第47話 窮地の中のおそるべき行為

 無頭むとうの参加表明により、亜土の心配事は増える。

 奴がちょっかいかけてきた旨を氷華に伝えたら、自分と同じように眉根のシワを深くしたので、いくぶんか気持ちが共有できて楽になったが。


 とにかく、ここで大魔法祭を中止しては無頭の思う壺なので、開催は続行。

 あとは、然るべき人に任せることになった。


 レギュラーが決まる大事な時期だ。三人娘の力になるために精一杯、今を頑張りにいく。


 放課後、迷宮型ダンジョンがちょうど湧いたので攻略することに。

 ただ、ダンジョンレベルは高く、三人娘の実力ならギリギリといったところ。

 パーティー内には回復役ヒーラーもいない。本来ならマージンをとって、ダンジョン入口付近でモンスターが表にでないよう狩りをして、実力のある冒険者に本攻略を任せることになるのだが、マキドが提案してきた。


「もう少し深く潜りましょう」


 マキドはいつになく真剣な表情でそう言った。

 レベルアップしたいのか、やけになっているのか。亜土には判別つかなかったが、今は余計なことを考えず、ガムシャラに頑張るほうが良いと少し深くもぐることにした。


 そんなわけで三人娘は体操服に着替えて、攻略することに。


 結果、大慌てで逃げることになった。


「退避! 退避ーーーー‼‼‼ みんな逃げるぞ!」


 重い扉をあけた先の広間で、モンスターハウスに遭遇してしまう。

 扉で阻まれていてはリリカナの魔力探知も届かず、浅い層で弱いモンスターばかりを相手していて油断していたところのモンスターハウスだった。


 高難易度ダンジョンは予想外トラブルが起きやすい。

 あるいは無頭がなにかしらちょっかいをかけてきたのかも。


 なんにせよ、広間にうじゃうじゃ溜まっていたモンスターたちから慌てて逃走。

 なんとか小部屋に逃げきったが、モンスターの群れがダンジョン中に解き放たれたので、逃げ道を完全に塞がれてしまう。少しずつモンスターを狩っていけば脱出はできそうだが、完全なサポートがない状態での挑戦は避けたい。


 ということで、小部屋でタクティカルベストを脱いで装備を見なおしつつ、様子を見ることになったのだが。


 亜土は、別のピンチに相まみえていた。


「あ、亜土先生!」「亜土センセー❤」

「う、うん……」

「ど、どっちとキスしますか⁉」「どっちとキスするのー?」


 冷たい床に正座している亜土に、みもりが興奮気味に、リリカナが煽情的に『どっちにキスをするのか?』とたずねてくる。


「お、大人しく、救助を待つ手もあることも、ないことも……」

「亜土先生! 冒険はなにが起きるかわからないから冒険です!」

「うん、オレがいつも言っていることだね……」

「せんせー、ピンチはいつもユニークスキルで切り抜けてきたじゃん」

「アレは最終手段なわけであって……緊急手段でもあり……わ、わかるだろう?」


 みもりたちは小学生だし11歳だしで、アウト案件だってわかるだろうと亜土は目で訴えてみた。


 しかし、みもりとリリカナの瞳は知ったことではないと語っている。


 気圧された亜土に、リリカナがごにょごにょと耳打ちしてきた。


(せんせーせんせー❤)

(な、なんだよ、リリカナ)

(体液を接触できたらいいんだよね?)

(ま、まあね。だからキスが一番効率いいわけだし……)


 本当はキス以外にも効率の良い方法があるのを、亜土は知っていた。

 だからといってその体液は、小学生相手にはぶっちぎりアウトすぎて使えない。あんまりにも禁断の果実すぎて、楽園どころか人間の世界からも追放されるものだ。


(ほんとにー? キス以外にも効率良い方法があるんじゃないのー?)


 リリカナはなにかを察しているように口元をゆるませた。


(ホ、ホントホント。ホントだって、キスが一番効率良いよ)

(えー? みもりちゃんとー、リリカナちゃんがー、せーっかく、せんせーの大きくなったモノを、お口でご奉仕してあげようと思ったのになー❤)


「わーっ! わーっ‼」


 一瞬でも想像しかけて、亜土は必死で手をふった。


 脳裏に浮かぶのは、小学生二人が体操服を上にたくしあげ、ピンクの乳首をあらわにした姿。


 亜土のカチコチになったモノを、二人が挟みこむように舌でなめなめしてくる。みもりはたどたどしくも愛おしそうに、リリカナは情熱的にちゅぱちゅぱと、二人が上目遣いでご奉仕する姿を想像してしまった。


 想像してしまったというか、リリカナがそう想像するようにゴニョゴニョと囁いていた。


「リーリーカーナ⁉」

「やーん❤ せんせーが怒ったー❤」 


 リリカナは舌を出してごめーんと謝るが、その舌づかいがチロチロといやらしい。


「高坂さん、リリカナ。あまり騒がないでください。モンスターに気づかれますよ」


 マキドに軽蔑するような瞳で見つめられて、亜土はしょぼーんと背中を丸める。

 そうして大人しくなった亜土に、リリカナがまた囁いてきた。


(せんせー。ほんとーに、リリカナちゃんたちのお口ご奉仕いらないの? せんせーの固くなったモノをー、じゅぽじゅぽ口にふくんで、いっぱい気持ちよくしてあげるよー❤)

(これ以上のからかいは禁止。ほんとダメ。あぶないから)

(からかいじゃないのになー……。あ、それともマキドちゃんのお口のほうが良い?)


 ここで彼女の名前が出てきて、亜土は思わずマキドの小さな唇を見てしまう。


 嫌そうな目つきでも熱心にちゅぽちゅぽとモノを口にふくみながら、亜土がハててしまっても口を離さず、ドクンドクンといっぱい奥まで注がれながらも、最後までごっくんしてくれるマキドを想像するように、リリカナが囁いてきた。


 亜土は思わず腰を引く。


(き、鬼洞流! 毒断ち!)


 鬼洞流・毒断ち。

 心臓の鼓動を操作して、毒が全身に回るのを遅くする身体操作の技だ。

 下半身に血流が流れるのを止めた亜土は、マキドのお口ご奉仕を想像してしまい、ギンギンになりかけた己をなんとか制した。


(えへー❤ マキドちゃんが一所懸命にご奉仕する姿を想像できたー?)

(……リリカナ、リラックスさせるにももっと別の方法をね)

(そーゆーことにも、ちゃんと気づいてくれるせんせーが好きだよー❤)


 亜土は顔を赤らめながら、小さく咳払いした。


「あ、亜土先生、それでどちらに?」


 みもりが前のめり気味に詰めてくる。

 その隣ではリリカナが指で輪っかを作り、じゅぽじゅぽとくわえる仕草をしていたので、亜土はジト目を送っておいた。


「そ、それじゃあ、みもり。お、お願いしようかな」 


 自分の声がうわずってないか、亜土は気になった。


「は、はい! はい……!」


 みもりは女の子座りになって、緊張したようにビーンと背筋を伸ばした。

 みもりのいっぱいいっぱいな姿に、亜土はほんとうに可愛い子だなと改めて思う。


(……可愛いと思うぐらい普通のはず。みもりは可愛い女の子だし。変な意味はないはず)


 ピンチから脱出しようと、小学生とキスをするのははたして普通のことかなのかは、亜土は考えないようにした。


「亜土先生……よろしくお願いします……」


 みもりは目をつむって、キスを待つ。

 まだ緊張するのか、少女の肩はかすかに震えていた。


 亜土はこれ以上恥をかかせないよう、自分からみもりを求めたのだと伝わるように、少女の両肩をつかみ、そっと口づける。


「せんせー……」


 少女の柔らかい唇を優しくついばんでいく。


 身体がカッと熱くなるのはユニークスキルのせいだろうが、

 使うたびに身体の熱がどんどんあがっている気がするが、それはスキルの力が増しているのか、あるいは性癖が変わりつつあるのか。


「あど、せんせ……ちゅ……ん……」


 みもりが恐るおそる舌を突きだして、亜土の口内にゆっくりと入れてきた。

 亜土はみもりの舌を拒まずに、アイスを舐めるようにからめとり、ちゅくちゅくと唾液交換をおこなう。


「せんせ、せんせ、せんせ……ん」


 興奮したみもりが身体をスリつけてきた。

 少女のふくらみかけの胸の感触が亜土に伝わってくるが、なにも気づかないフリをした。

 だんだんとお互いの熱が溶けあっていき、ユニークスキルの高まりを感じる。あとはもうモンスターを蹴散らすだけだと亜土はギリギリなんとか理性を保つ。


 そうやって熱いキスをしている二人に、熱視線をおくる者がいた。


「……」


 マキドがなにかを決心したような表情をしていた。

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