第7話 原価割れ

 朝、リリーが来て恒例の穿き替えが終わった。


「あっ、あっ、駄目。ああん」


 リリーは無視して考える。

 パンティ1枚につき金貨1枚は払い過ぎだろうか

 だいたい銅貨5枚でパンが1個買える

 銅貨が100枚で銀貨1枚。

 リリーの実家の宿賃は一泊銀貨3枚だ

 銀貨100枚で金貨1枚。

 職人の給料が月に金貨3枚。

 パンティ1枚にその値段は高すぎると思うが。

 それに二束三文の野菜を加えると、金貨1枚の上級ポーションが100本出来る。

 ただ、パンティを作るのに1枚で、金貨1枚ほど掛かっている。


 ギルドに売れればウハウハなんだがな。

 くそう。


 色々と原価計算すると売り上げが少ない。


「冷え性ポーションが3つ売れたわよ。はい、銀貨2枚と銅貨40枚」


 リリーが復帰したようだ。

 たった3つしか売れなかったのか。

 ええとリリーの取り分が2割だから、1つ銀貨1枚で売ったのか。

 職人の稼ぎとしてはこの金額は稼いでいる方だ。

 ただし、原価を計算に入れなければな。


 仕方ない。

 教会に期待しよう。


 教会に行くと、シスター・セルラータが迎えてくれた。


「あのパンティは凄いです。天国というのはあのことを指しているような気もします」

「じゃあ、天国に行ってもらうか。【抽出】【添加】【調合】」

「ああっ、天国が見えます。ああん。ふわっー。あっ、あっ」


 シスター・セルラータはまだ復帰に時間が掛かりそうだ。


「【鑑定】。おおっ、聖属性だ。病気治療のポーションも作れるぞ」


 今日の夕方、鉄の女神に材料の依頼を受けてくれるように頼まないと。

 喜捨箱を確認する。

 ざっと見たところ銀貨60枚ってところだな。

 ポーションでの治療がどれぐらいか分からないが、少ない。


 期待してたのにな。

 シスター・セルラータが復帰したようだ。

 荒く息を吐いてはいるが、喘ぎ声は出していない。


「俺の取り分はいくらかな」

「銀貨18枚ほどになります」


 やっぱり少ないな。

 稼ぎとしては十分なんだが、上級ポーションの減りが激しいので、補充しておく。

 最上級は完全にオーバースペックだな。


 性能と売値が完全に釣り合っていない。

 でもどうしろと言うんだ。

 金貨1枚を喜捨箱に入れ、失意のまま教会を後にする。

 そろそろ金が無くなってきた。

 なんとかしないと。


 素草もとくさを採って来て蛾のモンスターの幼虫に食わせたり、薬草パンティの制作を縫製ギルドに依頼したりして時間は過ぎる。

 このままでいいのか。

 後1週間ぐらいしか金が持たないぞ。


 鉄の女神を訪ねて、宿屋に行く。


「回復の上級ポーションはまだあるかい」


 デージーがそう言ってきた。


「あるよ。10本ぐらいは今も持っている」

「全部、売ってくれ」

「それは涙が出るほど、ありがたい」


 これで金貨5枚の売り上げだ。


「森に入ったんだがよ、モンスターにやられそうになったパーティを見かけてね。ポーションを使ったわけさ」

「それで消費したのか」

「怪我をしてた奴にも使ったけどよ。やつらポーションを切らしたみたいで、あたい達のポーションをみんな売ってやったさ。大儲けだよ」


「もっと欲しくないか」

「そうさね。あと10本ぐらいは欲しい」


「そんな事より、早くぅ。穿き替えさせてよ」

「そうそう」


 ネリア、プリムが待ちきれないようだ。


「今日、採取の依頼を出して帰るから、明日の朝受けてくれ」

「じらさないで」

「はいはい」

「ポーションを売ってもらったし、気合をいれてやらせてもらうよ」


 俺は3人を履き替えさせてやった。


「あー、あんあん、きくぅ」

「あ゛ー」

「腰が止まらない」


 3人を放置して工房までポーションを取りに帰る。

 ついでにギルドで採取依頼を出した。


 戻ってくると、3人は放心状態だった。

 デージーのほっぺをピタピタと叩き。


「ポーション置いていくから」


 そう言って俺は部屋を出た。

 差し引きの金貨2枚は明日、清算しよう。


 戻るとリリーが来ていた。


「冷え性ポーション、全部売れた」

「何だって!」

「前に売れた3個のうちの1つを買った客が買占めにきた」


 理由は分かる。

 効果が上級だからだ。

 たぶん1ヶ月は効果が続くだろう。

 銀貨1枚じゃ安すぎるんだ。


 銀貨37枚と銅貨60枚の売り上げだ。

 原価から計算すると、1つ銀貨3枚ぐらい取らないと割が合わない。

 値上げすると売れないよな。

 俺って商売に向かないのかも。


「今度から1つ銀貨3枚で売ってくれ」


 これが吉とでるか、凶と出るか、分からない。


「いいよ。値段は適当につけただけだから。それと火炎耐性ポーションが金貨5枚で売れた」

「やった、儲けた」

「でも50本もあると追加は要らないって」


 火属性パンティからは、冷え性ポーションを作るしかないか。

 そう言えばデージーとプリムから回収してきたな。


「【鑑定】、土属性と風属性か」


 うーん、土属性から作る物理耐性ポーションは売れないだろうな。

 風属性は俊敏ポーションか。

 こちらも売れそうにないな。

 一応作って、鉄の女神に持って行こう。


「早く、穿き替えさせてぇん」


 リリーが甘ったるい声を出す。


「待たせたな。【抽出】【添加】【調合】」

「らめぇ、いろいろとらめぇ。しゅごい。あっ、あっ。あんあん」


 リリーを放っておいて、ポーションを作る。

 少し売り上げが上向てきたな。

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