アイロニー

あれから君は徐々に態度が変わってゆく。

うだつが上がらない日々が続く。


私は最初に覚悟していた。

君の変化や成長を受け入れる事を。

けれども、私の行動さえ君には伝わらないものになってしまっていた。



鈴を転がす様な声で君は言った。

「別れよう」

私は慟哭した。


最後にひと目だけでも会いたかった。

「荷物を取りに来て」

荷物を取りにくる。

今日で最後だから少し話をしよう。


「好きです」

最後の別れを伝えたつもりだった。

それは恣意的な発言でありただの私のエゴ。

それはアイロニーであった。


「俺も好き」

君は少し震えた声で確かに言った。



こうして私の愛は春に終わりを告げた。

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鈴を転がすような君の声 @ma4245

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