第6話 謎が解ける

 宿屋から帰るとリリーが待っていた。


「待たせたな」

「ううん、今来たところ」


「じゃあ、早速。【抽出】【添加】【調合】」

「ああん、くぅ。あっあー」


 リリーは放っておこう。

 そのうち正気に返るだろう。

 俺は薬草パンティが気になって仕方なかった。

 天才だから作れたと思うのはいいけど、仕組みがまだ完全に解明できていない。


 素草もとくさと魔力定着剤の関係は良い。

 それと、感情が魔力に影響を及ぼしているのは分かっている。

 ただ、それ以上が分からない。

 魔力の細かい分析する道具が欲しいところだ。

 濃度計はあるけど、どんな感情が魔力に混ざっているかなんて分からない。


 道具が無ければ作る。

 職人の基本だ。

 魔道具を開発させるのにどれだけ金が掛かるだろうか。


 自分で作るほかないか。

 だが、ポーション以外の勉強はしたくない。

 俺はポーション職人だ。

 魔道具職人ではない。

 どうしてもなら作るが、いまのところ遠慮したい。


 リリーが復活したようだ。

 そうだ。

 朝晩にパンティを回収しているけど、どれぐらいの時間で薬草化するんだろう。


「【抽出】」

「いやだ」


「ちょっと待て、【鑑定】。もう薬草になっている。悪かったな。【添加】【調合】」

「くふぅん。はぅん。またなの」


 リリーには新しい薬草パンティを穿かせた。

 さっき回収した出来たの薬草パンティを観察する。

 少し湿っているな。

 湿気も必要なのか。

 分からないけど、感情に関しては分かった事がある。


 前に変化があった試験管だが、立ちションしたと言ったが、その時に何を考えていたか思い出した。

 屋外で立ちションして気持ちいいだ。

 快感の感情が魔力にのってそれが薬草化を引き起こしているに違いない。

 推測だが、ポーション職人の勘が間違いないと言っている。


 となると野生の薬草は、動物やモンスターが素草もとくさの近くで交尾したからか。

 それは低確率だな。

 季節によって薬草の採取確率が変わるのもこの為か。

 春夏は餌が多いので、交尾するのは秋か冬だ。

 たしかにその時期は薬草が多い。


 謎が解けた。

 じゃあ、素草もとくさの畑を作って動物を放し飼いにして番わせればいいのか。

 でも、品質は薬草パンティの方が良いんだよな。

 野生の薬草では上級はなかなか出来ない。

 人間の方が魔力が濃いって事だろうな。


 そういえばドラゴンの棲み処には特別な薬草が生えているって聞いた。

 ドラゴンの交尾で出来る薬草は凄そうだ。

 でも、人間も捨てた物じゃない。

 Sランクの冒険者辺りならドラゴン並みの強さだ。

 きっと凄い薬草パンティが出来るぞ。

 機会があれば狙っていこう。


 リリーが復活したので話をする事にした。


「リリー、パンティ1枚につき金貨1枚だ」

「私が払うの?」

「いいや逆だ。俺がリリーに払う。いま2枚回収したから、金貨2枚だ」


 俺はリリーの手に金貨2枚を握らせた。

 リリーの目が金貨になる。


「休みに何回も穿き替えたいんだけど」

「大歓迎だ。回復のポーションの需要はあるからな。でも販路の開拓がな。ギルドを通さないと無理か。それには資格停止を解いてもらわないと」

「ギルド資格も停止されちゃったの」

「ああ、停止された。販路として、教会には話をつけたんだが、どれだけ儲かるか」


「じゃあ、置き薬始めたら。冷え性のポーションは置き薬にしているの。説明書きを書いて各部屋に置いてるわ。使ったら清算してもらうようになっているのよ」

「面倒じゃないのか」

「ぜんぜん、宿を発つ前に部屋のチェックはするのよ。壊したり、物を盗っていくお客はいるから。チェック項目が一つ増えても大した手間じゃないわ」

「でも宿屋の部屋数だけじゃ少ないな」

「各家庭に置き薬したらいいわ」


「チェック業務は誰がやるんだ?」

「商店の注文取りの人にやらせようと思うの」

「いいかもな。じゃあ、レパートリーを増やさないと」


 今のところ家庭で使えそうなのは、傷治療と火傷治療だな。

 上級でも性能が良過ぎるから薄めるとして、ポーション瓶は高くつくな。

 飴にして、舐めさせるか。


 飴ならある程度保存も効く。

 子供でも嫌がらない。


 効果が高いのから低いのまで作るべきだな。

 効果が高いのは今まで通りポーション瓶でいいと思う。

 かすり傷用は、飴にして、紙に包むとしよう。


「商店の人との交渉は任せて。パンパスはポーションだけ作ってくれれば良いから」

「頼むよ。リリーは頼りになるな」

「えへへ。パンティの穿き替えもう一回いい?」

「じゃあ、金貨1枚。【抽出】【添加】【調合】」

「あへぇ、三度め。らめぇ」


 よし、これからサンプルを作るぞ。

 悶えるリリーを尻目に俺はサンプルのポーションを作り始めた。


 病気治療に使う薬草パンティがほしいな。

 聖属性か。

 シスター・セルラータ、デージー、プリムの誰かが作ってくれるといいのだけど。

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