。

 目をこすりながら、顔を洗った。


 物理耐性ポーションと俊敏ポーションは作ったが、まず売れないだろう。

 信用がないポーションを冒険者が持っていくはずないのだから。

 命が掛かっているとそうなるよな。


 聖属性のパンティからは病気治療の上級ポーションが出来た。

 こっちは教会に持っていこう。


 冷え性ポーションは銀貨3枚でも売れているらしい。

 分かってくれる人はいるんだな。


「じゃあいくよ。【抽出】【添加】【調合】」

「ああん、らめらめらめぇ」


 リリーを放置して教会に行く。

 まだ早かったのか。

 朝の礼拝の最中だった。


 信者が祈りを奉げる。

 祈りが終わり、治療が始まる。


「【病気回復】。暖かくして。お過ごし下さい。お大事に。次の方」

「朝食の支度でやってしまって」


 主婦が手に包帯を巻いている。

 包帯に血が滲んでた。


「まあ大変、このポーションを飲んで下さい。」


 俺が作った上級ポーションが差し出される。

 シスター・セルラータは傷の様子を確かめ、怪我人を帰した。


「治療中に済まない。病気治療の上級ポーションが出来たので持って来た」

「それは嬉しいです」

「治療が終わるまで待たせてもらうよ」


 治療の様子を見る。

 軽症の治療は魔法で、重症はポーションにしているようだ。

 全員の治療が終わった。


「お疲れ様」

「ありがとうございます。全員治療できたのは初めてです」

「俺の取り分はどれぐらいかな」

「銀貨41枚になります」


 少ないな。

 でも仕方ない。


「もっと儲かる方法があればな」


 俺はつい思っている事を口に出した。


「ありますよ」

「本当?」

「ええ、王女様が病に伏せっておられます。優秀な治療師と薬効が高いポーションを求めているそうです。教会の本部から通達が来ました」

「挑戦してみたいな。こうしてはいられない。鉄の女神の依頼達成を待たないと」

「お待ちになって」


 俺は服を掴まれた。

 ああ、あれをして欲しいのね。


「【抽出】【添加】【調合!】」

「はぁはぁ、あっあっ、いつになく強力。ああん」


 白目をむいたシスター・セルラータを残してギルド行った。

 俺の依頼は受けたようだ。

 依頼票がない。

 ベンチに腰かけ今か今かと待つ。

 眠かったのもあり俺はベンチで眠ってた。

 揺すられて起きる。


 ネリアが覗き込んでいた。


「依頼はどうだった?」

「ばっちり」


 俺はカウンターで手続きすると、家に帰って早速ポーションを作り始めた。

 夕暮れ時になり完成した。


「【鑑定】、やった伝説級だ。この国で一番のポーション職人だ」


 俺は夕日の中、教会に走った。

 扉が閉められていたので、どんどんと叩く。

 しばらくして。


「急患ですか?」

「パンパスだ。伝説級が出来た」

「本当ですか。いま開けます」


 扉が開けられたので、シスター・セルラータの手にポーションを握らせる。


「大至急で王女様に送ってくれ」

「はい、教会が管理する緊急の早馬を使います」


 ポーションは送られた。


「休んでいるところ悪かったな」

「いいえ、こういう用件なら大歓迎です」

「お詫びに、天国の扉を開いてやるよ。【抽出】【添加】【調合!】」


「あああっ、あっあん、あん」

「じゃあ、お休み」


 さて、特別な祝いだ。

 いつもより強力に調合するぞ。

 宿に行き、ネリア達と対峙する。


「【抽出】【添加】【調合!】【抽出】【添加】【調合!】【抽出】【添加】【調合!】」


「ああ゛ーー」

「いぐっ、あんっ」

「ああ゛ー」


 3人が白目を剥いた。

 リリーにもお祝いしてやらないとな。

 工房に帰るとリリーが待っていた。


「喜べ。俺は伝説級ポーション職人になった」

「ほんとう」

「【抽出】【添加】【調合!】」


「ら゛め゛ぇ」


 リリーが白目をむく。

 まだ、伝説級の病気治療のポーションは100本近くある。

 これをどう使おうか。

 よし、病院に忍び込んで治療テロだ。

 俺は夜の病院に忍び込んだ。

 寝ている患者にポーションを飲ませる。

 結果は見ない。

 素早くやって現場を後にした。


 俺が出口から帰る時には中は歓喜の怒号が飛び交っていた。

 家に帰るとリリーが気絶している。

 しょうがない奴だな。

 病気治療の上級ポーションを口移しで飲ませる。

 リリーはパチッと目を開けると俺をきつく抱きしめた。

 二人の夜はけていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る