第1話 秘蔵のカメラはどこですか
◇ ◇ ◇
『ここは……』
男が目を覚ますとそこは、如何にもな子供部屋だった。
8畳ほどの広さに学習机と本棚にそして男が今も占領しているベット。どれも真新しくそして男には見覚えのないものだった。
『おかしい』
男はこの異常な状況に混乱していた。
それはそうだろう。何せ元々男が住んでいた家は5畳ほどの日の光も入らないボロアパートだったのだから。
『それに俺は今日陸上大会に行っていたはずだ…………ん?陸上大会?』
『――ッ!カメラは!?――――――無い、無い、何処にも無い!!俺の美少女コレクションがああああああああぁぁぁぁあああ!!!!!』
慌ててカメラを探し始め、自分の傍に無いとわかると叫び出す滑稽な男。
彼は元童貞20歳ニートである。
ここで、この男が本質的に如何に滑稽でどうしようも無いか。
それは見覚えの無い場所に放り出された時に真っ先に探し始めるのが財布やスマホじゃなく少女達を盗撮したカメラであるということが何よりの証拠だった。
……しかし男は諦めない。だってそれは男にとって何より大事な物だから。
男は深呼吸をする。
気持ちを落ち着けた男は今度は周囲を探索しようとベットから降る。
そして机の引き出しやクローゼット、本棚など部屋にあるものを片っ端からひっくり返そうとした――
『 ――って、えっ?!ちょ、ちょっと待て!?何これ?! 何か俺……小さくなってね?』
――その時。男は自身の目線の低さに違和感を感じた。
男の目の前に聳え立つはたった3段しか無い約1mほどの本棚。
本来なら腰付近の高さになるのに対して今は何と男の鎖骨付近まであるだ。
『……現状最有力なのは夢を見ていること。嫌しかしこのリアリティ……夢でもVRでもここまでの表現力は無かったはずだ…………はッ!もしや某高校生探偵のように毒を飲まされたのか?!』
ここで男、今度は中二病を発病。
童貞でニートだった男はこの手のアニメや漫画が大好物なのだ。
たまに妄想しては書き連ね、複雑怪奇な黒歴史を生み出したりしていた。
現に今も『もしや……宇宙から謎の生命体が――』や『もしやパラレルワールドに来てしまったのか……ならば何処かに元の世界に戻るための鍵が――』などなど。
お得意の妄想癖が出てしまったようなのだ。
※再 彼は20歳成人済み。
男を転生させた存在はもう我慢の限界だった。痛いことを妄想して楽しそうにしている元成人男性を見ているのが辛かった。
よってこの世界、そして現状に対する情報を強制的にインストールさせることにした。
『――――つまり異世界で魔王を……ッ!! あ、待って!ちょっと待って!本当に待って!! これヤバい!絶対ヤバいやつ!! 来るッ!頭に何か来るッ! ――――くぁぁああああ痛い痛い痛い!!!!』
男は叫んだ。盛大に。
神は笑った。満足に。
――掛かること数分。
男の中にこの世界の諸々がインストールされた。
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