第2話 感じる視線とクラスメイト


 


 

 ◇ ◇ ◇



 彼、橘俊介は今、黒髪色白美少女七海ちゃんと共に教室へ向かっていた。

 

 と言うのもそれは彼等が同じクラスだと判明したからである。

 

 

 『一年生の教室は一階じゃ無くて三階なんだね』


 「……先輩を優先してるんじゃない?」


 『なるほどね』




 『『『ジー』』』


 


 そしてからどうしてこうなったかと言えば。


 

 実は彼女七海ちゃん、主人公と違って本当に今年から引っ越して来たらしい。かなり遠くの県から。


 そのためこの中学校に知り合いがいるはずもなく一人でいたところ、偶々自分と同じように一人だった主人公を見つけ声を掛けたようだ。


 ……まさかあんなことになるとは思ってもいなかっただろうに。南無。


 

 だが逆に主人公のあの醜態によって彼女の主人公に抱いていた緊張感が無くなった。

 

 つまり一応あれのお陰で今のように会話できるような仲になれたわけなので……怪我の功名と言えるだろう。

 

 

 『そろそろだね』


 

 「うん」


 

『『『ジジジー』』』



 彼等は気付いて居ない。彼等が周りからどれ程注目されているかを。

 

 


 『……あ、4組は突き当たりじゃん!ラッキー』


 

 「……確かに。私も奥側の方が落ち着くから好き」


 

 「……」

 

 

 『……』


 

『『『『ジジジジジジジー』』』』


 

 彼等は分かっていない。中学生は思春期であることを。おませさんであることを。男女が異性と関わるのを躊躇う時期であることを。

 そしてそんな仲二人で仲良く歩く美男美女がどう写るかを。



 

 『……』


 

 「……」

 


 『あのさ……』


 

 「……なに」



 『勘違いなら笑ってくれていいんだけど……』


 

 「? うん」

 


 『めっちゃ視線感じない?』



 

 『『『『『ジジジジジジジー』』』』』


 


 「え、うそ……本当だ」


 『だよね』

 

 

 彼等は気付いた。自分たちが如何に視線を集めていたか。

 そして嘆いた。これから噂が広まり質問攻めに遭うだろう近い未来を。

 

 

 『はぁ…………何かごめん』

 

 

 「……いや、私から誘ったわけだしむしろごめん」

 

 

 『…………』


 

 「……」

 

 

 『「はぁ……」』


 

 

 ここから波乱の中学生生活が幕を開けた。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 


 場所は変わって一年四組の教室。

 担任の先生が来るまでのしばらくの間。俊介と七海はやはりというかクラスメイトに質問攻めに遭っていた。



 

 「二人ってさ……もしかして」

 

 

 「「「付き合ってるの?!」」」


 

 

 『い、いや……さっき知り合ったばっかだよ』


 「……初対面です」


 

 

 「ふーん……初対面なのに二人で教室まで来るんだ」


 「こ、これってお互いがお互いに一目惚れし合ったってことだよね?!」


 「学年で初めてのカップル成立じゃん!!」

 

 「私見たよクラス表のところで二人が見つめ合ってたの!!」



  「「「本当に?!!」」」



 

 『い、いやだから……』



 彼らが否定しても関係無く話が進んでいく。どう見ても収拾が付きそうに無い。

 もはやこの段階まで来ると学校中に広まるのは時間の問題だろう。

 

 

 ここで忘れてはいけないのは、どちらも容姿が優れていると言うことだ。

 そう、


 

 ――思い出せただろうか。彼が美少年(傾国級)で転生させられたことを。


 先ほど醜態を見せた主人公。だが実は外面だけはやたらいいのだ。それこそ街ですれ違えば10人中10人が振り返りそして視線を顔から鎖骨、腹、股間、太もも、脚、そしてまた顔、鎖骨、股間、(略)になってしまう程に。


 そして対する七海ちゃんはと言うと、主人公ほどではないものの一般的に見てかなりの美少女と言える顔立ちをしている。


 つまりどうあがいても残念ながら噂は一人歩きしていくことが確定しているのだ。南無。




  ――やんややんや。がやがや。ざわざわ。

 



 


 クラスメイトの大半が教室に集まりだし話題が彼と彼女の恋愛話に完全に移りだした頃。


 

 「みんな……勝手に決めつけちゃ失礼だよっ!」


 「それにそういうのは二人に失礼だからさっ」


 


 一人の女の子が声を上げた。



 

 

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